Webコンテンツの原稿料はなぜ安いのか?

最近、昔から付き合いのあるベテランのライターやカメラマンに仕事を断わられるケースが増えています。Webメディアの制作費が安いためです。

なぜそんなに安いのか?

利益を出すビジネススキームがきちんと確立されていないのはもちろんですが、私はそれ以上にコンテンツマーケティングやオウンドメディアの名の下、薄っぺらいコンテンツの大量生産が蔓延しているからだと考えています。3万円の記事を10本制作するより、3,000円の記事を100本制作することを選択するのです。

コンテンツの質と量の考え方については、以前に「コンテンツの質の計り方」「コンテンツマーケティングやるやる詐欺を見極める方法」に書きましたが、これで完璧という正解はありません。みんないろいろ試行錯誤をしながら、「読まれるコンテンツ」の制作をしています。しかしながら、いろいろなメディアに携わったり、いちユーザーとして見たりする限り、コンテンツを「作る」ことより、「埋める」ことが優先されている気がしてなりません。

原価はどうやって決まる?

先日、ある著名人のインタビューの仕事をいただいたのですが、著名人に支払う取材謝礼が5,000円と提示され、私はこの額ではその著名人に依頼できない、と伝えました。

たとえば、その著名人に1時間のインタビューをしたとします。前後の移動時間やインタビュー後の原稿チェックの時間など考えて5時間としましょう。マネージャーも付き添うので2人で5時間拘束となります。すると2人で時給1,000円、一人当たり500円となります。この謝礼設定がいかに非常識か理解できるかと思います。売り出し中のタレントなどがプロモーションの一環として、ノーギャラで受けてくれるケースはあります。むしろ、その場合は最初からプロモーションということで交通費のみでお願いします、という言い方をして依頼することもあります。

カメラマンの場合

たとえばカメラマン。1回の取材(半日拘束)で2万円だと受けられないと言うカメラマンはけっこういます。これは1時間の取材撮影だとしても、準備や移動を含め前後で4時間拘束、そして撮影後の写真のセレクトとレタッチ。最近はレタッチありきで考える事務所や企業も多く、有名タレントになるとレタッチに丸1日〜2日かかることも少なくありません。すると撮影と事後処理を併せて丸2日かかると計算すると、2万円の仕事を毎日受けるとして月の半分の15日が上限。1日2万円☓15日ですべて埋めて30万円が上限となるわけです。

ライターの場合

記事作成はどうでしょうか。

自社メディアの場合は、2,000字の記事作成で3,000円〜5,000円の原稿料が相場になっています。

Web上で素材を集めた二次情報の記事を2,000字書く場合、慣れたベテランライターで1日(8時間)に3本書けたとして、30日間書き続けて1万5,000円☓30日=45万円。これはかなり恵まれたケースでしょう。ただ実際には原稿チェックの戻し、修正対応などもあるので、あまり現実的ではありません。またこれだけの規模の仕事が、一人のライターに定期的に依頼されることも考えにくいです。

Webの企業ソリューションやメディアの場合、取材記事の原稿料は、安くて1万円、高くて3万円程度が相場です。たとえば2万円の場合、取材準備で半日(4時間)、取材で半日(4時間)、原稿作成に1日(8時間)くらいはかかりますので、2日(16時間)とします。すると2万円の仕事を1カ月フルで受けたとして半分の15日が限界です。それで2万円☓15日=30万円。これも現実的にはほぼあり得ないので、実際20万円稼げれば御の字でしょう。

これがクラウドソーシングになると2,000字で500円というのもざらにあるので、500円☓4本☓30日=6万円。しかも1カ月で土日含め一切休みがないという前提です。ライターになるための修行と考えているライターや、自宅でスキマ時間を有効活用したいという主婦ならともかく、すでにキャリアのある腕のいいライターがクラウドソーシングの仕事を受けるはずもありません。

クラウドソーシングには、プロの編集者がライターにつくことはまずありません。つまりライターは大量の記事作成をすることで書き慣れることはできても、何を基準にライティングスキルを磨いていけばいいのか指標すらないのです。これはただの消耗戦でしかありません。テーマとキーワードに沿ってわんこそばの如く、早く大量生産できることが求められます。クラウドソーシングの仕事をキャリアのステップアップと考えるのは、かなりの遠回りだと考えてよいでしょう。最近では原稿が書けるAIも登場しているそうですから、この手のわんこそば記事の大量生産は、AIにやってもらえばよいのです。

ここまで紹介した制作費はライターやカメラマンに支払らわれる原価です。あなたが発注者の立場で、制作会社を通してコンテンツ制作を依頼している場合、そこに営業や編集者、ディレクターが入るため2〜5倍の価格設定になります。記事作成の原価が5,000円〜1万円だとして、そこにライターのキャスティング、企画、ディレクション、編集作業の行程が加わるので、2〜5万円になると考えてよいでしょう。

コンテンツは「作る」ものであって、「埋める」ものではない。

こんなたとえ話があります。

①「ここにレンガを揃えてあるから、この範囲に高さ5メートルの壁をなるべく早く積み上げろ」

②「このレンガ素材は○○で出来ている。なぜなら○○だから。このレンガを使ってなるべく効率よく5メートルのを積み上げろ」

③「このレンガはサグラダ・ファミリアを完成させるための特別なレンガだ。時間は問わないが失敗は許されない。できるだけ緻密に完璧に壁を積み上げろ」

あなたがもし大工さんだとしたら、何番の指示が一番やる気が起きますか? あなたがクリエイターなら、きっと③を選択すると思います。これはプロジェクトの全体像と目標が明確なので、自分がやる仕事のモチベーションが高まるからです。人は目標の見えない単純作業にはすぐ退屈しますし、そこの高い付加価値を見出すのも難しいのです。

編集者や企業のWeb担当者の中には、ヒアリングシートなどで構成、文字数、段落、入れるキーワードなどを細かく設定しても、そのコンテンツがどんなメディアで、どのような目的で運営しているのか、ユーザー(読者)に何を届けたいのか、説明しない人がいます。

クラウドソーシングは、「Webメディアのコンテンツ制作費は安い」という悪習を拡散し、ライターの地位を下げた元凶のシステムですが、編集者が介在していても、そのような「安かろう悪かろう」のコンテンツ生産は後を絶ちません。これがネット上にクズ記事が大量発生する原因であり、制作費が上がっていかない元凶です。

「お前たちは言われたパーツを埋めるだけでいいのだよ。替えのライターはいくらでもいるので、イヤならやらなくていいよ」と。あなたがいまクラウドソーシングで細々と小銭を稼いでいて、また経験は乏しいもののいつか稼げるライターになりたいのであれば、そして自身のスキルに自信があるならば、いますぐにWeb制作会社や広告代理店やメディア運営会社に直接売り込んだり、自らブログを書いたりしてアピールすべきでしょう。

クラウドソーシングでも大量の経験と実績があれば、同じ土俵での評価は得られるかもしれませんが、付加価値を上げて十分に稼いでいけるライターになるためのステップにはなり得ないのです。コンテンツはネット上を「埋める」ものではなく、「作る」ものです。イケダハヤト氏風に言うなら「まだクラウドソーシングで消耗してるの?」ということです。

“なんちゃってコンテンツマーケティング”で、大量生産されるテンプレートコンテンツ

最近、あるコンテンツエージェンシーから、「コンテンツマーケティング用のメニューを作ったので紹介したい」とお話をいただいたのですが、それはイラストのテンプレート集でした。年間契約するとフリー素材のようにイラストが使い放題という商品です。記事の内容に合わせて適切なイラストが自由に使えるというもの。ああ、これは便利だ! ・・・なんてなるわけがありません。どこにでもありそうな使い古されたクオリティの低いイラストに、中途半端なバリエーション。私は愕然としました。なぜこれがコンテンツマーケティングなのか? 

コンテンツマーケティングという名の下、一番多いのが、この手の大量生産系のテンプレートコンテンツです。クラウドソーシングしかり、フリー素材しかり、百円均一ショップの如くチープな既成品による、メディアを「埋める」ためのテンプレートコンテンツの氾濫です。

これは誰のためでしょうか? コンテンツの発信者はコストを安く抑えられるメリットがあるでしょう。ではユーザー(読者)にとっては? どうせただで読むコンテンツだから期待していない? では何のためにコンテンツを発信しているの? さまざまな疑問が浮かびます。

コンテンツマーケティングを標榜しながら、クラウドソーシングを使ってコンテンツの大量生産を生業とする企業は多くあります。それを否定するつもりはありません。私たちは安くて便利な立ち食いそばや牛丼だって必要とします。ステマの商品レビューやアフィリエイト用の提灯記事もコンテンツには違いありません。ただはっきりしているのは、「心を動かさないコンテンツ」は、コンテンツマーケティングではない、ということです。「穴埋め」のコンテンツで人の心は動かないのです。誰だって意中の人を初めてのデートに誘うとき、牛丼屋に連れていきたくはないはずです。牛丼屋のデートでは相手の心を動かすことが困難だからです。

クリエイターを成長させるもの

私自身、現在はフリーランスのコンテンツディレクターとして生計を立てていますが、誰がやっても同じような付加価値のつかない仕事は受けないようにしています。プライドではありません。そういう仕事を受けると引き続き同様の仕事が増え、それが中心になってしまうからです。もちろん高くなればそれだけのクオリティが求められるので、ときには想定外の時間を費やすこともあります。しかし、それは自分のスキルアップのためと割り切れます。「ライティング」という専門スキルが求められる仕事でありながら、単純作業のアルバイトの時給より安い仕事は、「暇つぶし」か「修行」でしかありません。

冒頭で述べたように、私はWebメディアでギャラが安すぎるときは、旧知の腕のいいベテランの起用を諦めるものの、できるだけ筋の良い新人ライターを育てながら起用する、という方針でコンテンツ制作に取り組むよう心がけています。そういう新人ライターが育っていくのも編集者の醍醐味です。

中には20代半ばでフリーランスの編集兼ライターになったばかりでも、仕事のクオリティを見極めることで、常に月収50万円以上稼いでいる人もいます。稼げるようになるには、もちろんクリエイター自身の努力と才能に依るところはあるのですが、クリエイターを本当の意味で成長させるのは、コンテンツ発信者の「良いコンテンツ」を作ろうという志なのです。そして、良いコンテンツを作る才能は、お金のあるところに集まってくるものです。

なので、私はいくら時間が空いていても、何も付加価値を生まない、自身の成長を促せない消耗戦には参加しません。そんな時間があったら、デートで美味しい食事をしたり、プロ野球を観戦したり、カラオケで歌っているほうを選びます。なぜなら、そのほうが自分のコンテンツ力が磨けると考えるからです。

(文・成田幸久)

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コメント6件

その通りですね→ コンテンツは「作る」ものであって、「埋める」ものではない。
勉強になります!有難うございました^_^
音楽制作と同じ様な感じですね、、。共感しました。
わたしも同感です。
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