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タイプ別ライターの取扱説明書

ライターは大きく以下の4種類のタイプに分けられます。

■先生タイプ

■一芸必殺タイプ

■天才タイプ

■クラウドソーシングタイプ

あなたがライターであろうと、編集者であろうと、Web担当者であろうと、ムダな時間と労力を費やさないためにも、このライターのタイプを見極めておくとよいでしょう。孫子の「彼を知り己を知れば百戦殆うからず」です。

では順番に見ていきましょう。

■先生タイプ

専門分野・得意分野を持ち、経験も豊富なタイプです。編集者にとっては、扱いたいテーマに適切なキャスティングさえしてしまえば、あとはラクなもんです。たとえば経済に強いライターを探すとします。経済といっても流通の話なのか、企業経営の話なのか、金融の話なのか、貯金の話なのか、さまざまあります。「流通→食品→生鮮食品」と細かくブレイクダウンして、生鮮食品について書いてもらいたければ、生鮮食品について知識も経験もネットワークも豊富なライターをキャスティングしたいでしょう。その場合、質の高い、オリジナルのコンテンツを期待するのであれば、当然原稿料も高くなります。

これは特定のジャンルに長けているというだけの話ではありません。作家や漫画家はまさに「先生」と呼ばれるプロですが、ストーリーや絵を作ることに長けている専門家です。すでに有名、売れっ子になった先生ライターも初心者の時代を経てきています。その金の卵を見出すのも編集者の大きな仕事のひとつです。そうでなければ新しい才能は生まれません。

あなたが編集者やWeb担当者なら、まず情報アンテナを高く張って常に質の高い先生タイプのライターを探さなければなりません。先生タイプのライターは当然単価が高くなりますが、たとえ予算が少なくて原稿料が安くてもメディアに影響力があったり、評価が高ければ、安い原稿料だからといって、書いてくれないとは限りません。ライターとしてはブランディングになるからです。

「金の卵」を見つける場合も同じです。先生予備軍の「金の卵」は安い原稿料でも「育ててくれる」編集者やメディアとは喜んで仕事をしてくれますが、質の低いメディアや編集者を見極める嗅覚は鋭いので、新人だからといってなめると相手にしてもらえません。

あなたがもし先生タイプのライターを目指すのであれば、良質のメディアと編集者と仕事をするに限ります。どんなに才能があっても、質の低いメディアや編集者と仕事をしていては、出る芽も潰されてしまいます。

特にクラウドソーシングは百害あって一利なしです。永遠に売れない三流ライターをやっていく覚悟があればクラウドソーシングで仕事を受けていてもいいでしょう。しかし、先生タイプをめざすのであれば、それは練習や訓練にもならないし、むしろ悪いクセのままフォームを固めてしまうリスクも高く、遠回りですらありません。ただ坂道を転げ落ちていくだけです。

■一芸必殺タイプ

文章力は拙くても、着眼点や切り口がユニークなので書き慣れると化けるタイプです。

若い人のほうがのびしろがあることが多いですが、年配の人でも心配はありません。違う分野で何かを成し遂げた人であれは、それがすでに武器になっているので、ライターをやっても開花する可能性が高いと言えます。

私自身これまでイラストレーターやカメラマン、企業家など、ライターを本業にしていない人たちに原稿書きを依頼したことは何度もあります。年配の人も少なからずいます。しかし、文章自体の上手下手はほとんど関係ありません。

一芸に秀でたプロたちは、「誰に(who)→何を(what)→なぜ(why)→どうやって(how)」伝えるかを明確に認識しているからです。どんな職種であろうと、それがコンテンツだろうと、商品だろうと、サービスだろうと同じです。文章の上手下手は編集者が修正・整理すればいいだけで、「誰に(who)→何を(what)→なぜ(why)→どうやって(how)」という幹を明確に定められないと、編集者がいくら道案内や助言をして枝葉だけいじってもどうにもならないのです。

たとえば、いま私はサッカーを専門に書くあるライターと仕事をしています。サッカーに詳しいライターを探していたとき、ブログを読んで声をかけさせていただきました。私が目をつけたのは、彼の「視点」です。ある事象を切り取る視点が面白かったのです。そのライターはプロのサッカー選手を目指していましたが、大学生のとき足を故障しプロを諦めたそうです。現在はWeb制作会社に勤務しながら、サッカー業界にどんな形でもいいから貢献したいと考え、ブログで記事を発信していました。

このライターは物書きとしてはほとんど経験もないし、特別な訓練も積んでいません。しかし、やはり「誰に(who)→何を(what)→なぜ(why)→どうやって(how)」を常に考えています。なぜなら彼の目的は「サッカー業界に貢献をしたい」ことだからです。こういうライターとの仕事は本当に楽しいし、勉強になります。1本1本、試行錯誤しながら「誰に(who)→何を(what)→なぜ(why)→どうやって(how)」の行程を一緒に考える作業は編集者冥利に尽きます。

■天才タイプ

ライターの経験がないもののさらっと書けてしまうタイプ。本やマンガが大好きという人や高学歴の人に多いタイプです。

本や漫画が大好きという人の共通点は「ストーリー」を重んじるということです。エンターテインメント性の高いコンテンツに多く触れているので、どんなコンテンツが喜ばれるのか肌感覚で身につけています。また表現方法などのスキルも、数多くのコンテンツに触れてきているので引き出しが多くあります。

私の経験上では、学歴とライターの能力はあまり関係はありません。ただ、高学歴の多くの人は基本的な知識が豊富なことが多く、受験勉強などを経て文章を書く訓練も人一倍してきています。なので基本的な「書く力」を最初から身につけていることが多いというのは間違いでしょう。

私は「センス」や「才能」という言葉をあまり信じていません。というか、これらの言葉を使ってしまうと、思考停止になってしまうので、なるべく使わないように心がけています。「あいつはセンスがないから無理だ」とか「あいつには才能がない」で片づけてしまったら、成長も進化もありません。

では天才タイプのライターとはどんな資質を持っているのでしょうか。実はこのタイプのライターには、ライターを専業でやっている人は少ないように感じます。

学生なら卒業したら起業したり、自分でメディアを作ったり。特にダイバシティ(多様性)が大前提の近年のIT業界では、ライターという職種の定義も変わってきたのかもしれません。もはやライターという職種は企業家の持つスキルの1つでしかないのかもしれません。ホリエモンやひろゆき氏や落合陽一氏のような企業家の書く記事が人気があるように。

もちろん、一般企業が運営しているオウンドメディアでも社員参加型で記事を書いたり、写真を撮影したりしていることも少なくありません。

こういう天才タイプはライターというより、ビジネスパートナーという認識で考えてコンタクトをとれば、思わぬ新展開が繰り広げられる期待も膨らみます。その場合はあなた自身にも当然提供できるお土産が必要になります。

また天才タイプは、それを見つける選球眼も問われます。あの大ヒット漫画『進撃の巨人』はどこの出版社でも「絵が下手だ。気持ち悪い」などと言われ門前払いを喰らったことは有名な話です。門前払いをした編集者はいまどんな思いをしているでしょうか。 

■クラウドソーシングタイプ

クズライターの多くがこのタイプです。CMSの普及によって、Webメディアが多く現れてきてから生まれた新種です。もちろん昔からいい加減だったり、ルーズだったりするクズライターはいました。しかし、昔のライターはある程度のスキルがなければ、そもそも仕事がありませんでした。どんなに安くても、タダでもいいから書きたいと言っても、そういうクズライターが書いたクズ記事を載せるメディアがなかったのです。しかし、いまは紙メディアのように制限はありません。どんなクズ記事でも大量生産すればPVという指標である程度効果が示せるため、ビジネスとして成立してしまっているのです。だからクラウドソーシングを拠点に安かろう悪かろうなクズ記事が大量発生しているのです。

たとえばゴルフやバッティングの練習をするとき、間違ったフォームで練習していては、何時間練習したところで上達はしません。むしろ変なクセだけが身について修正が難しくなるでしょう。

クラウドソーシングはマッチングサービスなので編集者がライターを育てるというプロセスがほとんどありません。また異常に安い原稿料が設定されているため、本業でライターを目指す人にとっては現実的に仕事として成立させるのは困難です。だから当然まともな記事が書ける人は利用することはほとんどありません。

つまり素人が素人として小銭を稼ぐ程度しかできないシステムなのです。ライターとしてのスキルが身につくのであれば、授業料を払って勉強する意識でやれます。しかし、適切な指導者がいない場で間違ったやり方で「実績を積んだ」ところで、逆に「汚点」になるリスクのほうが高いと考えていいでしょう。

実際、私がこれまで関わったクラウドソーシングタイプは、ライターになるレベルにほど遠い人がほとんどでした。記事を書いたことのない白紙の学生のほうが期待値はあります。たまに「書ける」ライターはいますが、そういう人はクラウドソーシングの先にいるクライアント側に編集者がいて、ちゃんとディレクションを受けています。

クラウドソーシングタイプでも普通に書けるライターはいるかもしれません。しかし、少なくとも私自身はいまだ会ったことがありません。むしろ私の経験では、下手にクラウドソーシングの経験をしていないライターのほうが手間はかかりません。

絵を描くことを想像するとわかりやすいですが、「犬の絵を描け」と言われたら上手い下手の差はあっても、たいていの人は少なくとも犬とわかるくらいのレベルの絵は描けると思います。でも、クラウドソーシングで書き慣れたライターのほとんどは、その絵が犬なのか猫なのか馬なのかカバなのかわからないーーそんなレベルなのです。

あなたが編集者やWeb担当者なら、ライターの発掘は自らの目でブログなどで探して見つけたほうが結局は効率はよいでしょう。1本数百円でクズ記事を書き続けてきた悪習にまみれたライターを改めて育て直すのは費用対効果が悪すぎます。

あなたがライターを目指しているのであれば、クラウドソーシングの仕事にどっぷり浸かって悪いクセが頭と身体を蝕む前に脱出すべきでしょう。

そして評判の高いメディアを読み漁ったり、そういうメディアの記事の書き方をマネしたり、売り込んだりするほうがライターへの道は近いでしょう。あるいは、自らブログを書いて直接読者の反応を見ながら切磋琢磨して、声がかかるのを待つほうがよいでしょう。

以上、4タイプのライターの特性とその対処法について書きましたが、それぞれの特性に応じた付き合い方をすれば効率よく質の高いコンテンツを作っていくことができると思います。クラウドソーシングタイプだけは、「触らぬ神に祟りなし」です。

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narita.yukihisa@gmail.com

 


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