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哲学教室 [中学生の部] (4月2日実施)

ナラナラ・スクール事務局の矢口ゆりです。
各教室の様子を個人的な感想と共にお伝えします。

https://narranarra-school.myportfolio.com/


4月2日(日)に哲学教室(中学生の部)を実施しました。
世界中で読み親しまれている『ガリバー旅行記』(ジョナサン・スウィフト 作、柴田元幸 訳)を読みながら、自由に語り合う教室です。


◉『ガリバー旅行記』第2部が風刺する内容等
4/2に確認した内容:
・ガリバーは科学で解決できない自然の気まぐれだとブロブディングナグ国の学者が結論付けた場面を描くことで、スウィフトは18世紀の科学に対する痛烈な批判をしている
・スウィフトとニュートンは同時代人であったが、アイルランド人のスウィフトはイギリスの造幣局長を務めていたニュートンを嫌っていた
・世の中を全て科学的に解明していくニュートンに対し、スウィフトは神秘は存在すると考えており、世の不思議な出来事を科学で解決しないで欲しいという願いが込められている
・スウィフトは現代にも繋がる政治問題、軍事問題等について追求している
・第1部における宮殿の消火方法、第2部での海峡名のように排泄に関わる記載が度々登場する理由は、イギリス文学では笑いと風刺が重要な要素とされているため
・スウィフトや宮沢賢治が優れたネーミングセンスを持つように、詩人や作家にとって言語感覚は重要である
・『ガリバー旅行記』をはじめ、スウィフトの著書全般に当時のイギリス王室への痛烈な風刺が込められている

語り合った内容、意見等:
・詩についての感想
・現時点における『ガリバー旅行記』の感想
・王室(皇室)批判に対するイギリスと日本の違い
・絶妙な言葉選びや文章表現力で人の心を動かすことができる

次回実施予定日:4月16日(日)




ここからは私の個人的な感想をお伝えしますね。

前回の内容を復習しながら今回も始まりました。
そして前回取り上げたウィリアム・ブレイク作『無垢の予兆』の冒頭部分について、今回は中村が和訳したものを紹介していました。
”一粒の砂に世界を
一輪の野の花に天国を見るために
君の手のひらに無限を
ひとときのうちに永遠をとらえよ”
訳者により解釈や言葉選び、全体の印象が大きく変わるのが興味深いですよね。
“〇〇の△△に□□を”の形で揃っている訳詩のリズム、そして「花が咲いて散っていくところに生命の誕生と消滅がある」という中村の発言に、詩人ならではの感性が表れていると思いました。
季節柄お花見の話にもなりましたが、確かに桜は出会いと別れの季節に咲く花ですよね。
出会いと別れの季節に絢爛と咲き誇りあっという間に散っていく、その儚さと潔さを持つからこそ、日本人は桜に特別な思いを抱いてしまうのかもしれないと思いました。

今回、参加者さんが自作の詩を朗読してくださいました。
淡々と語られる前半から一気に内容が展開していく後半の流れがとても素敵で、その世界にぐっと引き込まれてしまいました。
主人公との対比が感じられる最後の一文も印象的でした。
中村も自身の詩を朗読していましたが、様々に解釈できる自由度の高さが詩の魅力であり面白さなのかもしれないと思いました。

現時点での『ガリバー旅行記』の感想について、中村が参加者さんに質問していました。
この質問に対し、「ガリバーに振りかかる困難がほぼありえないことに見えつつも実は非現実的ではなく、そういったところを上手く表現している点が面白い」「物語の要素と風刺の要素の二つから『ガリバー旅行記』が成り立っており、この二つの組み合わせが面白い」と参加者さんが発言されていました。
参加者さんの仰る通り、一見現実的ではなさそうで実は現実的である点、そして冒険譚としての面白さと風刺の絶妙なバランスが『ガリバー旅行記』の大きな魅力になっていると感じました。

そのようなことを色々と感じながら、あっという間に過ぎたひとときでした。
次回以降も、参加者さん自作の詩を発表していただけることになりました。
とても楽しみです。
皆様、お疲れ様でした。


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