見出し画像

哲学教室 [中学生の部] (3月19日実施)

ナラナラ・スクール事務局の矢口ゆりです。
各教室の様子を個人的な感想と共にお伝えします。

https://narranarra-school.myportfolio.com/


3月19日(日)に哲学教室(中学生の部)を実施しました。
世界中で読み親しまれている『ガリバー旅行記』(ジョナサン・スウィフト 作、柴田元幸 訳)を読みながら、自由に語り合う教室です。


◉『ガリバー旅行記』第2部が風刺する内容等
3/19に確認した内容:
・ルネサンスとは、中世的価値観が崩壊(教会支配時代が終焉)した後に14世紀のイタリアからヨーロッパへと広まったギリシャ・ローマ時代の芸術の復興運動(文芸復興、人間の復興)
・ルネサンスの巨匠ラファエロの『アテナイの学堂』では、プラトンとアリストテレスのもとで人々が自由に哲学を学ぶ様子が描かれている
・ノーベル文学賞を受賞した大江健三郎の小説『同時代ゲーム』に巨人が登場し、『新しい人よ眼ざめよ』ではガリバーに触れており、『ヒロシマ・ノート』は原爆、『沖縄ノート』は沖縄戦について執筆している
・大江健三郎が大きな影響を受けた人物は、広島で被爆を経験した小説家であり詩人の原民喜
・ガリバーがブロブディングナグ国王に爆弾の作成方法を教えようとする場面で、こんな技術の応用はとんでもないと王様に答えさせることでスウィフトは人類を批判している

語り合った内容、意見等:
・核兵器は持つべきか、放棄すべきか
・科学とは良いものなのか、悪いものなのか
・科学の発展に伴い、環境破壊等の問題が起きた
・科学は芸術に限りなく近いものである
・科学技術のあり方、悪用を防ぐためにどうすべきか
・ChatGPT(AI)について

次回実施予定日:3月25日(土)




ここからは私の個人的な感想をお伝えしますね。

核兵器は持つべきか持たざるべきか等、今回も核をテーマに意見交換を行いました。
参加者さんは核兵器を持つべきでないという考えで一致しており、「原子力発電といった平和利用目的の実験に使用する分の核だけ持ち、人を殺してしまう量の核は持つべきではない」「原子力発電は徹底管理すれば使用して良いが、兵器としての核使用には反対」といった核の使用方法に関する発言もありました。
核の平和利用については「原発事故も起きており、地震を止めることもできないので核自体を持たない方が良い」との意見がある一方で、「太陽光発電は費用対効果が低く、脱原発に舵を切ったことで電力不足に陥った海外の例もあるように、核自体をなくすことは難しいのでは」といった意見もありました。
中村が発言していたように、どの意見も正しいと思いました。
放射線治療等の医療分野における核使用について中村が触れていましたが、少なくとも使用量や使用目的をより限定させる方向に進んでもよいではないかと感じました。
そして核問題解決の難しさを痛感しました。

大江健三郎が文学的側面で大きな影響を受けた人物として、中村が原民喜を紹介していました。
原民喜の詩『コレガ人間ナノデス』を中村が朗読していましたが、非常に衝撃的でした。
「あまりに酷いこの世界をひらがなで表すことはできない、カタカナでしか書けない」との理由から、漢字カタカナ交じり文で綴られていると中村が説明していました。
女文字とも言われるひらがなは柔らかいイメージや読みやすさから生まれる親しみやすさがある一方、カタカナは外来語の表記にも用いられるように斬新さやシャープさが感じられ、時に無機質で冷たい印象を与えることもあります。
詩の内容自体も強烈ですが、無機質なカタカナ交じり文で淡々と綴られていることで、むしろその生々しい残状と作者の心の叫びがより一層読者へと迫って来る詩になっていると感じました。

ガリバーがブログディングナグ国王に爆弾の作成方法を教えようとする場面について、中村が取り上げていました。
第1部では一人も殺さず戦争を終結に導いており、基本的には平和的解決を試みる善人として描かれていたガリバーですが、確かにこの場面ではちょっと違いますよね。
「いい格好をしてばかりではないところが『ガリバー旅行記』の魅力」と参加者さんが発言されていましたが、こういった一面を描くことで、ガリバーというキャラクターに現実味を持たせているように思います。

科学技術のあり方等について参加者さんと意見交換を行いましたが、色々と考えさせられる内容でした。
参加者さんの意見は鋭いです。
科学は芸術に限りなく近いという中村の発言には一瞬驚きましたが、純粋な数式の世界は美しいという説明に、不要なものを削ぎ落としていくプロセスや、新しく完全なものを作り上げようとする点が共通しているかもしれないと思いました。
黄金比やフラクタル図形の完成された美しさも芸術ですよね。
一見対極に思える科学と芸術に共通点があることを面白く感じました。

そのようなことを感じながら、今回も大変興味深く拝見いたしました。
次回も、参加者さんや中村と共に色々と考えていきたいです。
皆様、お疲れ様でした。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?