避雷星 (ひらいぼし) 003

母親は喫茶店に行くのが好きで、近所の喫茶店派ほとんど連れていかれた
昔ながらの水出しコーヒーを入れる店から、ドールのようなお店、
テーブルがインベーダーゲームになっているような古臭いお店など、
いろんなお店に連れていかれた。
母親は決まって「アイス」と言ってアイスコーヒーを頼んでいた
タバコに火をつけては、数回吸って消してを繰り返していた。
その口元からでる煙を見つめながら、暇な時間をミニ四駆の事やバックリマンチョコのシールの事、エアーガンが欲しい事など、子供が考えるような事をただただ、考えていた。
僕は決まって、アイスティーを飲んだ、特に好きでもない飲み物を
その付き合いのために飲んでいた。

新宿の真ん中らへんにある戸山団地は公園の中に日本一小さな山 箱根山 があり、
それを取り囲むように、5階建から14階建のアパートが36塔ぐらいあり
その中の5階建の1階の角に僕たちが住んでいる部屋があった。
大久保通り沿いという事もあり、車の騒音がひどく聞こえる部屋だった。

僕はそのアパートに3歳頃から住んでいる。
帰る場所はここなんだな、ここが故郷なんだなとなんとなく思いながら、
強烈な西日を玄関の踊り場に光が差し込んでいた。
昼間が愛おしくも感じるひと時だった

夜になると母親はビールをのみテレビをみる、
「お前が悪い」だの「あいつ(父親)に似てきた」だのありとあらゆる事を僕のせいにして
文句を言う、飲み過ぎた日なのかわからないが、ゴミ箱が急に飛んできたり、包丁で脅されたり、首を吊って一緒に死のうなど、どうしてよいのか?全くわからないことが
毎日のように起きていた。
おまけに、そのタバコのせいかなんなのか、僕は小児喘息で
あまりに咳が治らないときは、母親が僕を自転車にのせて、近所の救急病院に連れていってた。
なかなか眠ることができない小学生生活で、
夜中にボリボリとアトピーを掻いているとうるさいと怒鳴られ、
喘息で、咳をしていると怒鳴られ、あんたのせいだと罵られていた。

夜中にうるさいと怒鳴られ、外に逃げようとしたら、
「だれが勝った服をきているのか」と言われ裸でアパートうらの影で隠れていた
すると母親が探しにきて、もう怒らないからと言うので、家の中にはいるなり、さらなる叱責をくらい、そうやって出て行くのか、お前もあいつと同じだなと言うのだった

近くにある、図書館が唯一の救いの場所で
喘息や寝不足のために起こる頭痛のせいで、学校を休んだ日には
よくそこへ行き、いろいろな本を眺めたり、読んだり、していた。
図書館の一階には公衆電話があり、こども110の電話番号が書いてあった
僕はよくそこまで言って、何を言おうか頭の中で繰り返しとなえるのだけど、
受話器をあげて10円を入れるところまで行けなかった。
裏切ってしまうようなきがして。

次第に僕は学校にもいかず、親の顔色をうかがいながら
ただ、生かされる日々を暮らしていた。
いつか必ず、大人になって、この埃だらけの部屋から抜け出して
自由に生きるんだ!
子供ながらに思い、計画を立てていた。

次第に、小学校も休みがちになり、とうとう夏休み明けから行かないことに決めた

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