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山で捨てられているごみたち

 山で仕事をしていると、悲しい現場に出くわすことがあります。それは、ごみが放棄されている現場です。

 先日の現場ではこんな感じのごみが放棄されていました。

自動車のタイヤ


プラスチック製の何かの容器

 この他にも工事現場で使うような厚めの網や長靴がありました。

 今回の現場にはありませんでしたが、今まで入った現場ではバッテリーや冷蔵庫などを捨ててあるところもありました。
 山の現場はなかなか人が気軽に入るところではありません。道もアスファルトで舗装されているような道路ではないので、入るのも容易ではないはずです。そんな場所にわざわざ捨てなくても良いじゃないかと思ってしまいます。

 ある現場では日本酒の一升瓶がたくさん捨ててある現場もありました。昔の林業現場では作業の昼休みに酒を飲んでいたと聞いたこともあるので、昔、山で作業した人が捨てたのかな、と思います。
 昔の生活は木製・竹製の道具など、山に帰るもので生活していたので、家で必要なくなったものは山に捨てる(帰す)ようにしていたと聞きます。そのため、年配の方々の中には要らなくなったものは山に捨てる、という思考の方もいらっしゃるのかもしれません。
 ただ、現代の生活においては、逆に山に帰らないもの(プラスチック製品や電子機器)の方が多いので、要らなくなったものを山に捨てる、という行為が粗大ごみ放棄と同義になっているのかもしれません。

 私が子どもの頃、学校の社会科の授業で公害についての勉強がありました。水俣病などの四大公害病もそうですし、工場や自動車の排気ガスによる大気汚染、生活排水による水質汚濁、ごみ処分による土壌汚染などの事例の紹介もありました。
 子どもの頃のそうした勉強で、私は「人類は地球環境に害為す存在なんだ」という思いに囚われたのですが……まあ、それは別の話です。それとは別に、「ごみをきちんと分別して捨てないといけない」という思いも持つようになりました。これは、私が生活する上で地球環境を悪くすることは避けられないなら、せめてその害を少なくしたいと思って至った結論です。当然、ごみのポイ捨てや不法投棄はもってのほかです。

 そういう価値観の私からすると、山の現場に入ってごみが放棄されているのを見ると本当に心が辛くなります。
 一つは私の「地球環境への負荷を減らすためにごみはきちんと分別して捨てよう」という価値観から離れた行為だからです。山に帰らない車のタイヤはもちろんのこと、バッテリーなどは毒で土壌を汚すことになりますので、直接に自然を悪くします。「人類は地球環境に害為す存在だ」という私の思い込みが強化される感覚が出てきます。
 もう一つは、わざわざ山奥に捨てるという行為に「バレなきゃいいでしょ」という捨てる人の心が透けて見えてそれも非常に嫌です。あるいは処分にお金がかかるから、その費用を払いたくなくて山に捨てる人もいるでしょう。極端な表現かも知れませんが、人間の醜悪さが具体化されて現れたものがそれらの捨てられたごみたちのように感じるのです。本当に辛いし悲しくなります。
 

 「ごみ」と言っても元は人が求めて必要だったものです。それが壊れたり要らなくなったりしたときに「ごみ」になります。であるなら、その「ごみ」は求めた人が責任を持って処分すべきだと私は思います。もちろん、自分が使っていたものでなく、他人が使っていたものがいろいろな経緯で自分の敷地にあるということもあるでしょう。私も今借りている家に前に住んでいた人の家具や生活品があったので休みの日に処分場に持って行って処分しました。
 自分の敷地にあるごみに対する客観的な責任が全く無い方もいるかもしれませんが、そのごみの所在が自分の権利の及ぶ敷地にあるのなら、勇気をもって処分をしてくださるようにお願いします。それらのごみは、あなたが処分しなければ誰にも相手にされないものたちなので。


 現代社会がごみが多く出る社会構造になっている、という構造的な問題はあると思います。先ほど例に出したように、木や竹で出来たものが生活品の大部分で、し尿もたい肥になり、金属でできたものも鍛冶において再利用できたような時代であれば、ごみが問題になることはないでしょう。というかそもそも「ごみ」となるもの自体が無かったかもしれません。今の社会のように「大量生産・大量消費」の社会構造だからこそ「ごみ」が存在するのであり、その構造を変えることが抜本的な解決だと思います。
 ただ、残念ながら今現在はそういう社会ではなく、ごみが存在する社会ですので、そうである以上は個々人がごみを適切に処分する努力をしないといけません。

 未来において、ごみが出なくなる社会構造となるように模索しつつ、現在においては個々人がごみをなるべく出さないようにする社会となることを望んでいます。


 本日は以上です。最後まで読んでくださりありがとうございました!
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