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ひとのきもち

某月某日

8月に入ると「夏真っ盛り」と「夏の終わり」がいっぺんにくるような気がするのは私だけなんだろうか。

お盆を過ぎたいまは「もう夏の終わりっぽいぞ」「こんなに暑いのに、夏は終わっちゃうんだね」という声が街中に充満している。暑かろうと秋はきっちりやって来る。そのことをみんな、わかっている。

あっという間に過ぎてしまう季節が恋しくて、少しでも気持ちを盛り上げようと、レモンイエローのシャツを纏って家をあとにした。

某月某日

「きっと私が悪いこと言っちゃったんだよね、仕方ないね」

パソコンの画面越しに、眉を少し下げて上司がそう言った。先日一緒に参加した社内ミーティングで相手方が語気を荒げて話す場面があり、気にしているとのこと。そこまで深刻に考えていなかった私は、上司が気を揉んでいたことにちょっと驚き、心配になった。

笑いながら話していたから。だから気になったんだと思う。

「自分にも非があるかも」「相手は悪くない」と思うと、どれだけこころがザラッとしても、まっすぐ悲しめないし怒れないような気がする。上司がまさにその状態だったとしたら、せめてこの瞬間だけでも「嫌だった」「悲しかった」という気持ちを吐き出せたらいいなと思った。

しばらく話したあと「気持ちが軽くなったよ」と言っているのを見て、より胸がぎゅっとなった。

やさしい人の悲しい気持ちが、透けて見えた。


20230823 Written by NARUKURU

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