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過半数日本人のヘルシンキのサウナ

去年のフィンランド滞在中、実は初めて公衆サウナに行った。ヘルシンキで擬似一人暮らしをしている間にふと思い立って一番近場のサウナに行くことにしたのだ。それがヘルシンキの老舗サウナKotiharjun Saunaだとは知らずに。

アルコールの購入は計画的に

バスに10分ほど乗ってサウナの近くのバス停についた。スーパーで飲み物を買ってから行こうと思い、ロンケロを手にレジまで並んでから、パスポートを置いてきたことに気づいた。フィンランドでは30歳以下に見える人には年齢の証明を求められる。しかたなくロンケロは諦めた。

スーパーを出たところに男の人たちがたむろしていて、治安に若干の不安を覚えながらも、サウナへ向かう。サウナはアパートのような建物の一角で、ネオンがなんともいい雰囲気だ。入り口に並べられた椅子ですずんでいる半裸のおじさんたちが、ここがサウナだということを教えてくれる。

フレンドリーな受付のおじさん

受付のおじさんに、フィンランド語で話すと「フィンランドに住んでいるの?」ときかれた。出立ちは観光客だから、意外だったのだろう。「10年前に」と答えると「よく覚えているね」と驚かれた。

飲みのものは受付でも売られていて、飲むまで冷やしておきたければ、その横にある冷凍庫に入れておいていいよ、と言ってくれた。冷凍庫を開けると他のお客さんの空いた飲み物がいくつか入れてあった。パスポートを忘れてしまったのだけど、と言うと大丈夫、大丈夫!とロンケロも売ってくれた。

サンダルがないなら2階にあるものを使ってねと言われたが、あまり勝手がわからないまま2階にあがる。室内は薄暗く、すりガラスや木製の扉、スノコが敷かれた床は日本の銭湯とかなり近い空気だ。ここまでくれば日本人にも勝手がわかるだろう。

服を脱いだら、バスタオルとミニタオルをもってシャワー室へ。壁のフックにタオルをかける。シャワーを浴びたら、ミニタオルを持っていよいよサウナ室へ入る。薄暗い部屋に大きなサウナストーブと階段状のベンチがある。千と千尋の神隠しに出てくる鎌爺のボイラー室をなんとなく思い出した。

石でできたベンチは熱すぎるので、スノコを敷き、その上にミニタオルを敷いて座る。フィンランドのサウナでは持参したミニタオルをお尻に敷くのがマナーだ。使い捨ての紙がある場合もあるが、Kotiharjuにはなかった。Laudeliina(らうでりーな)と呼ばれるお尻に敷く布がいろいろなところで売っているので、サウナーのお土産にはぴったりだと思う。

例えば、Lapuan kankuritの素敵なlaudeliina。フィンランドでサウナに呼ばれたらサウナハットよりもlaudeliinaを持参したほうがツウだと、私は思う。

過半数日本人のサウナ室とフィンランドのおばあさん

サウナ室にはフィンランド人のおばあさんが1人。しばらくすると明らかに日本人らしき人が1人、2人と入ってくる。気がつけばサウナ室は日本人5人、フィンランド人3人という過半数が日本人という状況になっていた。日本でのサウナ人気は本当らしい。サウナはここまで人を動かすのかと感心した。

日本人同士、いろいろな話をした。どのサウナに行くのか、ロヴァニエミでオーロラは見えるのか、日本では何をしているのか。フィンランドで一度にこんなにたくさんの日本人と話したのは初めてで、つい盛り上がってしまった。

休憩に出ると、さっきのフィンランド人のおばあさんがいたので「すみません」と声をかけた。いきなり外国人に声をかけられて何を聞かれるんだろうと怖かったにちがいない。「うるさくしてしまってすみません。大丈夫でしたか」とフィンランド語で言うと、おばあさんの表情は和らいで「いいのよ。サウナはおしゃべりを楽しんでいい場所なのよ」と言ってくれた。他の日本人もうるさかったのではないかと気にしていたため、おばさんの言ってくれたことを伝えるとみな安心してくれた。

タオル一枚でヘルシンキの道端に座る?

私はタオルを巻いて一階におり、冷やしてある飲み物と一緒に外の椅子に座ってみた。女性は誰もいなかったけれど、サウナでは誰もそんなこと気にしないだろうというマインドで、なかなかないシチュエーションをきちんと経験しておくことにした。特に周りの男性も気にしている様子はなかった。

他の日本人はこれからまだ2件サウナに行ってきますと、さすがのサウナーっぷりを見せて去っていった。ヘルシンキのサウナで過半数が日本人というだけでも面白いのに、そのさらに過半数が関西人で、関西人の世界進出ぶりには笑ってしまった(移住者、関西人が多いという私の偏見に基づく)。そこから後にロヴァニエミで落ち合ってランチするほどのお知り合いもでき、なんだか思っていたのとは違う意味で、面白いヘルシンキ公衆サウナ体験となった。


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