捨てる神、拾う神

中国の政情不安や人件費の高騰、加えて労務管理の難しさと恣意的な法令解釈に振り回されて、無念の撤退を決意する企業は実に多い。だが、撤退は進出の何十倍もの困難を強いられるのである。まず、解雇が簡単にできない。できたとしても補償金がべらぼうな額になり、その根拠も定かではない。地方政府のご機嫌をそこねれば、撤退の「許可」も得られない。甚だしきは、責任者が留め置かれて(事実上の軟禁)相手側の要求する金銭を払わないと「解放」されない。結局、それまでに投資した機械、技術、原料など一切合切を現地に捨てて、身体一つで逃れてくることになる。報道されていない負の面は、当事者たちの報告会でひそかに語られるだけである。

ところが、世の中は広いと思わざるを得ない。日本企業の撤退をビジネスにするというモデルが生まれた。撤退企業の現地の設備と商権、供給責任などを一式請け負って代替するのだという。「おたくが止める事業を一切引き受けて継続してあげましょう」というのだから、撤退企業にとっては地獄で仏の気持ちだろう。名前を「中国ビジネス再活性化戦略事業」という。この会社は初年度300億円の売り上げを予想している。UMCエレクトロニクス社である(日刊工業12/29)

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