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【童話】偽伝桃太郎【朗読用フリー台本】

 見てくださってありがとうございます。
 朗読のフリー台本です。ご自由にお使いください。
 ある童話のオマージュ作品となります。

昔々あるところに、桃農家を襲う鬼がおりました。鬼は木になっている桃を手に取ると、一口も食べないで握りつぶしてしまいました。

桃農家のお爺さんは叫びます。
「なんでそんなひどいことをするんじゃ」

鬼は答えます。

「我々、鬼の間に伝わっている一つの伝説がある。千年に一人、桃の中から生まれる究極の戦士がいる。我々、鬼はその戦士に滅ぼされる運命にある」

そう言いながら、鬼はまた別の桃を握りつぶしました。

「つまりだ、この世から桃を破壊しつくしてしまえば、我々を滅ぼす存在も生まれないというわけだ」

そして、鬼は桃農家のお爺さんを見て笑います。

「どうする? お前がもう桃を育てないというのなら、命だけは助けてやるが?」

お爺さんは震えながら言います。

「ほ、本当に、もう桃を育てなければ、ワシの命は助けてくれるのか?」

「ああ、約束してやろう。お前がもう桃を育てないなら、お前を殺すことはしない。だから、もう絶対に桃は育てるなよ」

「そ、そうか……。桃を育てなければ、ワシは死なずに済むんじゃな」

お爺さんは、にっこりと笑って、「だが、断る」と言いました。

「人間を舐めるなよ、この鬼畜生が」

お爺さんはしゃがれ声で言います。

「ワシには桃農家としての誇りがある。きっとワシはお前に殺されるだろう。だが、ワシの想いはまた別の桃農家が引き継いでくれる。いつの日か、鬼を滅ぼす戦士が生まれるじゃろう」

「この老いぼれがー!!!」

激高した鬼の拳が、桃農家のお爺さんの頭を直撃する――

そう思われた瞬間、鬼とお爺さんの間に割って入り、拳を止めた者がいました。

「な、何者だ! 貴様」
鬼は自分の拳を受け止められたことに驚きながら、突然現れたその存在に怒鳴りました。

「何者……か。お前は俺のことをよく知っているはずだ」

「なんだと?」

「お前たち鬼を滅ぼすために、千年に一人、桃の中から生まれる究極の戦士……そう、桃太郎さ」



To be continued……

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