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【小説】鶴の恩返し

おじいさんが家で待っていると扉をたたく音がする。
「やれやれ・・」
と言いながら、ゆっくりと立ち上がる。
ずっと座っていたからかお尻が痛む。
扉を開けると白い着物を着た女性がたたずんでいる。
「どなたかな?」
「私は、昨日助けて頂いた鶴です。」

昨日。
仕掛けた罠に向かうと一羽の鶴がかかっていた。
「お、鶴がかかっておるな。ほれ、放ってやるぞ」
罠から解放された鶴は大空へと飛び立ったのだった。

「昨日は助けて頂いてありがとうございました。恩返しに参りました。」
「ほう。どんな恩返しをしてくれるんじゃ?」
「わたしの羽を使って、機織りをします。」
「それはそれは。では機織り機のある奥の部屋にあがっておくれ。」
「はい。わかりました。」
女性の姿をした鶴が奥の部屋に入ろうとした。
その時、
「決して覗かないでください。」
「おう。わかっとるわかっとる。」
女性の姿をした鶴が部屋に入り、扉を閉める。

それを見送ったおじいさんは、いそいそと自分の部屋に戻る。
大きなモニターの前に座り、画面を切り替える。
画面に映し出されたのは機織り機のある部屋の監視カメラだ。
そこには鶴の姿に戻って必死に羽を抜いている場面が。
おじいさんはじっくりと観察する。
モニターにはうっすら笑みを浮かべたおじいさんの顔が写っている。

鶴が女性の姿に戻ったのを見計らって、部屋の前に。
「こちらが恩返しのものでございます。」
「これはどうもどうも。」
「では失礼します。」
「では達者でな。」

鶴が帰っていったので、鶴が織った織物を撮影して、運営している通販サイトにアップする。
そして、おじいさんは次の鶴の罠へと向かった。