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川柳連作『T. S.エリオット花粉症説─植物界球果植物門マツ綱マツ目ヒノキ科スギ亜科スギ属スギの花粉飛散による荒地が引き起こすアレルギー反応に関する考察─』

四月は最も残酷な月……
T.S.エリオット/岩崎宗治訳『荒地』(岩波文庫)

こんにちは!こんばんは!
川柳連作の公開です。なにやら副題も含めると長々としたタイトルですが……。

今回の連作のきっかけは、西脇祥貴さんから川柳連作の題として『T.S.エリオット花粉症説』をいただいたことでした。

……無茶ぶり?押し付けられた?……いやいやいや!こういうの、楽しいじゃないですか!楽しくないはずがないんです!それに楽しんだほうが優勝ですよ!ありがとうございますありがとうございます!
ということで翌日には、えいやっ!と、本棚からT.S.エリオット/岩崎宗治訳『荒地』(岩波文庫)を無事に発掘。すぐに見つかって良かったよと思いつつ再読しながら、連作の構成をねりねり。そこから、ほぼほぼ一気呵成に出来上がったのです。ぱちぱちぱち〜。

この連作、全部で76句あります。そして、長編詩『荒地』の「I 死者の埋葬」は76行からなります。わー数字が同じですね〜。ちなみに、T.S.エリオットの代表作である長編詩『荒地』は全五部(「Ⅰ 死者の埋葬」「Ⅱ チェス遊び」「Ⅲ 火の説教」「Ⅳ 水死」「Ⅴ 雷の言ったこと」)からなっています。
もし、もしですよ、可能であれば、この川柳連作を読む前・読んだ後または読みながら、岩波文庫版『荒地』収録の長編詩『荒地』の「I 死者の埋葬」を紐解くと、より一層お楽しみいただける……かもしれません。

まあまあともあれ、お時間のよろしいときに、ご笑覧いただけますと嬉しいです。

以下、PDFとテキストを載せてありますが、PDF版推奨となります。

それでは、どうぞ〜。

川柳連作

T.S.エリオット花粉症説
─植物界球果植物門マツ綱マツ目ヒノキ科スギ亜科スギ属スギの花粉飛散による荒地が引き起こすアレルギー反応に関する考察─


猫耳の裏側にあった、四月から

リラ荘のリモートコントローラー、首と

追従に管が詰まった、倒置法で

タペストリーと殴りかかる。

味つけは黄身たちだから、斑点を

流れ出す骨を噛み締め、騙された

蜜月の、白い光を見て暮れた。

梨が立つ、お呼ばれしても駄目なのだ。

植物だった。食レポして

いまから、格子柄だけを剥がして

ダンボールを飲み、水源を探した。

面ノ皮ノ永久凍土ハ嫌ナノ。

ソウルメイトは、畳の縁を漂って、

一等賞よ、担ぎ出しても神輿なの。

指が攣ったわ。華麗に「手毬、

手毬、抉って」って手だけ叫び出したの。

ババロアと、喧嘩した気分になれます。

煮凝りはたいてい増えて、戻ります。


弾き飛んだらここはどこ? 嘘混じりの阿

団長のネクタイは何? ゴーストよ、

達磨譲り、穿つ煉瓦の。侘しさとは

コラージュと馬の饗宴。それこそ証

タバスコの下に足跡、水の見取り図、

羅臼昆布とランデヴーを妄想。ただ、

肉球の横にはもはや絶頂ばかり

(朝ご飯は食べなさい)、

メドゥーサからの贈り物、──遠い目

ペンタゴンとも、別れたら、夕闇よ

ペンタゴンとも、異口同音を。

鰓呼吸の恐ろしさを激推しだ。

     サワガニハ泣ク

     布団ヲ放ッテ。

     ワガスギノ子ヨ

     eyeハ今ドコデスカ?

(くしゃみ)「でも打ち上げられたのは五年前、

(鼻づまり)「ニトログリセリンって叫んだわ」

──ヴィヴィッドに首吊り台から飛んだとき

後ろ向きに、歩いたから、筆跡が

かすれ、インクは滲んでて、読んでいいのか

謳いつつ投げていた。

オレンジピールの、ご遺体。

黄道はリメイクされてミドリガメ。


マダム・タッソーを阻止するタカアシガニで

ひどい霜に原画展は、それでもやはり

バトンリレーが上手かった鹿がいて

蝋燭を持った。ほら、と叔父は言った。

出土したポイントカード。人の名残よ、

(このボールペンが全財産、ごらん!)

きみは、ベアクロー、〈狸とはちがう者〉、

喧喧諤諤は誤り。

九尾の狐を追う奴。〈スポークスマン〉。

磁気不良。使用不可。ポイントカードは

くうきしかないけどしかたないもの。

でも、人からは見られないもの。おや、

〈カンガルー〉に睨まれたわ。痺れあり。

組み体操で危ない輪。

トンクストンクス。二万で握手したら

魚の小骨です、って言ってくださいな。

栗羊羹かどうか確認しなくちゃね。


〈非破壊not死〉

レコードの数多の溝の底の下、

虫眼鏡から見た悲哀。人と人、

両の肩が無くなっていただなんて。

ミトコンドリアを吐き出す練習させて、

くの字から修繕できず掘っていた。

クドリャフカは疑わない、その下り、

代わりゆく夕焼け・チャ・イムの時鐘が

死球の音が消えつつあった。

見覚えのある、ネギ塩を呼ぶ。「ジャック!

(くしゃみ)「磯遊びは直線だったね!

(鼻水)「しばし付け替えた眼球と鼻、

(鼻づまり)「サイケかい? サイコかい?

(目のかゆみ)「それとも、ん、カバディやるか?

(目の充血)「あ、〈木〉は植えるなよ。カモだから。

(無)「植えても植えてもずっと震えるからね。

粘膜、体液よ! 屍よ、嗤え!

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