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校長室通信HAPPINESS~「何で勉強しなきゃいけないの?」と子どもに聞かれたら…

「大人になって困るから」では子どもは納得しない

 よくある親子の会話です。「何で勉強しなきゃいけないの?」「勉強しないと大人になって困るからです。」「何で困るの?算数の面積の公式とか、社会の歴史上の人物や月の満ち欠けのしくみなんて大人になってヤフーやグーグルで調べればすぐわかるじゃん。漢字だってすぐわかるよ。それなのに何で苦労して勉強しなきゃいけないの?ねえ何で?」「…ごちゃごちゃ言ってないで、早く勉強しなさい!」…勉強の大切さは大人になると何となくわかるもの。でもそれをちゃんと説明するのはけっこう大変ですよね。今回は、「勉強する意味が分からない子どもたち」に、そして「勉強の意味をうまく説明できない大人たち」のために、「学校の勉強」についての自分の考えをまとめてみました。子どもに勉強の意味を伝えたい時、よかったら参考にしてください。(以下の文章は、本校の「学校だより」に掲載したものに一部修正を加えたものです。)

「なんで勉強しなきゃいけないの?」

と思っている子どもたちへ…

勉強は大切な脳のトレーニング
 勉強が苦手な人は、いろいろなことを「覚えるのが苦手」というのが多いですね。中には、「漢字が書けなくたってパソコンがあるし、計算ができなくても電卓がある。だから苦労して暗記や繰り返し練習をやる必要はない」と開き直って勉強しない人もいます。実はこれは大きな間違いです。例えば筋肉を鍛えるには「筋肉トレーニング」が必要ですよね。これと同じように脳を鍛えるには「脳トレーニング」が必要なのです。その「脳トレ」のひとつが「暗記」や「繰り返し練習」です。人間の脳は「覚える」ために行動すると、脳から信号が出て、神経を通って「覚える」ための道筋を作ります。その行動を繰り返すとその道筋はどんどん太くなって、時間が経っても忘れなくなります。勉強ができる人とできない人の差は、もともとの脳のしくみに違いがあるのではなく、太い道筋がたくさんできているかできていないかの差でしかありません。たくさんの太い神経が張り巡らされている人は、何かを考えたり、判断したりしようとしたとき、脳の中に張り巡らされた道筋を使って、必要な情報があっという間に集めることができます。これが「頭がいい」の正体です。だから暗記や繰り返し練習を続けていれば、誰でも「頭が良くなる」のです。学習を繰り返す努力をすれば、自分の可能性を広げていくことができるということは、皆さんの未来にとってとても重要な事実です。
このことをしっかり踏まえた上で、学校で行う勉強の意味を説明しますね。
 
国語で学ぶ2つのこと
 例えばあなたがきれいな花を見たときに、「きれいな花が咲いてたよ」だけではなく、「ちょっと薄いピンク色で、風にゆらゆら揺れているのがとってもきれいだった」なんて上手に説明できたら、その花の美しさが他の人にちゃんと伝わりますよね。国語は、こんなふうに自分の感じたことをちゃんと言葉にすることができるようになるための勉強です。「キレイ」を「キレイ」と感じたり、「楽しい」を「楽しい」って感じたりする心のことを「感性」って言いますが、言葉を知ることはこの「感性」を育てることにもなります。また、「海にいる鯛」「鮭の切り身」「水槽のメダカ」は、ひとつひとつは別々のものだけど、「魚」という言葉でひとくくりにすることもできますよね。こういうまとまりを「カテゴリー」っていうんですけど、バラバラのものをひとつの「カテゴリー」にまとめて、頭の中をスッキリさせて、ものごとを整理する考え方ができるようになるのも国語の勉強のおかげです。国語は「感性」と「思考」の2つの力を高めてくれるのです。

「世界共通のものさし」を算数で学ぼう
 「長いヒモを持ってきて」って頼まれたとき、AさんとBさんは違う長さのひもを持ってきた。そりゃあそうです。「長い」って感覚は人によって違うんですから。でも「10mのヒモを持ってきて」って言われればAさんもBさんも、アメリカ人もフランス人も、みんな同じ長さのヒモを持ってくるはずです。数のきまり、グラフや面積の公式なんかも世界共通のものさし。言葉が通じなくても、ちゃんと言いたいことを伝えてくれる…この世界共通のものさしを知るためには算数の勉強が必要です。

社会科で知る、大切な「世の中のしくみ」
 「人間が作った世の中のしくみ」を勉強するのが社会科です。身の回りにある公園や電柱やガードレール、学校、公民館って、誰のお金で作っているか知っていますか?それは君たちのお父さん、お母さんが払っているお金なんです。でももしあなたが買い物をして「消費税」っていうのを払ったら、それもいろいろなものを作るための資金になります。みんなで使うものはみんなでお金を出し合いましょう…これが世の中のしくみなんです。こんなふうに税金を払うことを納税って言います。納税は国を豊かにするものだけど、世界の歴史の中には、税金の集め過ぎで、国民が怒って、国が亡んだりした国もあったんです。そんな昔の失敗を学んで、「どうすればみんなが幸せになるだろう」って考えていくのが「歴史」の勉強ですね。

自然界にあるルールは理科で教えてくれます!
 理科では自然界にある規則や原則、ルールを勉強します。そういうのを自然科学って言います。みんなは「どうして月は落ちないんだろう」とか、「どうして影の長さは変わるんだろう」とか、「どうして地球は丸いのに人が下に落っこちないんだろう」とか、「飛行機みたいな重いものがどうして空を飛ぶんだろう」とか不思議に思ったことはありませんか?その答えは自然が作ったきまりやルールが関係します。それを昔の人たちは長い時間をかけて、実験や観察を繰り返しながら見つけ出しました。理科を勉強すると昔の人が苦労して探し当てた自然界の法則がわかります。「生活科」は、この「社会科」と「理科」の準備運動として、自分でたくさんのことを「発見」する勉強です。

世界の人の「気持ち」を知るには、まずは言葉から!
 外国語の勉強は、外国の言葉をただ覚えればいいというわけではありません。その国の言葉を知ると、その国の人の考え方を知ることができ、その人たちとどう付き合うかがわかってきます。例えば「相手」のことを言うとき、日本語には「あなた、君、お前、…」などたくさんの言い方がありますが、英語は「You(ユー)」のひとつだけです。これは英語を使う国の人は、できるだけ簡単に、分かりやすく話をしようとしますが、日本人はどちらかというと、他人に気を遣いながら話すことが良しとされているので、人によって言い方を変える必要があるのです。先生に向かって「お前」って言いませんよね。でも外人は誰でも「You」なんです。このような相手の考え方や習慣を知らないで付き合おうとすると、「スレ違い」がたくさん出てしまいます。もしかしたら戦争もそんなすれ違いから起こるのかもしれません。外国語の勉強は、世界中の人たちと仲良く付き合うために必要なのです。

体育で身体と頭を鍛えよう!
 体育は、体を動かしながら頭を鍛える勉強です。ある脳科学者が「脳はジョギングをしているときに最も活性化する」ということを発見しました。人間の脳はじっとしているときより、運動をしているときの方が、考える働きが良くなることがわかったのです。だから体育でたくさん身体を動かせば、どんどん頭が良くなります。休み時間に外に出て、体を動かして遊ぶことも大切です。

図工を勉強して自分を表現しよう!
 自分の考えや想いは、言葉で伝えるより、絵など、目に見える形で伝えるほうが相手に伝わりやすいことがあります。図工はその表現方法を学ぶ教科です。表現方法を知ると、「この夕焼けの美しさを人に伝えたい」「未来のロボットの模型を創ってみたい」という想いが強くなるかもしれません。言葉以外の表現方法を知ることは、人生を豊かにしていくのです。

音楽のリズムは人間の本能です!
 人間は生まれた時からリズムを持っています。それはおなかの中にいる時から、お母さんのリズミカルな心臓音を聞いているからだと言われています。街を歩いているとき、どこからか音楽が流れてくると知らないうちにそのリズムに合わせて歩いてしまうのは、人間の体の中にリズム感覚があるためです。「リズム感」は、人が生きていく上で必要な「空間認知能力」と大きく関わっています。音楽科はそんな生まれながらに人間が持っている能力や感性を高めていく勉強です。

社会に出るための「練習試合」が総合的な学習
 いろいろな教科で勉強してきたことを使って、自分の調べたいこと、みんなに伝えたいことを、自分で見つけるのが総合的な学習の時間です。世の中に出れば、自分で考え、自分で判断し、自分で実行することばかりです。総合的な学習は、いわば世の中に出るための「練習試合」です。だから総合的な学習では、先生に言われたからではなく、自分で進んで勉強する姿勢が何よりも大切です。

■どうでしたか?少しはスッキリしましたか?皆さんにとって勉強が、ワクワクするくらい楽しいものになればいいなあといつも思っています。

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