見出し画像

千文小説 その943:哀愁

 こんにちは、上村元です。よろしくお願いします。

 出したり、引っ込めたり、付けたり、外したり。

 こつこつと、ちまちまと、二台のiPadを動かして、ようやく。

 ここだ。

 これなら、いずれも、活きる。

 時空の隙間のようなポイントをつかんで、そして。

 決めました。

 もう、買わない。

 iPadは、今代たち限り。

 ぬやーむ。

 ぐりぐり。

 ずりずり。

 すみません、すみません。

 あまりにも、行ったり来たりするものだから、落ち着かず。

 眠いんだよ。

 寝かせろよ。

 すみません、すみません。

 いらだって、どついてくる愛猫に、ひたすらに、頭を下げて。

 どうにか、膝にお乗せして、西武ライオンズのバスタオルでおくるみ申し上げ。

 むふーん。

 ぐふーん。

 ほわおわ。

 うと、うと…。

 …。

 ぴーぷす、ぴーぷす。

 無事、爆睡にお入りになられるのを確認して、改めて、姿勢を正し。

 炬燵の上、六台揃った電子機器集団、カメラレオンを見やります。

 第六世代のiPod touchは、永久に、一台。

 13インチ、M1チップのMacBook Proは、いずれ、14インチのMacBook Proに、交替する。

 iPhone7と、iPhone14 Proは、次代が来ても、そのまま、続投。

 むき出しの、無印の第五世代と、キーボード付きカバーを装着した、無印の第九世代。

 ゴールドとスペースグレイ、二台のiPadは、ともに、iPodに準じる。

 買えないわけではないが、買わない。

 ガラパゴス機として、年を重ねていく。

 ぴーぷす、ぴーぷす。

 ぽわ。ぽわ。

 それ以外の、どの結論でも、駄目でした。

 第九世代に、薄紫色のフリップケースを付けてみたり、第五世代と同様、むき出しにしてみたり。

 もしくは、リセットして、クローゼットにしまい込んでみたり、それはもう、考えうる限り、ありとあらゆる手を打ったのですが。

 デッドエンド。

 袋小路に陥って、にっちもさっちも、行かなくなった。

 もちろん、次代も、検討して。

 見過ぎじゃない?

 言いたくなるほど、Apple社の、公式サイトを熟読し。

 もはや、アンバサダーとして雇っていただけそうな知識を、無駄に得つつ、そのうえで。

 終わりにしよう。

 iPadは、このままで。

 それが、最適解であると、心身ともに、納得しました。

 ぴーぷす、ぴーぷす。

 ぽわ。ぽわ。

 無印の第五世代、ゴールド、32GB、アクセサリーなし。

 無印の第九世代、スペースグレイ、64GB、キーボード付きカバー。

 iPodと併せて、土台の三台。

 土台であるとは、どういうことか。

 毎日は、使わない。

 決まった役目は、持たない。

 つまりは、ベンチ要員。

 スタメンに、何かあった時のための、補欠。

 あれ?

 iPhone7は?

 …そうなのです。

 以前は、土台に、iPhone7も、入っていた。

 でも、やはり、なんだかんだで、毎日使うし、役目も、それなりに、ある。

 これは、土台とは、言えないのでは?

 というか、iPhoneは、どの機種であっても、土台には、なり得ないのでは?

 その通り。

 iPhoneとMacBookは、リセットされるまでは、全員、現役。

 裏を返せば、リセットされたら、再設定は、二度とない。

 クローゼットに眠る、iPhone12 miniと、Intel搭載のMacBook Airが、いい例で。

 彼らを再使用するつもりは、何が起ころうとも、ゼロ。

 そもそも、初期設定のハードルが、タブレットの比ではない。

 スマホは、SIMカードという難関があるし、パソコンは、いくらMac同士でも、データの移行に、かなりの忍耐が要求される。

 OSを、無事に引き継げるだけで、万歳三唱もの。

 できるだけ、設定とリセットは、必要な時だけに、限りたい。

 ぴーぷす、ぴーぷす。

 ぽわ。ぽわ。

 と、いうわけで。

 カメラレオン、全六台のうち、現役は、三台。

 残りは、使っても、使わなくても。

 充電だけ、切らさないようにして、あとは、お好きに。

 ただし。

 買い足しは、もちろんのこと、リセット&再設定も厳禁。

 土台は、動かなくてこその、土台。

 常に、足元にあって、現役たちを、下支えする。

 重要です。

 そこが崩れたら、建物全体が、倒壊する。

 全く使用しなかろうが、電源が入らなくなろうが。

 土台たちは、炬燵から、降りない。

 増えもしないが、減りもしない、存在することが、肝心。

 …なかなか、大変なお役目。

 どうぞ、よろしく。

 カメラレオンの底の底、謎の深海生物、カイが棲む海底の、砂に埋もれてなお、お元気で。

 そうか…。

 新世代のiPadを買うことは、もう、ないんだな。

 なんとも寂しい限りですが、時というのは、必ずやうつろうもの。

 哀愁を胸に、いざ、現役たちと、勝負です。それでは、また。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?