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eスポーツに他業界の企業が当たり前に参入する時代、ビジネスセミナーのモデレーターをやってみて

こんばんは、謎部えむです。実は8月28日(金)に、「eSPORTS TRINITY」というビジネスセミナーにモデレーターとして登壇してきました。

eSPORTS TRINITYはeスポーツ業界に参入したい企業が、すでに参入して知見を蓄積している企業からノウハウを共有してもらえるセミナーです。

※モデレーターは簡単に言うと、会議や討論で参加者に話題や質問を振って議論を前に進めていく役割です。

こんな辺境の地で記事を書いているだけの何者かにお声がけいただけたのはたいへん光栄でした。担当の方によると、サッポロビールの福吉敬さんにお話をうかがって書いた記事が目に留まったようです。

セミナーでは最初におやつカンパニーのマーケティング本部長である髙口裕之さんと、中部テレコミュニケーションのeスポーツ事業を主管する末澤太浩さんによる講演があり、そのあと両名とモデレーターでパネルディスカッションが行なわれました。

せっかくなので、今回は僕目線でのeSPORTS TRINITYの振り返りをお届けします。両社がどんな取り組みをしているのか、それと僕がどんな準備をしたか、パネルディスカッションを終えての感想について。

なお、全体のレポートについては↓の記事をどうぞ。

eスポーツの中核企業がいないビジネスセミナー

まず、第3回となったeSPORTS TRINITY(の第一部であるセミナーパート)について紹介しましょう(司会は倉持由香さん、第二部ではAFTER 6 LEAGUEが開催)。

今回のeSPORTS TRINITYの大きな特徴であり、昨今のeスポーツ業界の動きを象徴する事柄として、eスポーツ業界で中核をなす業種の方がいなかったことは取り上げておきたいトピックです。

では、なぜそれが重要なのでしょうか。

eスポーツの世界は、根源的な価値を提供する側としてゲーム会社、チーム/選手、大会オーガナイザー/プロダクションという三大業種が中核をなしています。ここに第三者的な立場で関係各社の仲介を担う日本eスポーツ連合(JeSU)などの協会も加えておきましょう。

そこからすぐ近くにゲームプレイ用の機器を扱うメーカー、コンテンツやニュースを届け広告を配信するメディアやストリーマー/クリエイターが存在し、最近では大会運営ツールやコーチングサービスが登場しています。いずれもeスポーツに直接関係する周辺業種です。

※上記の業種を専門にするツールベンダーやコンサルタント、代理店もありつつ。

一方で、この2、3年でeスポーツ業界への参入が増えてきたのがこれまでゲームやeスポーツには直接関係してこなかった企業です。参入パターンとしては協賛や広告での活用と、新規事業の立ち上げもしくは既存事業との掛け合わせが多いと思います。

おやつカンパニーは食品メーカーですし、中部テレコミュニケーションは通信インフラ会社です(後者は周辺業種と言えるかもしれませんが、だとすると電気や水道なども入ってしまうので別ということで)。

こうしたeスポーツに直接関係していなかった企業だけによるビジネスセミナーが今回のeSPORTS TRINITYです。すべてのセミナーのケースを調べたわけではありませんが、けっこう珍しかったのではないでしょうか。それほどeスポーツがビジネスシーンにおいて注目を集めている証拠です。

※第1回はJeSUの大谷剛久さん、第2回はRAGEを主催するCyberZの大友真吾さんが登壇。業界・業種限定のセミナーも将来的にはありえそうです。

※ちなみに、今回のeSPORTS TRINITYを主催した凸版印刷、サイバー・コミュニケーションズも同様にeスポーツとは直接関係のなかった企業です。

しかも、おやつカンパニーと中部テレコミュニケーションではeスポーツの取り組みが対照的。おおかまに言うと、おやつカンパニーは自社商品のマーケティングの一環であり、中部テレコミュニケーションは新規事業(既存事業との掛け算)です。eスポーツ市場に参入する選択肢は大別すればこの2通りなので、その点からも両社は面白い組み合わせです。

そんな2社のキーパーソンに講演をしてもらえるということで、またオンライン開催だったのもあってか、とても多くの方に参加していただけたようです。

※こうしたセミナーに一般参加するときは、どんな企業のどんな方が登壇するのかをしっかり下調べしておくことが大切です。予め情報収集しておくと、セミナー当日の話をより深く理解でき、その内容を自分が持つ課題に結びつけやすくなります。

おやつカンパニーについて

ここからは2社の概要と取り組みを紹介します。

おやつカンパニーは改めて言うまでもなく、ベビースターという日本人なら誰もが知っているブランドを持つ食品メーカーです。売上規模は約207億円(2019年7月)。2017年にはマスコットキャラが3代目に引き継がれましたが、このことに驚きを覚えた方も多いのではないでしょうか。

同社では2014年頃から改革が進んでいました。投資ファンドのカーライルを迎え入れ、外資企業の目線から経営を刷新していったのです。上述のように2017年にはベビースターのリブランディングでマスコットキャラを更新し、2018年頃からは市場が停滞してきたスナック菓子としてだけでなく、料理の食材として利用するという新しい消費体験を創出。ブランドのポジショニングを変えて新しい市場に乗り出すという、お手本のような戦略ですね(僕もベビースターラーメンで炊き込みご飯を作ってみましたが、おいしかったです)。

こうした戦略を動かしていたのが2017年に同社に参画した髙口さんです。マーケティング本部長という、同社のマーケティングのすべてを統括する立場で活躍されています。

髙口さんの参画当初は、上記のインタビューによればマーケティングの機能がほとんどなく、「いい商品を作れば勝手に売れる」という日本の多くのメーカーが陥っていたのと同じ道に足を踏み入れていたとか。

そこから短期間で社内にマーケティングを浸透させ、その必要性を不動のものにした手腕たるや。髙口さんがいなければ、同社がeスポーツに手を出すのはなかなか難しかったかもしれません。いくつかのインタビューを読み進めるうち、僕もマーケティングに携わる1人として学ぶべき点が多々あると感じました。

同社は2018年からRAGE Shadowverse Pro Leagueに参戦している名古屋OJAのオフィシャルパートナーであり、2019年のPJS WINTER INVITATIONAL 2019への協賛を経て、2020年にはPUBG JAPAN SERIESのスポンサーにもなっています。

※飲料メーカーであるサッポロビールの場合と非常に似た取り組み方ですが、日用消費財(FMCG)メーカーが参入するパターンとして現状有望だと言えそうです。

肝心のeSPORTS TRINITYの講演では、自社と市場の分析からeスポーツに辿り着くまでの経緯が印象的でした。ポイントは「自社とブランドの成長にとってなぜeスポーツが有効なのか」という視点。機を逃すまいとついeスポーツに前のめりになってしまう企業が少なくない中、eスポーツに直接関係なかった企業が市場に参入するなら、僕もこれが最も重要だと思います。

主力製品のベビースターラーメンは、主要顧客が30~40代となっており、製品の「懐かしい」「子ども向き」「安価」というブランドイメージから脱却すべく、若年層との接点強化のために、eスポーツシーンの取り組みを強化していく

マイナビニュース「eスポーツで新しい顧客層にリーチ!? おやつカンパニーと中部テレコムの取り組み」より

髙口さんはeスポーツがメディアであると捉えており、これはマーケティングを行なううえで最も有力な見方の1つです。同社はチームと大会への協賛を継続しているので、今後もその動向に注目していきたいですね。

中部テレコミュニケーションについて

登壇したもう1社、中部テレコミュニケーションは中部地方でネット回線などを提供している通信インフラ会社です。KDDIグループに属しており、売上規模は約948億円(2020年3月)。eスポーツ事業の責任者が末澤さんです。

ところで、主催も含めて直近の売上規模を見てみると、凸版印刷は約1兆4860億円、サイバー・コミュニケーションズは約112億円と、とんでもない企業がそこかしこでeスポーツの話をしてしかもビジネスセミナーを開催しているわけで、マジでeスポーツってとんでもない状況になっていることを実感します。

そんな顔ぶれの中でモデレーターを務めるのはたいへん恐れ多かったんですが、担当の方から「かなり好評でした」といまのところは評価していただけたようで、ありがたい気持ちしかありません。

さて、中部テレコミュニケーションの下調べはちょっと難しかったというのが実際です。末澤さんのインタビューや講演の記録はなく、株式公開をしていないので決算資料もない。そのため、なかなかeスポーツに繋がる方針や戦略が見えてこなかったわけです。

ですが、早めに講演用の資料を見せていただけたので、そのおかげでいろいろとイメージを掴むことができました。同社がeスポーツに着目したきっかけは利用者の声だったそうです。

インターネット回線利用者の「夜間は遅延が発生してゲームがしにくい」という声から、低遅延で安定した回線品質提供を目標にスタートした

マイナビニュース「eスポーツで新しい顧客層にリーチ!? おやつカンパニーと中部テレコムの取り組み」より

現在はゲーマー向けの回線を開発中とのこと。既存事業をeスポーツと組み合わせる形ですね。また、新規事業としてeスポーツ施設「コミュファeSports Stadium NAGOYA」を運営。高校生のeスポーツ環境をサポートする「愛知県 高校eスポーツ部支援プロジェクト」と、選手を育成するプロジェクト「放課後eスポ部 CTG GAMING NAGOYA」にも取り組んでいます。

講演を聴いた限りですが、これらの取り組みは劇的な早さで進展していった印象を受けました。パネルディスカッションの際に同社の事業である「インフラ」という点をeスポーツ参入においても意識しているかどうかと末澤さんに尋ねましたが、そのとおりだとのこと。自社の業種と親和性を持たせるのはブランディングの観点から非常に効果的でしょう。

特に愛知県を中心にeスポーツシーンの下地を作っていきたいという志があり、こうした地域密着の考え方は(以前の記事で書きましたが)これからのeスポーツ市場でさらに活発化していくと思います。というのは、やはりプロシーンにしろ学生シーンにしろビジネスの視点が絡んでくると「応援」という要素が不可欠で、「同郷」は他者を応援しやすくなる最重要リソースだからです。

2026年のアジア競技大会が愛知県(名古屋市)で開催されるんですが、eスポーツに関する競技も採用の動きがあるそうです。同社はそこに向けて自社施設から世界チャンピオンを生み出すことが当面の目標ということで、実現を期待しています。

パネルディスカッションの感想

パネルディスカッションでは事前に用意していた2つのテーマ(質問)と、参加者からの質疑応答を予定していました。時間が30分しかなかったのでこの構成が限界と見て、僕から以下のテーマを提案しました。

1.eスポーツ市場に参入する際の担当者をどう決めるか
2.最初に参入するとき、効果測定や終了の判断をするにはどれくらいの期間を見ればいいか

1.eスポーツ市場に参入する際の担当者をどう決めるか

eスポーツ市場に参入する際、担当者をどう決めるかはかなり重要な課題です。なぜなら、生半可な関わり方をすると一瞬で炎上するのがeスポーツシーン。ゲームが好きではない担当者やゲーム/ゲーマーに対して愛のないプロジェクトはすぐに見抜かれ、相手にされません。各社においても、eスポーツを誰に任せるかは相当な悩みどころではないでしょうか。

おやつカンパニーの髙口さんはマーケティング本部長として担当者を任命する立場にあり、中部テレコミュニケーションの末澤さんは任命される立場にありました。会社だけでなく立場も対照的だったのは偶然ながら幸いでした。

髙口さんはたとえビジネスのセンスや知識が多少不足していたとしても、ゲーム/eスポーツを好きな人、詳しい人が担当すべきだという意見でした。同社ではたまたまマーケティングに携わっている方が該当したそうです。当然、好きなだけではダメなのでビジネス面に関しても技量は必要です。

末澤さんは約19年間ネットワークエンジニアとしてキャリアを積まれてきて、2019年に一転してeスポーツ事業に携わるようになりました。末澤さん自身からやるべきだと立候補されたとのこと。そして社内で希望者を募ると、数十名が挙手したとおっしゃっていました。末澤さんもやはり、ゲーム/eスポーツを好きな人がふさわしいという意見です。

会社で若年層が使用しているSNSでアカウントを運用すべきだとなったとき、社内の若い人に「若いから感性が合うだろう」という理由で任せてしまうケースがあります。全然そのSNSを使ったことがなかったとしてもです。これはまさに不幸の始まりでしょう。

もちろん、その人が開発担当などで自社商材の深い知識を持っており、SNSユーザーに対して率直に語って伝えられるのであれば適任になりえます。ただ、それは伝えたい事柄(自社商材)に愛があるという意味で、そこに「好き」の気持ちがあってこそです。

eスポーツにおいてもまったく同様ですね。好きでないと当該のeスポーツタイトルにおいてコミュニティの雰囲気や文脈を掴むのが難しいでしょう。そのうえで、ビジネスとして収益(など目的・目標の達成)を充足させなければなりません。

2.最初に参入するとき、効果測定や終了の判断をするにはどれくらいの期間を想定すればいいか

先述したように、おやつカンパニーでは2018年から名古屋OJAをサポートしていて、PJS WINTER INVITATIONAL 2019の協賛から2020年にはPUBG JAPAN SERIESへの協賛を決定しました。

また、中部テレコミュニケーションでは2026年という具体的な数字が掲げられていました。ここまで明言している企業はかなり少ないのではと思いますが、中長期で取り組んでいく見込みだということです。

ここには「継続」という素敵なキーワードが浮かび上がってきます。しかし、eスポーツ市場に何かしらの形で最初に参入する際、いきなり5年後を見て取り組みを始めるのは難しいと思われます。まずは短い期間で様子を見て、その結果次第で継続するかを決める場合がほとんどでしょう。

とすると、その「期間」はどれくらいを想定すればいいのか。参入を考えている企業にとって要検討の課題です。ただし、中核業種の企業やすでに参入している多くの企業で「1年かそこらで成果を得られる市場ではない」という認識が共有されています。言いかえると、eスポーツ市場は事業や広告に投資をすればすぐにその分の成果が返ってくるような刈り取りの場ではないということです。

髙口さんも末澤さんも、その企業において何を目的にし、どのようにeスポーツを活用するかを決めたうえで判断の期間を設定すべきだという考えでした。短期間で結果が出ないのであれば、かなり綿密に進退の判断基準を設ける必要があるでしょう。また逆に、シーンが盛り上がり続けているからといって、これまでの投資を惜しんでだらだらと成果が出るまでやってみようというのもダメなわけです(コンコルドの誤謬ですね)。

いずれにせよ、eスポーツシーンを活用するための適切な目的・目標を設定し、短期ではなく中長期で実現していく計画が必要です。

特に面白かった話題

先のレポート記事では書き手の原修一郎さんがパネルディスカッションについて、以下のように書いてくれています。

「達成指標として何を設定しているか?」という質問に対し、髙口氏の「指標は設定していない。現時点で盲目的にKPIを設定し、それを追い求めることはKPIとして成立しないし、定量的な数字よりも顧客の反応の質を重視している」という回答が強く印象に残りました。

マイナビニュース「eスポーツで新しい顧客層にリーチ!? おやつカンパニーと中部テレコムの取り組み」より

僕もまったく同意です(髙口さんにも原さんにも)。例えば、広告費に対する効果を測るROASなどの指標がありますが、とても大きいとはいえないeスポーツ市場において既存事業の指標や基準を当てはめてしまうと、順調に成長しているのに期待より望ましい結果が出ていないから手を引く、と判断してしまいかねません。

それに、大きな数字を求めるとどうしてもプレイヤー人口や視聴者人口の多いeスポーツタイトルばかりを選ぶことになってしまいます。それはそれでビジネス的な正しさがありますが、人口の少ないタイトルにおいても個々の熱心なプレイヤーや視聴者が有する熱は人口の多いタイトルと比して劣らないはず。そうした個々の熱を見逃してしまうのはもったいないですよね。

だからこそ、髙口さんは「顧客の反応の質を重視している」と答えてくださったのだと思います。実際、PUBG JAPAN SERIESへの協賛により、視聴や応援をする際にTwitterにベビースターの商品の写真を投稿する人たちが増えたそうです。

末澤さんもeスポーツ施設を運営し始めて、ユーザーと直接話す機会が増えたとのこと。顧客理解がマーケティングの基本ですから、そうした声がeスポーツ事業のみならず会社にとって役立つのは間違いありません。

と言いつつ、僕が一番面白く思ったのはこのことではなく、髙口さんにメーカーとしてeスポーツの普及にどれくらいコミットしたらいいのかという質問をしたときのことです。

髙口さんは一メーカーとしてできることは限られていても、eスポーツの認知拡大や市場成長は自社の利益に繋がるとおっしゃっていました。そして、店頭で見かけた同社の商品を通してeスポーツという言葉が目に入ることで、いくらかはそれに貢献できるのでは、と。

「店頭」は僕には非常に熱いキーワードです(この記事とか)。なぜなら、eスポーツに関する動向は多くの事象がオンラインで起きていて、オフライン、特に小売店でeスポーツという言葉に出会うことが非常に少ないからです。現状では家電量販店くらいでしょうか(ゲーム/eスポーツの言葉を用いたエナジー商品が多数登場していますが)。

店頭はテレビやネットに比肩する強力なメディアです。なぜメーカーが小売店の棚取りに死力を尽くすかというと、そこが商品を最も見てもらえる場所だから。なので、例えばスーパーマーケットやドラッグストア、あるいはドン・キホーテでeスポーツという言葉が当たり前に目に入るようになれば、eスポーツのビジネスシーンはさらに発展していくと想像できます。

※ECも同じくらい大事ですし、昨今の社会情勢もありますが、ネットはやはり「見に行く」という能動的な行動に占められているので「なんとなく目に入ってくる」場は欠かせません。ただまあ、オンラインとオフラインがシームレスに繋がっている状態が一番大事です。

そのためにはメーカーやリテーラーに動いてもらう必要があり、そこが難しいわけですが、おやつカンパニーのように積極的に考えてくれる企業があるのはありがたい限りです。

なので、大会や選手のファンがスポンサーの商品を店頭で買う、写真などをSNSに投稿するというムーブは非常に重要でしょう。それこそが「eスポーツシーンに協賛してよかった、続けよう」とスポンサーに思ってもらえるほとんど唯一の道筋であり、eスポーツ特化の新商品を開発してもらうための手段だからです。

パネルディスカッションの最後に出てきた話題だったのでまったく深堀りできずちょっとコメントしてそのまま終了してしまいましたが、諸々の反省もありつつ、30分を通してほかではあまり聞けない話をうかがえたかなと少なからず満足しています。

機会をいただけたことに感謝

以上、第3回 eSPORTS TRINITYの振り返りでした。こうしたビジネスセミナーのモデレターをするのは初めてだったので、マーケティングを仕事にしている身として貴重な機会をいただけたことに感謝しております。

この記事で講演とパネルディスカッションの内容への言及が少ないのは、当然ながら「こういう機会を見つけたら皆さんも積極的に参加してみてください」というメッセージです。今後もeSPORTS TRINITYを始めビジネス系のセミナーが開催されていくでしょうから、ぜひチェックしておいてください。

冒頭でも書いたように、eスポーツと直接関係がなかった企業の参入は市場の盛り上がりを見るうえで参考になります。しかも、余った予算でとりあえず手を出しておこう、計画は微妙だけど参入実績を作っておこうという形ではなく、eスポーツをしっかり自社の経営(マーケティング)戦略に組み込んでの参入なので、その動向を追うのは面白く、たくさんの学びがありますね。

eスポーツ業界の中核業種においては、ある程度「ああしたいならこうすべき」という方策や道筋、取るべき選択肢が明らかになりつつあります(実現可能かどうかはさておき)。他方、上述の指標の話のように、他業界からの参入はまだまだ未知の部分が多く、各社で試行錯誤が繰り返されているのが現状でしょう。

アパレルや食品などチーム側から他業界へ参入していくケースも増えており、いよいよごった煮状態に突入していくようにも思われます。ゲーム会社側が自社のユーザー情報に秘められた価値を最大限に活用し始めたいま、ゲームビジネスはゲーム本体やゲーム内アイテムのビジネスだけではなくなりました。

その嚆矢の1つにeスポーツやゲーム実況などがあるわけです。ゲーム/eスポーツに縁がなかった企業にもっと注目してもらえると、さらに世界が面白くなることでしょう。微力ながら、少しでもそのために貢献できればと思っております。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます! もしよかったらスキやフォローをよろしくお願いします。