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弟子屈町の総合計画には SDGs 169 ターゲットを地域ターゲットに置き換えた別冊まで付いてくる

 北海道「市町村における SDGs 推進モデル事業」で弟子屈町の担当として3回目(事業的には最後)の訪問……の予定だったのですが

広報てしかが2022年1月号4-5頁の左下が予定していた内容。なおプロフィール画像が少し前のもので現在は黒縁メガネにヒゲモジャ。

新型コロナウイルス感染急拡大の影響を受け、広報していた内容は延期となり、別枠で予定していた内容だけをオンラインで実施となりました。

↓前回の様子はこちら

弟子屈町 × SDGs × 下川町 = ?

 別枠で予定していた内容とは、地域おこし協力隊の方など地域づくりに積極的に関わっている人向けに、私の住む下川町の事例紹介と質疑応答を中心とした少人数の学習会をやってみようというものです。
 過去の訪問では SDGs の概要や大元になる考え方を伝えることで持ち時間一杯だったので、せっかく SDGs 未来都市の下川町に住む私が派遣されているなら下川町での経験をもっと還元したいと感じていました。
 そこで、メインの研修会とは別に下川町の事例紹介と対話の時間を少人数で設けられないだろうか……と弟子屈町役場と北海道庁の方に提案したところ、採用していただけたというわけです。
 こちらは完全オンラインでもできそうなので、延期せず「弟子屈町 SDGs ミーティング」として実施することに。最初に SDGs の全体像の話を軽くして、下川町の紹介は、前に小林製薬さんの社内研修で行った Google Earth のオンラインツアー方式でやってみました。

 1時間程度、話題提供した後でフリートーク。前置きとして私から

  • 小さなコミュニティだと「あの人があの時こう言った」と後を引くことを気にして発言しずらいこともあるかもしれません。

  • この場では「誰が」より「何を」言ったか、発言の中身に耳を傾けて、そして、いろいろな発言に影響を受けて過去の発言が変わることもお互い許容して、できれば変化を楽しむような場になればと思っています。

  • また、SDGs は誰も経験したことのない、正解のない問題へのチャレンジなので、発言に対して正解か不正解かジャッジすることはありません。頭に浮かんだ言葉を気兼ねなく出していただければ。

といったことを提案しました。発言が出なかったら……と少し心配してましたが、役場の方の進行に助けられて活発な質疑応答・対話の時間になり、やってよかったなぁと。
 私は下川町という小さな自治体の中で、行政職員・議会議員(第1セクター)も民間事業者(第2セクター)もNPO法人代表(第3セクター)も経験してきたので(こういう区分は古いのかもしれませんが)、個別具体的な経験談もできるし、社会構造を俯瞰して最小の力で最大の効果を生み出すようなアプローチを提案できるのが、私の経歴からくる特徴なのかなと思っています。

SDGs 169 ターゲットを地域ターゲットに置き換え

 最後に役場の担当者から SDGs を取り入れた第6次弟子屈町総合計画の案について紹介がありました。私が初めて訪問した時に提案した SDGs 169 ターゲットを事務事業のチェック項目として利用する方式が採用されているとは聞いていたのですが、

169 ターゲットそのままの言葉では国際的過ぎて地域の実情に合わないため「本町では」で始まる「言葉の置き換え」を行い、SDGs 対応表として別冊にまとめてあるではありませんか!

 まだ読み込んでいないので気が早いかもしれませんが、SDGs の地域ターゲット版へのチャレンジとして評価したいです。
 実は、道庁の方が弟子屈町での最初の会議の時に資料として提供してくれた「北海道 SDGs 未来都市計画」の中でも SDGs のゴールとターゲットとの関わりを示してあり、それが前例として後押しになっているんだと思います。

 それにしても、10月に弟子屈町で最初の打ち合わせがあってからたった4ヶ月足らずでここまで到達するなんてすごくないですか? 弟子屈町のポテンシャルはマグマ直結の深さなのか!?
 2月16日(水)までパブリックコメント募集しているとのことなので、弟子屈町民のみなさん、ぜひぜひ!

SDGs の推進に有効な「言葉の置き換え」

 今回オンラインで下川の経験値として紹介した内容と、弟子屈町の総合計画の取り組みが「言葉の置き換え」という点でリンクしたのが、他の地域や組織で SDGs を推進する時の参考になると思うので補足します。
 私が移住した1999年頃の下川町にはサンルダム問題があり、「環境」という言葉を出せば「ダム反対派」のレッテルを貼られる。そんな状況でした。
 そんな中、先輩移住者の方々は「環境」という言葉を「森」と置き換え、あくまでも下川町の歴史的な文脈に寄り添って、森林という環境を「保護」ではなく「保全」する森林ボランティアの活動を始めていました。

 その結果、他人事、いやそれどころか禁句として受け止められていた「環境」という言葉が、「森」という身近な言葉を経由して徐々に地域の自分事として染み入り、国のモデル地域として環境モデル都市、環境未来都市、SDGs 未来都市というステップを踏むことにつながったのだと思っています。
 今回、弟子屈町でも SDGs 169 ターゲットを地域の実情に合せ「言葉の置き換え」が行われました。
 どんなに素晴らしい言葉や考え方でも、外から入ってきた馴染みのないものには拒否反応が出るのは当然のことです。だからと言ってかつての日本のように鎖国して外部からの情報をシャットアウトしてやり過ごせるものではありません。
 そこで、役に立つのが「言葉の置き換え」という技術です。先見の明を持つ人たちが匙を投げず「どうやったら理解してもらえるだろう」「他人事から自分事へと置き換わるにはどんな言葉が必要だろう」と知恵を絞って伝える技術を磨いた結果が「言葉の置き換え」なんだと思います。
 弟子屈町の総合計画で起きた「言葉の置き換え」はまだ案の段階で、町職員・総合計画審議員などまだ一部の方々のみぞ知る出来事ですが、今後、直接的にも間接的にも町民のみなさんに浸透して、弟子屈町の有り余るポテンシャルを SDGs という世界の共通言語で発信する日が来ると期待しています。

SDGs というゲームのルール

 私は SDGs をゲームになぞらえ、ゲームにはルールが必要だという観点で、持続可能な開発のルール、Sustainable Development Rules、略して SDRs(エスディーアールズ)を研究していまして

この「言葉の置き換え」もルール、あるいはテクニック(技術)の一つとして位置付けられるのではと考えています。
 様々な地域や組織の事例から SDRs を抽出したいので「これは参考になるかも?」という情報がありましたらぜひお寄せください。


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