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重度の好酸球増多症の原因について

重度好酸球増多の鑑別の上位は血液・腫瘍疾患、薬剤性を意識したほうがよいようです。

A Retrospective Review of 193 Cases of Severe Eosinophilia in the Northeast United States
Am J Med. 2021 Jun;134(6):e374-e377. doi: 10.1016/j.amjmed.

過去の好酸球5000以上の原因をまとめた論文です。

【はじめに】

 好酸球増多は好酸球数500/ml以上と定義され、アレルギー疾患、感染症、炎症性疾患、悪性新生物など様々な原因により発生します。
 その値により重症度が適宜され、好酸球数500~1500を軽度、1500~5000を中等度、5000以上を重度と分類します。

 これまでの報告では、喘息やアレルギー性鼻炎では軽度の好酸球増加を、寄生虫や悪性腫瘍は典型的には重度の好酸球増多と関連しています。

 過去の報告は好酸球数のピークが5000以下であるため、より重度の好酸球増多症について報告したようです。対象は米国Beth Israel Deaconess Medical Center、University of Vermont Medical Centerの2施設で、2015年~2020年の間に発生した成人症例の重度(5000以上)の好酸球増多症です。

【結果】

解析対象者は193名でした。
平均年齢57歳、好酸球数の分布は5000~56360/μlで平均は9513/μLでした。

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◎疾患群別の上位は
1位 血液・腫瘍疾患76例(39%)、
2位 薬剤性 39例(19%)
3位 感染症 11例(5%)でした。

 血液・腫瘍疾患の中には血液腫瘍45例、固形腫瘍17例、HES14例を含みます。血液腫瘍の中ではCMLが最も多い原因で、固形腫瘍では肺がんが6例で最も多い原因でした。
 薬剤性の約半数が抗菌薬で、その他カルバマゼピン、オメプラゾール、アロプリノールなどでした。
 感染症の中で寄生虫感染例は5例で、4例は海外渡航歴があり、5例全員米国以外の出身者など罹患する要因がありました。

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【まとめ】
 重度の好酸球増多では血液・腫瘍性疾患、薬剤性の鑑別を忘れないようにする。寄生虫感染症は、海外渡航歴や出身国等を確認して検査を考慮する。

【個人的感想】 
では日本ではどうなの?ということになりますが、日本の例をまとめたものが2016年に発表されています。
 好酸球数2000以上と10000以上で原因別をまとめています。(下記Fig2)上記論文と比較して寄生虫感染と薬剤性の頻度が少ないように見えます。寄生虫は地域性もあり日本で見ることは極めて稀でしょう。

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(The severity of peripheral blood eosinophilia indicates an eosinophilia-associated disease corresponding to its level. PMID: 26666492より引用)


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