「The attempt by the 26 verbs.」(天坂さん)

天坂さんの短歌ネプリ「The attempt by the 26 verbs.」から、好きな2首を。

「感情の点検をした為、一部私に遅れが出ております」
(天坂)

あっこれ好きと思った。ショック?(良い知らせかもしれないし、そうでない知らせかもしれない)から立ち直るために時間を要しているという歌でしょうか。自分の一部が自分に追いつけなくなる苦しさを、さらっとした言い回しで緩和しようとしているふうにも思えて、おもしろいけれど悲しい。

原型をなくしてもいいひとなつを布団圧縮袋に詰める
(天坂)

圧縮袋って、自分で圧縮しておいてなんだけど哀しいほどペタンコになる。夢がなくなるみたいに見えてちょっと萎える。終わったひとなつ(の恋?恋ではない気もする)の記憶をしまう(わざわざ圧縮袋使って、丁寧に)(というふうに私は読みました)というのがおもしろいです。

このネプリ、ところどころが、ほんのり異世界っぽい感じがします。詠まれている世界そのものがそうというわけではないのでSFと言ってしまうと乱暴なのですが、「感情の点検」「星が掛かってる」「月の渚」「飛んでいく時間になった老人」「てのひらからあたえられる電気」など、表現(比喩とか)の上で、文字の上で、ほんの少し日常の言葉とは違う響きがあって、そこに強く惹かれたネプリでした。

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