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こんなことばかり

行きたかった喫茶店に行った。ドアを開けても誰もおらずどうしたものかと立っていたら、2階から店主が下りてきてぎょっとした顔をした。そこに座ってお待ちくださいと言われて隅っこの席に座って待った。そこで初めて、開店3分前であることに気がついた。出直しますと言うべきなのか、30分前なら出直すべきだが3分ならこの椅子で小さくなっていれば許されるのかもしれぬ、店主も3分くらいならぎりぎり許してやるかと思って追い出さなかったのかもしれないしそれはお店としてのご厚意であろうしご厚意を無にするのもどうなのか、忙しそうだし話しかけるのもかえって鬱陶しいのでは、いやお前がここに座っていることがすでに鬱陶しい、入り口には準備中とは書いていなかったけれど確かに営業中とも書いていなかった、もういっそテイクアウトにしようか、しかし開店前に押しかけてテイクアウトもわけが分からん、そもそも勝手に上がり込んでいる時点で十分わけの分からん客だなどなど思ううちに時間になり、「お好きなお席にどうぞ」と言われた。ゆっくりしていってくださいというスタンスのお店だったけれどいたたまれなくてそそくさと出てきてしまった。お会計のときになんとか謝ると「いえいえ大丈夫ですよ、電気もつけてましたしね」と言われた。優しい。でも自分に疲れてしまった。


最近川上未映子のエッセイを読んでいる。小説はあまり肌に合わなかったけれど、エッセイは好きだと思う。光の粒が散っているような眩しさ。


フードを目深に被り、一歩間違えたら強盗のような身なりの人が小型犬3匹を散歩させていた。犬たちはみんな服を着ていて、大粒の栗のような目をして、前足にだけ指サックのような履物を履いていた。なぜ前足だけなのだろう。なにか理由があるのだろうけれど。飼い主と私は向かう方向が同じらしく、しばらく4匹目の犬のようについて歩いた。


仕事はほとほと嫌になっているけれど、みんな嫌だ嫌だと思いながら働いているのだからこの世の不幸を全部背負ったみたいな気持ちになる必要はない。


おいしいと聞いたヨーグルトを買った。普段買っているヨーグルトの倍の値段。パッケージからしておいしそう。冷蔵庫を開けるたびに目に入る。ちょっと良いヨーグルトが入っている冷蔵庫。いいね。でもまだ食べていない。食べたくて買ったわけではなかったな。こんなことばかりしている気がする。


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