連作「海行き」

「海行き」

もう決めた私ひとりで海へ行く異議のあるひと はい、いませんね 

五時間もかかるんだって仕方ない七時にアラームをセットする

17駅目で乗り換えて40分待ってそれから赤い急行

いくつものいくつもの駅ああこれはひどくおだやかな走馬燈

今のたぶん無人駅だね目覚めたら忘れる夢に出てくるような

海は終点 海のにおいと海のおと漁船がしんとしている港

敷き詰めた光のような暗闇でくらげは淡く泳ぐのだった

生命が来たという海 海に手をひたせば水は私を拒む

帰ろうと言う人もなく帰ろうと思える場所もないまま夕陽

海に背を向けてそろりと歩き出す耳に潮騒閉じこめながら


(ナタカ 20170806)


ツイッターで行われた「CDTNK夏フェス2017」に出したものです。

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