#7days100tanka
2017年2月13日から19日まで、7days100tankaに挑戦しました。ルールがあるのかないのか分からなかったので、目についた単語で題詠をするのはNGというルールを勝手に作ってやりました。
なんとか終えられて良かったです。
01 定期券など捨てていけ水色のカードなんかでどこへ行けるの
002 片方の靴下だけが攫われて洗濯ばさみよく揺れている
003 断捨離のしゃりがだめだよ燃やされるときに聞こえる音に思えて
004 猫の鳴き真似が上手になりました友達は少しずつ減ってます
005 やわらかな雷がのどで鳴っている猫の頭蓋がひどくちいさい
006 4Bの鉛筆で書く文字ひとつひとつが全部樹海に見える
007 きみの出る夢なら全部前売りを買ったし二時間前から待ってる
008 両足の爪を乾かすときにだけ会いたい人が欲しいと思う
009 おゆわーまいおゆわーまいって言いながらあなたのすくっているお湯あまい
010 もう雪のせいってことにしておこう全然返事がないことだって
011 洗濯が乾かないこと知っていてそれでも触れて確かめてみる
012 試験管みたいな日々を割りたくてずっと内側から叩いてる
013 使えると思って握っていた鍵がどこの鍵穴にも入らない
014 幸せでなくても叩いているうちに幸せになれそうだね(拍手)
015 思い出の一番好きなところだけ折り目をつけて繰り返し読む
016 256回も聴いた曲なのに1番のサビしか歌えない
017 春の夜みたいにぬるい血液が私をずっと巡り続ける
018 かるがると私を越えて伸びている飛行機雲のやわらかな白
019 灰色がどこにもないねピアノにも横断歩道にもあなたにも
020 珍しい羽を見つけたのにきみに見せると鳩って分かってしまう
021 自動ドアばかり見てきたせいで今引き戸の開け方が分からない
022 これは塾あれは学校この町のいたるところに回想がある
023 連続でチョキで勝ちたい六歩ずつチ・ヨ・コ・レ・イ・トで駆け寄っていく
024 またダイヤ改正がある乗客が一分ずつ早く起きる春だ
025 人並みの意味も分からず人波に飲まれてエスカレーターに乗る
026 タイトルが思い出せないけどこれは椎名林檎がナース服でさ
027 君たちが倒したマイクはスタッフがあとで残らず立てておきます
028 真人間ばかりの春に混じるため一番地味なネクタイをする
029 前髪を切れば視界は良好でヨドバシカメラくらい明るい
030 ブランコが上手になっていつまでもひとり揺られている夕暮れ
031 深々とフードを被るこの影を誰とも分かち合うことがない
032 少しずつ無口になって最後にはさよならを言ってしまうのだろう
033 ものすごく元気にしてるイブプロフェン飲めばだいたいのことはできる
034 まっとうなふりをしたってどうしても虚ろなうつわの音が聞こえる
035 こんぺいとうたくさん食べる見逃した流星のことなど思いつつ
036 イヤホンの絡まりをそのままにしてもうすぐぬるい風にも慣れる
037 どうにでもなればいいのに安全に行って帰ってきたいと思う
038 名前というものも知らずに順番に器に割られゆく無精卵
039 ちゃんと痛いことを確かめるためにひっそりと触れてみる青あざ
040 凹凸のない日常をゆるゆると毛のない生き物のように撫でる
041 大股で駆け抜けていく人からの風がわずかに私に残る
042 次々と閉ざされていくガラス戸のどれかひとつに入れてください
043 アルファベットチョコレート文字を見ないまま食べて穏やかな日々である
044 鏡面のようにサランラップ貼る人に言えないことくらいある
045 帰る場所ないならここにおいでって言ってくれたこと覚えてる
046 一筋のひかりとなって終電が高架の上を流れて消える
047 靴底がきれいに減ってこの人は好き嫌いなどしないのだろう
048 あの頃の私は死んでもう二度とセーラームーンに変身しない
049 あたたかいところから来たはちみつが日なたのことを思い出させる
050 飴の包み紙を解(ほど)くそのたびに知りたがり屋のような気持ちだ
051 受け取った集合写真の右下の自分の顔と目を合わせない
052 街中の灯りが消える瞬間に月の光の明るさを知る
053 なぜだろうなぜだろうなぜメトロノーム僕のものだけ狂うのだろう
054 りんごたち、よく聞いてくれきみたちに白いやらかいやつかぶせます
055 体温をゆるめるためにマフラーをほどいて冬の風を取り込む
056 レシートをしおりにすればレシートが私のことをまだ覚えてる
057 救急車帰り着くことできないでいつまでも耳の中から出ない
058 とぎ汁の白い濁りに手を浸けて取り返せないいくつかのこと
059 水際で生きる喜びなどなくて緋鯉の吐いた泡を見ている
060 雨に映る薄い景色を踏んで行くそちらは息がしやすいですか
061 村人に生まれて生きて死んでいく湿気った海苔に救われながら
062 湖につながることが唯一の希望のような霧雨の道
063 大切な人から順に消えていく荒野にひとり海を探して
064 ちくわぶのあるコンビニはこの道をどこまで行けば良いのでしょうか
065 タンポポも梅も恐ろしく思えて春の小道を小走りで行く
066 おとといの雨の匂いがベランダに残っているうちに謝ろう
067 完結と言ってたくせに続編があって全員幸せになれ
068 一瞬も少年であったことのない体で受け止めている雷鳴
069 約束に生かされていてとりあえず明日目覚めるために眠ろう
070 くらやみに身をゆだねます海底の鯨骨の如く今夜は寝ます
071 あたらしい靴の硬さがあたらしい季節のようで春の爪先
072 冬のほころびを破って咲く花にためらうように風の吹くこと
073 イチョウの葉を本に挟んでいる人がいつまでも秋のただなかにいる
074 ディストピア小説の中で僕だけが昔のギャグに笑い続ける
075 大声を出さないでくれあなたには見えない青い鳥が泣くから
076 完全に乾いたウェットティッシュを弔うように四つに畳む
077 ゆっくりと輪ゴムを伸ばす充分な量の光を取り込ませつつ
078 やな奴になりきれなくて一度だけ振り向けば舞っているさくらばな
079 特別に誇れるものは特になく好きな動物は猫とcat
080 割れ千鳥サブレおまえの悲しみも喜びも全部おまえのものだ
081 眠ること眠らないこと何もかも正しいと言ってくれよミッフィー
082 僕だけが一周遅れで走ってることを言えないままできさらぎ
083 駅前で明るい歌を歌う人だけが入れるらしい居酒屋
084 LINEでも句点を省かない人が扉を開けて待っててくれる
085 七の段以降が難しいけれど今日はおいしいパンを見つけた
086 缶詰のように詰まった感情が新品の缶切りで開かない
087 生も死も同じ紙面におさまつてがさりと焼き芋を包みをり
088 いつまでも追い風よ吹けきみはもうこんなところにいてはいけない
089 これからのことを思えばあてどなくさまように生きていくしか
090 ラスベガスのことをベガスと言ってからずっとおまえのことが嫌いだ
091 電卓を打つのが早くなりました人間のことはまだ苦手です
092 暗闇をひとくち食べて僕はまたBBQと無縁に生きる
093 自転車に乗れた頃にはもうみんなキックボードで遠ざかってた
094 ネガティブの極み乙女ですどうぞ「私でさえ私じゃないの」
095 デコポンをずんと立たせて生きるすべなんていくらでもありそうだ
096 獣肉パーティーのこと覚えてる?獰猛になることは簡単
097 きみがまだ歌を歌っていることが灯火として私を照らす
098 音という音の全てをういろうの白に吸われて夜の静けさ
099 霧吹きの水こまやかに吹き出して虹は偶然できるから良い
100 百の眼も百の言葉もないままに次の季節を歌おうとする
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