インターネット歌会サイト「うたの日」に300首投稿したということで、過去に出した歌を読み返すと懐かしかったので、いくつか並べてみます。
上手く作れた自選というより、思い入れがあったりお題が印象的だったり、そんな理由であげた歌も多く、なんというのか、おもひでぽろぽろです。


白和えの甘みとやさしさ足りなくて苦いばかりの春の野にいる
（2015年4月16日『白』）※初参加

駅前のスーパーの明かり消えていてすまないパパは今日も遅刻だ
（2015年4月28日『スーパー』）

ただボタンひとつ外したそれだけできみはそんなに女になって
（2015年5月26日『ボタン』）

くるんとした尻尾がお気に召した子は わをねにしたり、めをぬにしたり
（2015年5月29日『ひらがな』）

ささやかな怒りで折れる鉛筆の柔らかきこと温かきこと
（2015年6月11日『鉛筆』）

ねぇルンバ、それは涙よ絨毯に染みているから吸えはしないの
（2015年6月17日『ロボット』）

一切の躊躇いのないおはようとおやすみを言う日々をください
（2015年6月21日『短歌でプロポーズ』）

標準を目指してばかりいたころの飛べない小鳥だった僕たち
（2015年7月6日『標』）

その丸い膝をひとつの星として産毛よみんな幸せになれ
（2015年7月14日『膝』）

お客さま起きてください終点です 晴れた夜ですまだこの世です
（2015年7月21日『です』）

ふわふわの髪に光を含ませて外ばかり見て怒ったままだ
（2015年7月26日『ふわふわ』）

イルカって賢いねって人間が言いたそうだし輪くぐりをする
（2015年7月27日『動物園』）
※お題間違えた回。『水族館』に出したつもりだった。

平気って言うたびに海は広がって抱えきれずにこぼしてしまう
（2015年8月20日『抱』）

好きなのを選びなさいと言いながら母の定めし正解がある
（2015年9月11日『自由』）

迷子って言わないけれどこの道はさっきからもう三度来ている
（2015年9月29日『迷子』）

皆どこか痛めたままで待合のワイドショーを見ている真昼
（2015年11月25日『病院』）

僕だけが時計を外して会っていて君は十時の電車で帰る
（2015年12月5日『時計』）

7の背をちょっと反らして書いてみるこれがあなたの書いている7
（2015年12月うたの人『数』）

コタツには守られてばかりいるのだしせめてきれいな布団を着せる
（2016年1月9日『コタツ』）

五丁目のポストに手首まで入れて腕ごと食われてしまった話
（2016年1月13日『ポスト』）

黒鍵の上を歩いているみたい私はいつも半音高い
（2016年1月16日『黒』）

自分では見たことのない暗闇を会ったばかりの耳鼻科医が照らす
（2016年1月18日『耳』）

扇風機最強にして悪かったテストを全部ばばばばばばば
（2016年1月31日『最』）

ここでなら楽になれるか柔らかな場所を探して金魚を埋める
（2016年1月うたの人『楽』）

悲しみの数のマシュマロを浮かべてココアが見えなくなったココアだ
（2016年2月5日『ココア』）

見えすぎることが恐ろしく思えて眼鏡をしまったままにしている
（2016年2月10日『眼鏡』）

図書館の傘立ての中で二番目につまらないのが僕の傘です
（2016年2月23日『傘』）

標識を守ってきたし標識に守られてきたはずが迷子だ
（2016年3月5日『標識』）

ゆっくりと雨満ちていく部屋にいるたった二匹の魚となって
（2016年4月7日『雨』）

微笑んで生きるためにはあと少しアイスの当たり棒が足りない
（2016年4月10日『自由詠』）

同時には覗けないのにきみの目の高さにかがむことの幸せ
（2016年4月14日『望遠鏡』）

リクルートスーツを脱ぐまで泣けません呪いと鎧は少し似ている
（2016年5月5日『鎧』）

夜更かしをしたせいで夢で会ったときあまりたくさん話せなかった
（2016年5月14日『夢』）

少しずつ物を減らしていく部屋で一番捨ててしまいたい私
（2016年6月4日『捨』）

禁煙をできない人が風上に私を置いて吸うメンソール
（2016年6月20日『禁』）

座席にはぽつんと痛みを座らせて市民病院行きのバスです
（2016年6月29日『院』）

どこへでも行けると思った十年を机の奥にしまったままだ
（2016年7月17日『パスポート』）

リップクリームなんていつの間に買って返事もしないようになったの
（2016年7月30日『句跨がり』）

さみしさが三連パックで売っていて冷蔵庫でよく冷やして食べる
（2016年8月8日『寂』）

300首投稿したということは、300首読んでいただけたということです。ネットをメインに短歌を作っている身としては、誰かに歌を読んでもらえる場はとても貴重だなと感じています。
うたの日管理人・ののさん、参加者の皆さん、いつもありがとうございます。