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ねこに学んだこと

午前4時、けさのできごと

うちには、ねこが3びきいます。
彼らは室内で暮らしていますが、うち1ぴきは家の外も大好きで、隙あらば脱走を企てるようなヤツです。

基本的には室内で過ごしてほしいと思うのですが、彼はしばしば「お外に出してくれ〜、出してくれ〜」と猛烈に主張するので、そんな時はリードを着けておさんぽに行くことにしています。

今朝。
わたしはいつもよりだいぶ早く朝4時過ぎに起きました。
すると先述のお外出たがりねこ(たーちゃんと言います)も起きてきて、おもむろに玄関に進み、ドアの取っ手を見上げています。
これは「オレ、お外いくっす」のサインなので、リードを着けて散歩に行くことにしました。

いつもは家の周りを一周するくらいなのですが、今日は途中から変わった道を行き出し、あれよあれよと今まで行ったことのない方へ、彼は歩いて行きました。

そこは早朝こそ車通りは少ないけれど、日中はわりと往来のある道路だったので「こんな道を覚えちゃって、もし脱走した時にひとりでこんなところ来ちゃったら轢かれちゃうよ」と、すごくイヤな気分でした。
けれども彼は元気そうにいきいきとして、はじめての知らない道をどんどん進んでいきます。

もう帰りたい…と思うけれど、彼の歩みは家から離れていくばかり。「行動範囲が広がってしまって、脱走してひとりでこんなところまで来てしまうようになったら、帰れなくなっちゃうよ」と、そればかりが心配でした。

「これ以上は行かないよ」と引き戻しても家から遠い道を行くたーちゃん。
そのうち引き戻すのもかわいそうになって、観念して彼に従うことにしました。

生まれてはじめての道

自由になった彼が向かったのは野球場。
夜露に濡れた下草を、ピンクの肉球で踏みしめながら進みます。
はじめての体験に、最初こそちょっと声を上げて違和感をあらわしていましたが、勇ましくまっすぐに歩を進めていきました。

それを見ながら、さっきまで帰りたくてすごくいやな気持ちだったのに、なんだかわたしまでいきいきとしてきました。
白みはじめた空、早朝5時近く、なんでこんなところにいるんだと笑ってしまいながら、それでもなんだかおもしろくなってきたのです。

人間の足なら5分とかからない場所ですが、彼にとっては12年生きてきて初めて来た場所で、その人生(ねこ生)初めての瞬間に立ち会っていることに神聖ささえ感じていました。
わたしはいつでもすきなところへ行けるけれど、ねこである彼には制限がある。
しかし今だけはその制限なく、せっかく生まれてきたんだもの、すきなところへ行かせてあげたいと思ったのです。

そんなことを考えていたら、彼の足どりは、だんだんと家に帰る方向に進んでいきました。
わたしが「こんな遠くに来ちゃだめだよ、早く帰ろうよ」と泣きそうになっていた時の彼は、その意に反してどんどん遠くへ歩いていったのに、
「こういうのもいいもんだな」と感じ始めた途端、家への道を向かい始めたのです。

結局彼は、わたしの心配をよそに、生まれてはじめての家から遠く離れた道を行ったにもかかわらず、こともなげに家にたどり着きました。ちゃんと帰る道をわかっていたのです。わたしはとても驚きました。
人間より目線も低く、身体も小さく、地図もスマホもないのに帰る道を知っていたのです。

持って生まれたGPS

嗅覚もあるのかもしれないですが、わたしは彼にはGPSがあるのだと思いました。
別に埋め込んであるとかじゃないですよ笑
機械ではなく、彼が持って生まれた天然のGPSです。GPSのような能力が発動していたからこんなことができたのだと思いました。
そして、彼の力を信じずに、心配や恐れから彼を制限しようとしていたことを申し訳なく思いました。

自分にも、そんな力があるんじゃないかと思います。
心配せずとも自分の声に耳を澄ませば、かならず行きたいところにいける。

早朝の、まだ暗くてしんと静まり返った雰囲気も手伝って、このいつもよりだいぶ遠い散歩は、わたしにとっては何だかキツネにつままれたような(いや、ねこなんだけど)、不思議な感触が残りました。
なんで今日に限って突然知らない道を彼が行き出したのかはよくわかりませんが、とてもおもしろい出来事でした。


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