ワクチン接種反対電話の法的問題

ワクチン接種反対電話の法的問題について。

ワクチン接種反対電話の法的問題の整理

①脅迫があった場合⇒威力業務妨害罪で間違いない。
②接種事業に反対の電話だけ⇒強要にわたらず、長時間拘束したとかでなければ不法でも犯罪でも無い可能性
③接種事業に反対の電話をし、電話番号をネットに掲載して同様の行為を呼びかける行為⇒???(偽計業務妨害罪や悪戯による業務妨害罪)

の中に犯罪として捕捉すべき類型があるのではないか?というのが論点。

組織的な妨害だ、と言う人もいるけど、個々の妨害者に意思連絡なんて無いケースが多く、いわゆる『犬笛的な投稿』による自治体に対する接種反対電話ファンネルをどうするか、という問題ではないでしょうか?

類似のケースとしては「弁護士に対する不当な懲戒請求が大量発生した事案」があります。

弁護士への大量不当懲戒請求事件

これは「大量懲戒請求」の問題とも言えますが、行為者に着目すると、個々の請求者はお互いが懲戒請求をしているということは知りませんから、「共同して行っていること」が法的に悪評価を受けた事案ではありません。

あくまで個々の個人の懲戒請求によって不利益を被ったことが問題視されました。結果、10万円~30万円程度の幅で損害賠償が認められています。

犬笛的投稿とワクチン接種の反対電話ファンネル

さて、ワクチン接種反対の犬笛的投稿と電話ファンネルはどうか。

脅迫文言が無い場合、電話内容それ自体は単なる「ご意見」の形式をとっているため、妨害の故意があるにしても単にそれだけで刑事上の罪に問うのは難しいでしょうし、民事の不法行為にもならないでしょう。

大量懲戒請求事案は、1回の請求自体が不法であるとされた点で違います。

しかし、本件は以下の事情があります。

①接種は任意
 ⇒反対は接種希望者の権利を阻害する性質
②反対の電話をしたのはすべて自治体住民ではない
 ⇒反対を述べる資格が本来的に無い
③集団接種が無くなり個別接種に切り替わる・回線がパンクして電話対応業務を中止した例も

自治体が接種予約事務の回線と通常回線を分けていて、予約事務の方の電話番号に掛けていた、というなら妨害行為の認定はしやすいと思うが、分けていない場合に意見の形でなされた行為を罰するというのはハードルは上がるでしょう。

他方で、わざわざ予約の方の電話にかけていたのなら、①②と相まって偽計或いは悪戯などによる業務妨害になる可能性は高いのではないでしょうか?

また、業務妨害罪は抽象的危険犯と解されていますが、12歳~15歳へのワクチン接種に反対をする意見を電話で行う行為が一般に法益侵害のおそれがあるとされるかというと、疑問です。

ただ、それに加えてSNS等で電話番号を掲載して反対の電話を呼びかけていた場合(自身が電話をしていなくても?)には、妨害結果が発生する抽象的危険があると言えるかもしれません(ちょっと厳しいと思われるが)。

現実には自治体によっては集団接種が無くなり個別接種に切り替わったり回線パンクして電話対応業務を中止した所もあるので、具体的な結果が発生していますから、あとは因果関係の有無とその立証の問題のような気がします。

自治体の電話番号と自身の電凸音声を添付したツイートをしているアカウントがありますが、そのツイートはかなり拡散されている上にそれを見た者を電凸に駆り立てる力が強いと言えますし、その者は累次に渡り電話をするよう呼び掛けていますから、この場合には因果関係を認めてよいと思うのだが、どうでしょうか。

なお、正当行為にはなり得ません。明らかに誤った認識に基づいたワクチン接種反対論を展開しているので。大量懲戒請求も明らかに誤った認識に基づいていたため、義憤に駆られたなどの事情は正当化の根拠にはなりませんでした。

捜査機関の判断次第。立法による解決が必要?

結局は刑法の謙抑性の観点を加味した捜査機関の判断と裁判所次第ですが、SNSで電凸を煽れば簡単に妨害できてしまうのに処罰対象にできないというのはおかしいのではないかと思います。

もしも軽犯罪法違反にすら問えないのであれば、立法による解決が必要でしょう。

以上:ハート形をチェック・サポート・フォローして頂けると嬉しいです。

サポート頂いた分は主に資料収集に使用致します。