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小説:まかない料理

冷蔵庫を開ける。ひんやりとした空気がブワッと出てきて顔に吹き付けてくる。冷たいなぁって思いながら、冷蔵庫の中をぐるっと一周見て回って閉めた。ガチャンと音がする。

冷凍庫を開ける。さっきよりもより強力な冷気が流れてくるのを肌で感じながら中を一周見る。凍ったチーズと保冷剤、製氷器に溜まった氷を眺めて勢いよく閉めた。

野菜室を開ける。キャベツが半玉ときゅうりが2本、人参が1本あるのを確認し、そっと閉めた。

これだけ見て回ったのに、野菜ぐらいしか目ぼしいものが見つからないなんて、どうかしてる。今週は贅沢に色々食べたな?と振り返ってみたりして、昨日一昨日のメニューを思い浮かべる。確かに、カレーやら鍋やら食べたな。心当たりはある。こうなったら食材を買いに行けばいいだけの話だけれど、出かけるのも億劫だし、どうにか今あるものでまかないたいのが本心だった。外は寒い。

乾物などをしまっている棚を覗くとパスタがあったので、今日はキャベツのペペロンチーノにすることにした。鷹の爪も残り少ないラストの欠片が袋の中でカラカラ鳴る。手早くキャベツを切り終えるとパスタを茹でる用のお湯を沸かしつつキャベツに味付けする。鷹の爪は輪切りにし、ニンニクは潰しておく。お湯が沸いたらパスタを茹でて、茹で終わって湯切りを終えたらフライパンに移してキャベツと炒めて和えていく時に、さっき潰したニンニクと鷹の爪も忘れずに振りかけるのがポイント。味付けに胡椒と醤油も少しずつ足して、オリーブオイルを垂らすといい匂いが漂う。ジューっと音を立ててキャベツがしんなりしてきたら完成だ。お皿にさっと盛り付ける。フォークを並べて静かに座る

「いただきます」

一口入れた瞬間、思わず溢れる「美味しい」に全てが詰まっている気がした。

究極に外へ出かけたくない時に、今ある食材だけでどうにかしようと考える臨機応変さって学校じゃ教えてくれないけれど、こうして暮らしていくうちに身についていくものなんだと改めて考えたりして、我ながら親元を離れての暮らしにも大分板がついたなぁと思う。

自分で自分の腹を膨らませられる能力がついたのだと少し自信がついた。


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