夏川紫衣

シェヘラザードに憧れる人🔹エッセイや短編小説を書きます🔹見ていただけたら嬉しいです

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  • To live is to think

    生きるためにことばを。個人的に読み進めた本の中から、あなたのこころへお届けします。

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面白かった本 2023

早いもので1年が終わってしまい、気がつけば2024年も残り10ヶ月となろうとしていますがいかがお過ごしでしょうか。 毎年面白かった本を掲載しておりましたが、今年はすっかりバタバタして掲載できておりませんでした。ごめんなさい。 今更にはなりますが、以下面白かった本をご紹介します。 昨年の記事はこちらになります それでは、2023年版を紹介していきたいと思います! 1冊目はこちら 今まで生きてきた中で幾度となく誰かに「面白いから読みな」と言われ、人に言われると読まされている

    • 【小説】 のがれ

      「謝りなさいよ!」 すごい剣幕で怒鳴りつけてきたかと思えば、上から手が出る。「ごめんなさい」が小さいと、また怒鳴り声が上から降ってくる。所狭しに罵られた言葉を頭の上から浴びながら、ひたすら耐える。正直、耐えるのは慣れっこだ。相手の気が済むまで、こちらが待てば収まってくれるはずなのだ。 相手が飽きるまで終わらないから、ただ殴られる。暴言をめいいっぱい浴びる。心に刺さる言葉を機関銃のように打ち込んで勝ち誇ったように罵る。こちらが涙を堪えている姿がさぞお気に召したみたいで、そうする

      • 【小説】 ながれ

        忙しない日々を過ごしていると、帰りの電車で眺める媒体が限られてくる。 ツイッターだのINSTAGRAMだのTIKTOKだの。 どこもキラキラしていて素敵。だなんて目移りしても、なんだかんだツイッターに戻ってきてしまう自分がいる。あ、もうツイッターって言わないのか。Xか。 分かってはいるのについ、ツイッターという言葉を使ってしまう。きっと、ガラケーを使うお年寄りと変わらない理由で。馴染みから離れられないのだ。 「陰であなたの悪口言うような奴は放っておいていいんだよ。実際、その人

        • 【小説】 ほつれ

          時折、何もかも手放したくなる夜がある。 ふっと空を舞うように落ちたくなる気持ちがやってくると、どこにも行けないまま落ちていく。 世界からログアウトしたい。 ここじゃない世界に行きたい。 でも、それは叶わない。 いや、叶えようとしていないからか。 世界からログアウトしたいって、どこの世界からだろう。 学校という世界以外に「塾」やら「親戚」やらあったはずの居場所さえ、大人になると「趣味」がないとなくなっていく。 誰かとの共通点を持っていいはずなのに、それにすら怯えてる。 人と関わ

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        面白かった本 2023

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        • To live is to think
          1本
          ¥150

        記事

          【小説】 Alarm

          「じゃあ朝4時に起きて8時に俺を起こしてよ」 そう言って彼は眠った。冗談だろうなと思って聞き流しているものの、よくそんなことを平気で言えるな?と時間が経ってから思うことが多々ある。 正直な話、私はそこまで頭が良くない。 だからその場で言い返せないし、周りから言われたらそのまんま間に受けて行動したりする。もう少し考えればわかるじゃんって言われることもあったし、考えろよって言われたことも一度や二度じゃない。 わかってるよ、そのくらい。 考えてるよ、言われた通りに。 でも、周りから

          【小説】 Alarm

          【小説】 制服

          「これ、どうするん?」 そう言って手渡された制服は新品のように綺麗だった。 久しぶりに実家に帰省した時のこと。 「あんた、ゆっくりするのもいいけど残ってる荷物をちょーっとばかし片付けて欲しいんだよね」 軽く伝えられた言葉を聞きながら、うんうんと答えて2階へ上がることにした。かつて私の部屋だった空間に今では妹のものが上書きされて置かれている。目につくモノのほとんどは散乱し、空間全体が妹の私物と化しているが、押し入れの隅だけは私の残したものがあった。「こじんまり」とは表現できず

          【小説】 制服

          【エッセイ】 コーヒー

          朝になると決まってコーヒーを淹れる。 ドリッパーに引いたコーヒー粉末を入れて、ケトルのお湯が沸くのを待つ間、洗濯機に入っている洗濯物を外に出してかごに入れる。カチッと音が鳴ってお湯が沸いた合図を聞いたら、そっと注ぎ口から細く注ぐ。そうして、じわじわとあたり一面にいい香りが充満するこの瞬間が堪らなく好きだ。その香りを吸い込むだけで、目が醒める。 今日も1日が始まったと思う香りはきっと、コーヒーの香り。 街中を歩いても、どこかしらから香ってくるコーヒーを一瞬でも感じたら振り返らず

          【エッセイ】 コーヒー

          【小説】 春

          室内の観葉植物の鉢を植え替えて今日で2日が経った。 日当たりのいい南側のベランダ寄りに置いたおかげもあってか、あっという間にモンテスラは茎を伸ばした。成長は早い。 葉水をかけてあげると、太陽光を浴びてキラっと反射する。また帰宅したら少し伸びてそうだなと思いつつ、腰を上げて窓の外を見る。 太陽は春ですよって穏やかな顔をしながら風はびゅうびゅう吹きつけて窓を揺らした。すごい勢いで砂埃が窓ガラスに吹き付けられているのを目の当たりにしてしまったらもう、正直出かけたくないなと思ってしま

          【小説】 春

          【エッセイ】 整理

          これはあっちの箱、これはこっちの箱。 そうして自分にとって必要なものを仕分けて行ったら、ある程度残ったものが見えてくる。 これが私に必要な量だったんだと思い知った時、改めて自分がいかにカロリーを抱えていたのかを思い知る。 ものの整理は時間がかかるとはいえ、一度手につけると最後まで終わらせやすいのが良いところではある。こうして重い腰をあげてやり始めた整理も、一区切りつきそうなところまでやってきた。 「ねえ、これはどうするの?」 ふと聞いてきた問いに対して私は答える。 「あーこれ

          【エッセイ】 整理

          【小説】 image

          世界には七不思議と呼ばれる類のことが数多く存在する。 大きな墓や迷宮のような宮殿、オーパーツと呼ばれる類の物体などなど、分野は様々だ。 その不思議は不思議を呼び、誰かが加筆したり脚色をつけていく。 色が足されたかと思えば、情景が足されたり。感情が足されたかと思えば、理性が引かれたり。そうして生まれた物語たちがひとりでに歩いていく先に、現代があった。 これは、生まれた概念たちが主人公のお話である。 「ねえねえ、またお婆さんになっちゃった」 「あらーそう。まあ何かと便利なのよね

          【小説】 image

          【小説】 ご自由に

          「東京の最高気温はこの時期としては暖かい23度となりました」 「暖かいですね〜もうすっかり春ですね」 そんな会話を耳にしながら、朝食のパンを食べる。 いつの間にか雪が降った日は過ぎ去り、梅があちらこちらで咲いている。 そろそろ春になるならコートもクリーニングに出さないとなーなんてぼんやり考えながら、皿を洗う。さっき淹れたコーヒーが冷めかけていたので慌てて飲み干すと、カバンに必要な書類やPCを入れた。もうそろそろ出かける時間が近い。 鏡の前で最後にメイクをチェックしたら、時計を

          【小説】 ご自由に

          【エッセイ】 空模様

          「それって意味あるの?」 不意に聞かれた問いに対して、私は言葉を詰まらせる。 「え、意味なんて考えてないよ」 だって本当に考えてないから。 意味があるから、やっているなんてそんな、そんなこと考えたこともなかった。みんな意味を考えて行動するものなのだろうか。知らなかった。 「ハルちゃんがいいならいいけどさ、なんか、意味ないなら辞めちゃいなよ」 そう言うと、フユはどこかへ行ってしまった。 私はというと、ただポツンと取り残されて、まるで漫画の一ページかのように私以外何もなかった。意

          【エッセイ】 空模様

          【小説】 雪

          「2月になると風邪を引く」 というのが、いつの間にか私の慣習となり始めていた。 ゴホゴホと席をしながら熱が出て動けない身体を無理矢理にでも引っ張って携帯を見る。時刻は午後6時だった。 日もだいぶ伸びたなと思っていたらいつの間にか暗くなっていた外。 時間は確かに進んでいるのに、寝ても寝ても進みが遅い気がする。 ゆっくりと上体を起こすと、脳も起き始めたのか喉の痛みを自覚した。ポカリをそっと口に含んで流し込むと落ち着く身体は満身創痍のようだ。 風邪になると、気持ちが心細くなっていか

          【小説】 雪

          【小説】 冬

          「久しぶりに飲みに行こうよ」 そう誘われて仕事終わりに旧友に会いに行った夜。駅前には足早に去る黒いコートの人で溢れていた。スーツケースを持った人、リュックサックを背負う人。ガイドさんに連れられてゾロゾロと歩く人。お母さんに連れられてひょこひょこと歩く人。 「お待たせ!」 振り返ると、マキがいた。笑顔が眩しい。 「人多いね〜」 「ほんとね!」 たわいもない世間話をして行くあてもなくただ歩く。右にも左にも人人人。 「どこ行く?」 「お店決めてないの。会った時に決めようと思って」

          【小説】 冬

          【小説】 湯煙

          「なんでそんなこと言うの!?信じられない!」 唐突に怒り出す人はそこそこいた。大抵の場合、私は何もしていないし勝手に向こうは違う人から聞いた話をする。 「えっと、何かな?」 「え、前に⚪︎⚪︎ちゃんと私のこと話してたでしょ!?」 「うん」 「その時、悪口言ってたってxxちゃんから聞いたんだけど?」 私は悪口を言った覚えなど一度もなかった。 それでも。 言ったことになっている。 言ってないことが言ったことにすり替わることなんてザラなのだ。 --- 「言ってないよ」 そう言うと、

          【小説】 湯煙

          【小説】 なんて

          自分の服装を1週間、手帳に絵で書いてみた。 月曜日は寒かったからハイネックにジャケットを羽織ってパンツスタイル、火曜日はプレゼンがあったからワンピースで、水曜日はカットソーにカーディガン…なんて書いていく習慣をつけてみたら、意外にも自分の傾向が見えてきた。 寒い日は裏起毛の素材を選ぶし、暑い日は脱ぎ着しやすい薄手のものをレイヤードする。冬は白が可愛く見える季節でもあり、服装はどうしてもベージュや白、無難な黒に落ち着きがち。結局、合わせやすさが第一なのだ。 時折、本屋の前で立ち

          【小説】 なんて