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【パラ五輪】北京2022 大会5日目・お茶の間観戦記

今日はひとつ悲しいニュースがあります。
バイアスロン女子・座位に出場予定だったウクライナのアナスタシア・ラレチナ選手が「父親がロシア軍の捕虜になった」ことを受け、精神的な理由から欠場を発表しました。

祖国の情勢に気を配りながらの大会で、本当につらい状況だと思います。
仲間の想いも背負って、今日はウクライナ選手団が躍動しました。


バイアスロンとは?

雪上に設けられたコースをスキーで走行し、途中にある射撃ポイントで的を撃ち抜き、ゴールまでに掛かるタイムの早さを競う競技です。
射撃の結果によってペナルティが課せられ、撃ち漏らした的の数に応じてペナルティコースを規定の距離走らなければなりません。

スキー技術はもちろんですが、射撃の結果により実際に走る距離が変わってくるため、高い射撃技術のある人が有利となります。
全身を使ったスキー走行で息の上がった状態から正確な射撃をするのは非常に難しく、精神力も求められるのです。



パラ・バイアスロンの特殊ルール

パラでは立位・座位・視覚障害の3クラスに分けられ、さらに障害の重さによってタイムに係数が掛けられます

立位の場合

障害が軽ければパーセンテージが大きくなり、重ければ小さくなるのです。
アルペンスキーと同じ制度ですが、もう一度おさらいします。

係数90%のA選手と係数80%のB選手がどちらも35分というタイムだった場合。
係数を掛け算するとA選手が31分、B選手が28分なので、B選手が上位になるのです。

目視の順位と実際の順位が異なるので、参加選手全員がゴールするまで順位が確定しないのも特徴のひとつと言えます。



バイアスロン女子10km立位

日本から出場した出来島桃子選手は、新潟県新発田市役所に勤める47歳のベテランです。
大学1年生のときに右腕に悪性腫瘍が見つかり手術をしたものの、障害が残りました。

入賞を目指して臨んだ今種目、結果は10位。
まだ参加種目は残っているので悔いのない走りを期待したいです。

表彰台はウクライナの3選手が独占!
今大会のウクライナ勢の勢いは凄まじく、すでに金6個を含む17個のメダルを獲得しています。



バイアスロン男子10km立位

先天性形成不全によって左手の手首から先がない佐藤圭一選手は、異色の経歴を持つパラアスリートです。

19歳の時にTVで見た長野大会をキッカケとして競技を開始。
遅咲きであり、会社員との二足の草鞋という環境にも悩んだ末、25歳で思い切って会社を辞めてカナダへ武者修行に行きます。

クロスカントリーの基礎を学び、多くの大会での功績を認められて日本の代表チームの一員となりました。
現在はIT企業でフルリモートワークをしながら競技を続けています。

入賞には惜しくも届かず9位という結果でしたが、銀メダルを取ったウクライナのグリゴリー・ボウチンスキー選手とも友人の彼は、こう語りました。

「戦争による厳しい状況で、パフォーマンスを発揮する彼らの強さを尊敬している。こうした状況でレースできるのは幸せなこと。滑ることで平和をアピールすることが、自分のやるべきことだと思う」

レース後のインタビュー



今日の注目 ルートヴィヒ・グットマン卿

パラリンピックの父と呼ばれるルートヴィヒ・グットマンについてお話ししておこうと思います。

1899年、ユダヤ系のドイツ人として生まれた彼はライプツィヒ大学で神経学を修め、脊髄損傷医療に尽力した人物です。

第二次世界大戦後、傷痍軍人の治療に当たる中で「スポーツは身体的・精神的に最も適したリハビリである」と考え、現在のパラリンピックの基礎となるストーク・マンデビル競技大会という障害者専門大会を始めました。

傷痍軍人の中には自分の損傷した身体に絶望し、生きる気力を失ったり投げやりになる者も少なくありません。
そんな彼らに、グットマンはこんな言葉を投げかけました。

「失ったものを数えるな。残されたものを最大限に生かせ」

患者ひとりひとりを叱咤激励し、前を向くことの大切さを伝え続けたのです。

ストーク・マンデビル競技大会は1960年に「パラリンピック」となり、彼の死後もその理念が今日こんにちのパラアスリートを支えています。



大会6日目(3月9日)の予定

流れる季節の真ん中で
ふと日の長さを感じます

レミオロメン

あ、「3月9日」なんで一応入れてみました。
さて大会6日目の予定です。

【競技予定】
13:00 クロスカントリー・スプリント準決勝
【放送予定】
13:05 クロスカントリー(NHK)

5分間どうしてもニュースを入れたいんだもんね、うん分かってるよ。
金メダルを取った川除選手と、ラストランになる新田選手も出場予定です。


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