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あおいちゃんの人生4

※この物語は3年前に書いていたストーリーの続きです
  過去の投稿は以下からご覧くださいませ



お昼も薄暗いタバコとお酒の匂いが混ざったお店で
あおいちゃんのお母さんは働きはじめました。

お母さんとお姉ちゃんとあおいちゃんは
そのお店の横にある休憩スペースみたいな畳の部屋に
寝泊まりすることになりました。

6畳もないような、とても狭い部屋。
あおいちゃんは、自分の新しいおうちがここになったことに、
少しがっかりしました。

そしてお父さんのことが心配になりました。
それまで4人で暮らしていたおうちで、
お父さんは今ひとりで過ごしているのかと思うと
心がキュッとしました。

ただ、お母さんとお姉ちゃんは
こんな狭いおうちでも、あの4人で暮らしていたおうちの時より
笑っていることが多かったので、
あおいちゃんはその顔にすこしうれしくなりました。

真夜中のこと
あおいちゃんは慣れない新しいおうちの布団で
なかなか寝付けず、ふと目を覚ましました。
すると、お母さんがしくしくと泣いているのが見えました

悲しそうな背中を見て声をかけようか迷いましたが
気づかないふりをしておいた方がいい、と思い
あおいちゃんは再び眠りにつきました。

次の日、あおいちゃんは
お母さんとお姉ちゃんと一緒に遠くまで出かけました。
お母さんは行き先を言わず、お姉ちゃんは助手席で黙ったまま。

あおいちゃんはあの薄暗い狭い部屋で過ごすのが嫌だったので
外に出られただけでとてもワクワクしました。

車は知らない場所をどんどん進んで行き
広い海が見える崖の上に到着しました。
風が強く波の音が大きくなる方へ向かって
お母さんとお姉ちゃんは
あおいちゃんの手をひいてまっすぐ歩いていきます。

ふたりはくすりとも笑わず、一言も話さず
ただただまっすぐ歩いていきます。
あおいちゃんの手をひくふたりの姿がなんだか怖くなり
その場に立ち止まりました。

そこは崖まであと少しの場所。
波の音と同じくらいの大きな声であおいちゃんは泣き始めました。

お母さんとお姉ちゃんはあおいちゃんの姿を見て
その場に立ち止まり、一緒に泣きました。

お母さんの手には封筒に入った手紙が握られていて
その封筒がくしゃっとなるのが見えました。

散々泣き腫らしたあと、お母さんは「帰ろう」と言って手紙をしまい、
3人で歩いてきた道を戻りました。

あおいちゃんはこの日の出来事が何を意味したのか
ずっと大人になるまでわかりませんでしたが、
この日以来、海が怖くなり、泳ぐこともできなくなりました。

これがあおいちゃんが人生で死にそうになった3回のうちの1回目でした。


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