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結局、英語習得には、○読がいいのか?

多読、精読、速読、遅読、深読・・・世の中には色々な読み方に関する手法が飛び交っている様に思います。結局、英語力を向上させるには何読がいいのでしょうか?

1. まずは、◯読を自分なりに整理してみた

①多読

自分にとって比較的簡単に読める本を沢山読むこと。一般的に、辞書を引かず、楽しく読み進めることとされています。読むスピードは、比較的よどみなく、リズミカルになると想定されます。

メリット:未知語に出会う頻度を増やすことで語彙の認知度の向上や、コンテクストから推論する能力、そして全体のメッセージを捉えることに集中する能力が養われると考えられます。

多読しかやらない場合のデメリット(極端なシナリオ):語彙や表現の認知度は上がりますが、実ははっきりとしたことが理解できておらず、詰めが甘い状態になってしてしまうかもしれません。ただし、その曖昧さを通り越すほど多読をすれば、その状態から脱することができるかもしれません。

②精読

一語一句、文法も含めて丁寧に理解しながら読むこと。一般的に、わからない語彙や文法があれば調べ、正しい意味を捉えながら読み進めていくこととされています。読むスピードは必然的に遅くなるでしょう。

メリット:この手法で読み進めると、自分の単語帳が出来上がったり(復習に最適!)、文法知識を一つずつ確実に身につけていくことができると考えられます。

精読しかしない場合のデメリット(極端なシナリオ):1冊の本を精読した場合、「木を見て森を見ず」の状態になってしまうリスクがあります。また、読むスピードが遅いため、途中で飽きてしまい著者の主張を十分に理解できる前に放り投げてしまうかもしれません。

③速読

速い速度で読むこと。一般的に、「速読術」「速読トレーニング」などが巷では話題となっていますが、読み飛ばしやスキミング、見出読みなどの手法があるようです。どのような眼球運動をさせるかといった身体的側面でも研究がありそうです。

メリット:物凄いスピードで読み進めるため、短時間で効率的に情報を得ることができます。速読ができると、文献の中から必要な箇所を素早く見つけることができたりするのもメリットかもしれませんね。

速読しかしない場合のデメリット(極端なシナリオ):文章を噛みしめながらエンジョイするという側面では速読は適さないかもしれません。例えば、文学ものの場合、速読だとあらすじは入ってくるものの、登場人物の心情を深く理解したり、自分だったらどう思うかなどといった自己への当てはめなどは、速読では達成できなさそうです。

④遅読

その名の通り、ゆっくり時間をかけて読むこと。「速読」に反して、平野敬一郎が「本の読み方 スロー・リーディングの実践」で提唱しているものです。前段の「速読」のデメリットに記載した通り、文学の場合は速読は適していないように思います。ゆっくり読んでこそ、味わいが出るし、心をストーリーに通わせてエンジョイすることができるのです。

メリット:ストーリーの理解だけでなく、自分ならどうするか、なぜ著者はあえてここでこのような言葉を使ったのか、などを掘り下げながら読み進めることで、文学を何倍も楽しむことができるでしょう。

遅読しかしない場合のデメリット(極端なシナリオ):時間があまりない人や、文学に興味がない人や基本的な情報だけわかればいいという場合には不向きかもしれません。

精読との違い:精読は、どちらかというと、一語一句、言葉そのものを理解することに重きを置いていますが、遅読は、内容を理解した上でさらに疑問を自分に投げかけながら読むといったところに重きを置いています。(それぞれ、重複する部分はあるでしょう。)

⑤深読

深く読むことです。深く読むとはどういうことかというと、議論できる状態まで読み込むということです。樺沢紫苑の「読書脳」で深読を提唱しており、読書の意味を「成長すること」だとするならば、読んだ内容が血となり肉となるような読み方をするのが望ましいと説いています。読むスピードは論点ではありません。(私が過去に投稿したnoteの記事もご覧ください 「洋書『深読』のススメ」

メリット:議論できる状態、または、本の感想が言える、お勧めポイントが言える状態を目指すことで、読んだ本を忘れにくくなり、自分の一部となっていくことを実感できるでしょう。同じ分野の他の本を読んだ際に、比較分析しやすくなり、その分野についてより深い知見を得ることができるかもしれません。

深読しかしない場合のデメリット(極端なシナリオ):毎回深読を目指そうとすると、自分ではさらっと読みたいと思った本でも深く読まなくちゃいけないというプレッシャーでストレスに感じるかもしれません。

2. 読み方によって得られるものが違う

上記に5つの◯読を整理してみましたが、このように横並びにしてみると(実際は縦ですが)、読み方によって、得られるものが違うということがわかります。一方、極端に◯読の信者となってそのような読み方ばかりに固執してしまうのもデメリットがあることがわかります。

3. どんな力を伸ばしたいかは人や学習ステージによって違う

英語リーディングのどんな力を伸ばしたいか、英語リーディングを通じて何を得たいかは、個人やそれぞれの学習ステージによって違います。

沢山の文書を処理できる体力をつけたい、新出単語に出会う頻度を高めて認知度を上げるなら多読。語句や文法を細かく理解していきたいなら精読。文書が英語であっても早く効率よく情報だけを引出したいのであれば速読。
文学をエンジョイしたいのであれば遅読。そして、読んだ内容が血となり肉となって欲しいなら深読を心がけると良いのではないでしょうか。

これら5つの読み方は、ここに挙げる事例に限るものではなく、ましてや、一つの「○読」縛りで読む必要もないと私は思います。

例えば、どうしても1冊の本を読み切りたい!という思いがあるなら、以下のような読み方も一つのやり方ではないでしょうか。

【絶対1冊を読み切るための自分ルールの例】

  •  ベースとなる読み方は、多読で用いられる方法(辞書は引かず、エンジョイしながら長文を読みきることを目指す)を採用する。

  •  途中でどうしてもはっきりとした意味が知りたい単語や表現が出てきたら、その部分だけ精読する。
    → 必ずしも多読で用いられる「辞書は引かない」というルールを適用するには相応しくない場合もあります。例えば、選択した本がいわゆる多読トレーニングで推奨されている「自分にとって比較的易しい本」ではない場合もあるわけで、どうしてもここが理解できないから後続の内容も推論しづらいということが出てくるかもしれません。

  •  筆者の説明が長くて「ちょっと飽きてきた。挫折しそう!」と感じたら速読に切り替え、一気に辛い部分を走り抜ける。

4)多読だけが正義ではない。自分で読み方をカスタマイズすれば良い

特にソーシャルメディアにおける英語教育の議論では、「多読」か「精読」かと言った極端な議論が多い気がします。私は個人的な経験を踏まえ、お勧めしている英語習得に活かすための洋書の読み方をこちらの記事に載せていますが(「洋書を英語習得に活かすためのヒント」)、一番重要なのは、英語学習者である読み手がどんな力をつけたいかをしっかりと認識することであり、それにあった読み方を自分なりに考え、カスタマイズして読むことなのだと思います。

今回の記事が少しでも皆さんのお役に立てたなら嬉しいです。皆さんが、洋書読書を通じ、手応えを感じながら楽しく英語習得の旅ができますように!

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