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厳しくも美しい自然を見つめて

2024年1月1日に起きた能登半島地震。発生から約3週間が経ち、進行する被害情報を伝えるニュースに心を痛めながらも、変わらない日常を送っている人がたくさんいると思います。それは決して悪いことではなく、目の前の自分の生活に集中して生きることは、義務であり幸せでもあります。

ある日、写真のコミュニティでつながりのある怜奈さんのYouTube動画を観て、わたしは涙が出ました。
怜奈さんは石川県の穴水町に住んでいます。穴水町といえば、今回の地震でもっとも被害が大きかった地域のひとつ。怜奈さんとは昨年グループ写真展で一緒に出展したことがあり、何度かメッセージをやり取りしたことがあるような関係でしたが、被災地にいる怜奈さんの状況を震災当初からSNSで知り、いつも心の片隅で気になるようになっていました。

photo by Leina

以前から怜奈さんは能登の美しさを写真や動画で発信していました。夕陽を受けて輝く海岸、みずみずしい草花たち。春夏秋冬の移り変わり、そこに住む身近な人たちの生活。自然への愛と感謝が溢れる写真たちは、あるがままの景色であり、怜奈さんの心が映し出す景色でもあります。

わたしが常日頃思っているのは、写真とはその人の心を映し出すということ。その人が見ている世界が、その人の写真になる。優しく慈しむ心を持つ人が撮る写真は、慈愛に満ちた写真になる。
その景色や被写体そのものの美しさに加えて「この人が見ている世界は、こんなにも美しいんだな」と教えてくれるのが、写真だと思っています。

震災後、これまでとは大きく変わってしまった環境と生活に不安を抱えながらも、変わらず目の前に広がる自然美を慈しむ怜奈さんの心と率直な言葉たちに、わたしはとても感動しました。
自然は時としてわたしたちにとって大きな脅威となり、町を破壊し、生活を一変させ、人々の命を奪うこともあります。それでも残されたわたしたちは自然と向き合い続けて生きていかなければならないし、そして自然は変わらぬ美しさと優しさを持って、そんなわたしたちを癒してくれる存在にもなります。

photo by Leina

今回、こうして怜奈さんのことを紹介させていただくために、メッセージをやり取りしました。遠く離れたところに住んでいて、会ったこともないわたしたちですが、ぽつりぽつりと交わす文字の中には、たしかにあたたかな感情が流れていました。
「いつか会いたいね」とお互いに伝え、会いたい人がいること、会いたいねと伝えられること、ただそれだけで、こんなにも心があたたかくなるんだなと、ひしひしと幸せを感じました。

photo by Leina

寒い冬の夜、小さなスマホの画面を眺めて、小さな約束に心が少しだけ救われる。その約束が叶うのはずっと先かもしれないけれど、こうしてただ心をあたため合う時間があってもいいんじゃないかな。そんなふうに思いました。

怜奈さん、ありがとうございました。

photo by Leina

兼田 怜奈さん
Instagram:https://www.instagram.com/leinaxxx/
写真アカウント:https://www.instagram.com/photo_by_leina/
YouTubeチャンネル:旅とライカと能登の日々
X:https://twitter.com/leinaxoxo


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