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「太宰を聴く」を三鷹で観る~2023年6月~


太宰治(敬称略)を偲んで、
6月19日「桜桃忌」と呼ばれている命日の季節に合わせて始められた
朗読会「太宰を聴く」

所縁のある三鷹の地にて開催されておりまして、今年は第22回。初めて行きました。

ご出演はご存知、安田 顕さん(以後安田さん)。

今まで出演された俳優さんも豪華です。
一覧がネットでは見当たらないので、当日のパンフレットから拝借いたします。
(敬称略)

第1回 久米 明    「桜桃」「富嶽百景」
第2回 奥田 瑛二   「朝」「桜桃」
第3回 平野 啓子    「キリギリス」「満願」
          「太宰治との愛と死のノート」(山崎冨栄) 



第20回 竹中 直人    「失敗園」「女類」「黄金風景」「母」
第21回 北村 一輝  「猿ヶ島」「朝」「グッド・バイ」

当日パンフレットより~抜粋~


毎回完売しているようでございますが、
今回もかなり倍率が高かった様子。
ご縁があった様で見事当選させていただいた訳ですけれども、
今回は感想も含め、諸々書いていきたいと思っております。


・私の中の太宰治


太宰治。
学校の教科書でも登場し取り上げられるであろう文豪。

学生の頃、初めて読んだとき「何だか自分を削ってる人だな」って思ったんですよねぇ。
それでまぁ "国語の便覧" って言う資料集があって、"太宰治"の作品とか年表とか書いてあるんです。死因も。
だから"削ってる"と言うのが当たらずとも遠からずだな、と我ながら思ったのを覚えております。

今回、改めて太宰治の作品を聴いて「はっ」と思ったのが、時代背景と作品です。

安田さんが朗読した作品4つ。
「朝(1947)」「魚服記(1933)」「美男子と煙草(1948)」「黄金風景(1939)」

当初はこの順番で上演予定との事でしたが、
安田さんより
「魚服記(1933)」「黄金風景(1939)」「美男子と煙草(1948)」「朝(1947)」という順番で上演するとの事。

理由は、戦前と戦後の作品でどう変わったか。
一緒に感じてまいりましょう。
…的な言葉をおっしゃっていたと思います。

…なるほど。
作品だけ読みがちだけれども、
作品が生まれる根本的なモノに、少なからず、時代背景も関わってくるのだよなぁ。

安田さんの言葉に、はっ、としました。

そして、今回の4作品は、安田さんご自身が選んだそうでございますよ。

【 朗読会 】

開演前のアナウンス。
携帯マナーの他に、コンビニの袋のガサゴソ系の音の諸注意、かなり丁寧にアナウンスされてらっしゃいました。

劇中は音楽がなく、語りのみ。

お腹の音。椅子の座りなおすギシッと言う音。普段なら気にならないありがちな音すら、大きく耳に入って聞こえるくらい。
そんな静寂ぶり。

観てる方も余計な音は立てまい、と言う空気感。お陰で電子機器の音も一切鳴らず。
鑑賞マナーこうであれ。と、思うくらい、今思えばアッパレでしたなぁ。

照明も途中で薄暗くなる演出がありましたけど。朗読の邪魔をしないような配慮。見やすかったです。

そんな中、出演する安田さんはと言うと、冒頭、幕が上がった時、もう格好良かったです。既に。
舞台セットの写真もインターネットに上がってますのでこちらでご確認ください。

https://twitter.com/TheaterMitaka/status/1669902689399095296?t=l-rWTCZMEfhNjfpyK5N89Q&s=19



文豪を思わせるセット。
そして、和装姿の安田さん。

舞台中央に着席された安田さんは、まず演目の変更についての理由と
太宰治について少しお話をされ、

それから踏み机に置いてあった水が入った陶器の入れ物を持ち、
「お酒じゃありません」
と笑いを誘い
「緊張してるか確かめてみましょう」
とグラスに水を注ぎ始めました。


”無類の不器用”として何度もバラエティーではネタになる安田さん。
ちょっとドキドキしておりましたが、

「…まだ大丈夫のようです」

スーッとお水を注ぎ終え、
更に会場を和ませ安田ワールドに誘っておりました。

水を注ぐだけで絵になる男、安田顕。


安田さんの説明は…良いですよね。
念のため公式プロフィール載せておきます。


①「魚服記(1933)」

安田さんがなぜこれを選んだのか。

おじいさんが"炭焼き"をやっていたから、との事。

そして、読み終えた後
「皆さん、起きてますか?」
と、声をかけたのです。

劇場にまた笑いが。

ちなみに、安田さんからは客席は見えないとおっしゃっていました。
じゃあなぜそんな声かけを…と言うのも、
安田さんご自身も言っていたのですが、シンプルにこの作品が難しい。
100人居たら100人の解釈があるのではないか、とも言っておられました。

これが声かけた理由の一つではないか、と。
他にもあるとは思いますけどもね。

いや…確かに。

ワタシも、ちょっと正直難しくて、ぬぬぬ…置いていかれまい!と聴いておりましたし、
そして何なら再度青空文庫で読み返してみたんですが、やはり、ぐぬぬぬ…となってしまいます。

皆々様は、どうお感じでしょうか。


②「黄金風景(1939)」

まず、安田さんは何故この作品を選んだか。

「好きなフレーズがあるから」と。

そして、
「探してみてください」とおっしゃって、読み始めました。

安田さんが一体どのフレーズが好きだったのか、答えを言うことはありませんでしたが、
"好き"は人それぞれですから、それを強要はしないと言う、何だか安田さんらしいな、とも思いました。

ワタシは、最後の方の一文かな、と思っております。
でもそれが違っていたとしても、
ワタシはそこが好きです。

負けた。これは、いいことだ。そうなければ、いけないのだ。かれらの勝利は、また私のあすの出発にも、光を与える

「黄金風景」青空文庫さんより~抜粋~


③「美男子と煙草(1948)」

休憩開け。
陶器の水の入った入れ物がリセットされておりました。

後半の2作品を選んだ理由は"酒"
そして、この陶器を酒として小道具に使っておられました。

この作品はエッセイになるのですが、
ワタシは太宰治にエッセイの作品があるなんて知りませんでした。

やはり文豪と呼ばれるスペシャリストのエッセイ。

結構お堅いかと思いきや、絶妙な笑いに持っていく。
狙ってると言うか、もう、それが普通で、太宰治と言う人間味が感じられて、ワタシはとても好きでした。

恐るべし太宰治。。。



④「朝(1947)」


太宰治らしき男の人と独身の女のキクちゃんが一晩同じ部屋で過ごす話。
太宰治はプレイボーイだからエロイのかと思いきや、そんなの一切感じない。
理性の闘いを描いておりまして、それが妙に面白いのです。

劇中、セリフも結構あるので、安田さんが演じ分ける訳ですが、その所作が落語を見ている様だなぁ、と。

それと独身の女キクちゃんが、
TEAM NACSの舞台『マスターピース』で安田さんが演じた女中の"高田"と言う役があるのですが、それが頭を過ったんですよねぇ、個人的に。

それで"高田"のしゃべってる動画ないかなぁ~と公式を探したんですが、見当たらず。

一応、その舞台の紹介動画だけ載せておきます。雰囲気だけでもどうぞ。
何なら機会あればご覧ください。


と、言うわけで「朝」と言う作品自体にも現代落語の様なモノを感じたのですが、これ如何に。

よろしければ、お読みくださいませ。


4本全て読み終えた安田さん。

本を音にすると読んだ人の解釈が入ってしまいますので、自身の感じる事を大事にしてください、、、的な事をおっしゃっていましてね。
何だかその飾らない感じが、これまたカッコイイなと思いました。


■おまけ/太宰治散策マップ■

会場の三鷹市芸術センターは、最寄駅の三鷹駅から徒歩15分くらいなんですけど、
途中で、太宰治の墓がある"禅林寺"を通りまして、何だか太宰治がそこに"居る"と言う感じも不思議としてきたんですよねぇ。

朗読を聞く心持ちだったからかなぁ、今思えば。
ちなみにそちらのお寺には森鴎外(敬称略)も眠っているそうな。

そして太宰治の所縁の地だからこそ、他にも色々とありまして、公演のチラシにも散策マップが書いてありました。
結構色々と行きやすそうだな、と言う印象だったんですよねぇ。距離的に。

チラシを手にしたのが当日だったとは言え、
チラシデータは見れたっぽいので、
もっと早く気づいてればなぁー!

チラシの裏に太宰治散策マップが…
この感じだと割と直ぐに回れそうな気が…



実際には、三鷹市で出してる"太宰治散策マップ"と言う、もうちょっと深掘りしたものもあるようなので、これは何かの折にちょっと巡ってみたいな、とは思います。

ただ私自身、そもそもあまり太宰治の作品を読んでいないので、もう少し読んでから、太宰しようと思います。




いつか安田さんの太宰治役と言うのが見れるのではないか…と思い&願いつつ、今回はここまでに致します。


お読みいただきありがとうございます!
またお会いしましょう!


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