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蟄居音楽三昧

 本日は午前中早くに音楽を聴いた後、音楽フェス配信「ビバラオンライン」を自宅で鑑賞。

 実をいうと、5月3日開催の現地Aチケットをとある方がご用意くださっていた。大好きなアーティストだらけの、その日を。だが、昨今の状況や仕事、また体調を考え合わせると、申し訳なくも参加はかなわなかった。
 これはもう、幾ら近場とはいえどう考えてみても仕方ない。情勢も日々刻一刻と変化する中、周りにリスクのある人が多く、自分も定期通院のある身では僅かな無茶すら許されまい。家族や職場はもとより、まかり間違っても主治医や医療スタッフの方々に流行病をうつすわけにはいかない。あの手は、無数の人々を救う手だ。

 配信であれば、わたしが現場の人数を増やすこともない。月日とともに、いつか機会はめぐると信じよう。

 本日の布陣もわたしには嬉しいラインナップとなっており、ことTOKYO SKA PARADISE ORCHESTRAとOriginal Loveは日頃愛聴している。
 VIVALA J-ROCK ANTHEMSに藤井 風さんがゲストボーカリストで参加されるのも楽しみだった。配信はないものと思っていたため、日が迫ってからの発表は半ばサプライズだった。

 配信開始から見ていた。ROTTENGRAFFITIのはちきれんばかりに熱が籠もったパフォーマンスで、この日フェスの幕は開いた。最近つと離れていたラウドロックも楽しい。

 ACIDMAN「赤橙」はかつての仕事上の思い出もあり、非常に懐かしく聴いた。しみじみといい曲、パフォーマンスも流石ベテランの力量だった。
 場に集まった人も、参加出来なかった人も、それぞれに考えや思いがある。その事実をまるで手のひらで大事に掬い取るようなMCが、胸に響く。
 曲にあわせ、客席でスマートフォンのライトが揺れる。まるで蛍の群舞のような美しさだったが、その中でも電池残量を気遣うところに、このバンドを貫くあたたかさを見た。

 Original LoveにHicksvilleのメンバーがサポート参加されているのは、本当に嬉しかった。好きと好きのマリアージュだ。田島貴男さん、真城めぐみさんの声が絶妙に合う。「接吻」「LET'S GO」という強力なチューンで攻めるセトリ、場所が部屋であろうが俄然盛り上がる。
 深みを増す渋さ、円熟の演奏。グルーヴが画面からしっかりと伝わってくる。

 TOKYO SKA PARADISE ORCHESTRAは昨年のステイホーム期間にも配信ライブを鑑賞した。スカパラとデ・ラ・ルスはいつだって裏切らない、というわたしの定石は今回も覆されることなどなかった。「Paradise Has NO BORDER」はいつだって最高だ。

 VIVALA J-ROCK ANTHEMS、トップの藤井 風さんは久保田利伸さんの「LA・LA・LA LOVE SONG」をパフォーマンス。
 久保田利伸さんの。
 くぼたとしのぶさんの。
 クボタトシノブサンノ。(しつこい)
 大好きが大好きを、大舞台で歌っている。いやYouTubeでは歌ったことがあるのだが。これはいったい何のご褒美なんだ、と一瞬妙な勘違いが過る。
 しかもコーラスは真城めぐみさん。つまりマシロ・キャンベル様だ。
 何ですって?
 ここから先は語彙力がGW休暇を満喫してしまい、素晴らしい素晴らしいとしか言えないbotと化した。鍵盤が、バンドが、コーラスが、照明が、そしてボーカルがただ素晴らしかった。そうとしか言いようがない、何か表現しようとすると直ちに陳腐化する。

 ANTHEMSのトリはアイナ・ジ・エンドさんによる赤い公園「Canvas」だった。アイナさんを最後にしたこと、赤い公園の楽曲をやること、全部に意味があるのが切ない。演奏が良ければ良いほどに切ない。
 そして、在りし日の米咲さんがスクリーンにいる・・・・・・。
 祈りを込めた音は立ちのぼり、天井をすり抜け、空へと向かったに違いない。これは共に歩んだ仲間による音楽葬でもあるのかもしれない、と思った。ステージの誰もが悼んでいる。ただひとりの人そのものを、そして抜きん出た才能のあまりに早すぎる喪失を。

 この場で触れなかったアーティスト、バンドも素晴らしい(また言った)演奏だった。現場ではもっと聴けた、もっと見られたことを羨ましく思うが、自ら決めた選択は蔑ろにしたくない。

 その場に行くのがかなわないのは、今必死に最前線で闘っている方々も同じだ。わたしはわたしの場所でささやかな日々を闘い、好きな音楽や芸術を楽しみながら、それらを幾許か無理のない範囲で支えることしかできない。そして出来ることを地味に地道にこなしながら、ワクチンを待つ。

 何が良い悪いの二元論が、疲弊した世の中を闊歩する。だが元はといえばウイルスが悪い。多かれ少なかれ、きっと誰もが不安の中にいる。
 意見や立場は違えど闘っているのだ。綺麗事だろうと、どうせ闘うなら共闘できたらいいのだが。そんなことを思いつつブラウザを閉じた。
 
 

 

なつめ がんサバイバー。2018年に手術。 複数の病を持つ患者の家族でもあり いわば「兼業患者」