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つまらない女になっていく

こんな世の中になって、大好きな旅に出れなくなって。航空券を検索することすらしなくなった日々。
少しずつ世界は拓けてきているのだけれど、わたしの場合、コロナを機に周囲の環境を変化させたから、今は色々なことが難しい。
もちろんそれは覚悟の上でのことだから、後悔はないんだけどね。

ただ、旅に出なくなった自分が、とてもつまらない人間のように思えてきてしまっている。

あの頃は常に、海の向こうの近くて遠い国について考えていた。
年に1~2回の旅が生きがいだった。
旅に出ればいつだって、嬉しくて、泣きたくなって、怖くて、楽しかった。
起こりうるトラブルすべてに1人で対処しなければならなくて、相手に怒ったり、自分の行動を反省したり。
毎日喜怒哀楽のすべてを使いきり疲れ果て、沈むように寝た。
苦労してたどり着いた景色はどれも、息を呑むほど美しかった。

その時間があまりに大切だったから、それさえあれば何もいらないって、その思いは今でも変わらない。

だからこそなのか、旅に出るという選択肢を持たないわたしは、ただのつまらない女になってしまった。

平坦で感情の起伏が少ない毎日。
売れ残りたくないから、結婚したい。
流行りのブランドバッグが欲しい。
明日の仕事に行きたくないな。
どうにかこの現実から逃げられないかなあ。

別に悪いことじゃない。
結婚したいのもブランドバッグが欲しいのも、普通の女性にとっては当たり前のこと。
仕事が嫌なのも現実逃避も、社会人ならみんなが通る道。

でも、あの頃のわたしはそんなふうに生きていなかった。

きっと全部、旅のおかげ。
旅があったから、周りと違うことなんて気にならなかった。
旅があったから、それ以外でお金を使いたくなかったし。
旅があったから、働くことの意味を見いだせていた。
そういう自分が好きだった。
揺るぎなく好きなものがあって、そのためだったらなんだって頑張れる、自由に世界を歩いていく。それがわたし。そんな自分が誇らしかったのに。

もしかしたら、いや、もしかしなくても、わたしは最初からこういう女だったのかもしれないなあ。旅がないと楽しく笑えない。困ったな。



世界はそれを愛と呼ぶんだぜ