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夜、制服、メトロポリス/Re:散文夢

夜。
暗い高架脇の道を制服で駆けていた。

急げ急げ、駅の向こうに行けばスカイツリーが見えるよ、とリエが言った。
まってまって、速いよ速い、と、息を弾ませながらミッチが返す。大柄で足の速いリエに比べてミッチはぜんぜんちびっ子なのだ。

私も二人とともに駆ける。三つの靴音が高架脇の闇に響く。夜空は遠くポリスの灯を映してぼんやりと青紫色で、その色は私たちの所まで届かない、まだ。でもスカイツリーの見える所まで行けば、きっと。

駅の階段が見えた。古ぼけた白いコンクリート造りのビルの向こう、一段と青紫に空が光る。私たちは階段を駆け上がった。
見えた。鉛筆みたいにノッポなタワーは、あれがスカイツリー。青い照明をドレスみたいに纏って、とてもきれいだ。でもその背後、ツリーよりさらに高く大きい超高層ビル群に私たちは圧倒された。これがポリスか、すごいすごい。
私たちは大はしゃぎで、互いの端末で写真を撮り合った。青紫色に光るポリスの夜空を浴びて、私たちも青紫にかがやいて。

きれいだった。リエもミッチもきれいだった。きっと私も。
みんなで撮った写真。リエとミッチと、青紫色の世界を写し合ったあの写真たちは、今どこにあるんだろうか。あれはほんとうの出来事だったんだろうか。

あの夜以来、もう二人には会っていない。

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