牧野 一志 (まきの ひとし)
身近な自然と日々の生活で感じたことを記しています。ふとした合間にご覧いただければ幸いです。
夏に白石川の「六本松」で、よく泳いだことを思い出した。その上流の右岸から流れの一部が隧道に取り込まれている。その隧道が江戸時代に作られたことを、小学生時に教わった。 後に、資料で江戸時代後期に、白石城主片倉氏の家臣であった片平観平親子が中心となり、私財を投じ、十年がかりで隧道を完成させたと知った。 その隧道は、白石城跡の西側で、二方向に分かれる。一方は館堀川として城山の内堀のように北から東、さらに南側へと回り、小高い益岡や寺前に沿って流れ、田町、新館を経て、所々で水田な
窓辺に佇むマダガスカルジャスミン 白い花を蔓の先へ次々と咲かせ 香りをそっと放し続ける 初夏の青空に香り立ち それでも故郷は遥かに遠い
川裏の草むらに腰をおろし 青空を見上げ 覚えたばかりの (‥‥君が袖振る) を呟く 晴れやかな心地のまま 湧き上がる希求はうねり まだ形づくることもなく彷徨う
ふいに朝日が差してきた 昨日とはちがって そうだ、低く巡っていた太陽が やおら背を伸ばし 隣家の屋根を越えてきた 窓際のサツキやゼラニウムも気が付いたらしく いつの間にか花を咲かせている 陽は春のオープンを告げたばかり
丘陵を 吹雪が瀑布となり流れ落ち 風が幾重にも巻き上げる 吹き溜まりの深みに 足を取られながら 横雪に流されるばかり 牧舎では羊が 長い巻き毛に顔を埋め 春のそよぎを待っている
町が眠りにつくころ 船は港を離れる 吹雪でうねる暗闇の海峡を 船は左舷にゆっくりと傾き あるいは右舷に揺り戻し 切り進む 乗り合わせた誰もが 揺れに心を委ね 船は明くる地へと
ダイヤモンドダストが キラキラと流れ 連なる微かな響きは オレンジ色に灯る ロッジのつららが そっとハグしあう音
出勤時、ビル風に遭遇したときにふと思い出した。 かって、子どもたちがワイワイと日が暮れるまで遊んでいられたころを。近所の子どもたち、下は5、6歳から上は10歳くらいまでの男女、といっても男子は男子だけ、女子は女子だけで遊んでいた。男子は、近所の広場だけではなく、裏山などの斜面や里山の細い道を探検気分で遊んでいた。 そのような時に吹いてくる風は、子どもだちの声を遮ったり、投げたボールを逸せたり、かぶっている帽子を飛ばしたりと、一緒にうまく遊べてはいなかった。 小さいお社の
夜8時発の特急に乗る。翌朝の会議に出席するための前乗り。1月は積雪も多く、鉄道の運行は心強い。新得駅で札幌行きに乗車すると、間もなく動き出した。窓外は、車内の明りが積雪を次々に流れるように映していく。自販機で買った熱い缶コーヒーを飲むと、温かさが身を包んでくれる。車内の暖房もあり、ホッと一息つき、間もなく心地よさでウトウト。広内信号場はもう過ぎたのだろうか。上り坂はまだ続くのだろうか。列車は軋み揺れながらも逞しく前進している。やがて目的地なのか、見知らぬ何処に誘われるのか
あの日の峠では 多くのトラックが ペケレベツ岳を横切るときに トナカイ橇のようにそっと飛ぶらしい クリスマスの夜は 歓喜の歌に満ちた清水の町から 峠を超える照灯が 稜線に連なり見える
夜半の水平線に雲が湧き 雷鳴が静寂を突き破る 西風が潮を蹴り 風車の櫂を漕ぎだす 眠りに落ちた海辺の町を やがて嵐が通過する
見上げれば 視界は満天の星 酷寒に輝く北極星は カイラスの空にも在り 一隅の祈祷旗を照らし ただ示すのみ 人知れず風にたなび続けるを
つきさっぷ あおいあおいよる こがらしのつきさっぷ ふさふさしっぽのきたきつね みあげたきんいろひとみに りゅうせいぐん
木枯らしが背後から 肩先を軽く踏み越え 鱗雲の空高く翔け上がる 集く虫の音に ふと見渡せば 揺れるすすき野原が遥かに続く ただひとときの秋
ねこやなぎが芽ぶき 瀬にたゆとう小石の かすかにふれるめざめの囁き 夏に ゆたかな藻をはみ 早瀬に躍る 秋に 新たな命をそっと託し 抗う力もなく静かに流れに落ちる 高く見えるすじ雲は 紛れもなく 遠い記憶に広がるゆうらっぷの空
丘陵を雲の影が駆け 羊は黙々と草を食む 鴉は翼を広げ風に乗り 旋回しながら 界隈のお社を遥拝す 空高く渡る陽は 遍く四方に降り注ぐ