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熱海秘宝館で食らった話

熱海は都心から1時間半程度で訪れる事が出来る有数の温泉街だ。バブル期は社員旅行の行き先として盛んで、今こそもう落ち着いているが、流行りの映えスイーツがあり、旅費もそこまで掛からないので訪れる若者が増えてきている。

しかし、それでも昭和の残滓は街の至る所から滲み出ている。昼間こそプリンだのクソ映える食べ歩きで人は栄えているが、夜は妖しげなネオンサインが輝き、昼に出歩いていたキラキラな若者はNPCの様に何処かに消える。感覚的には「千と千尋」の両親が豚にされるあの街のようだ。そんなカオスな雰囲気が好きで、久しぶりに熱海に行きたいと考えた。

熱海秘宝館に行こうと思ったのは、そんなカオスの中でも特濃のカオスを浴びてみたいと思ったからだ。昭和のエロ美術展覧会なんてなかなか人を誘い辛いものだが、友人に秘宝館に行きたいと話したら快く承諾して頂いた。こういう時着いてきてくれる友人には感謝しかない。

熱海ロープウェイに乗り、秘宝館に辿り着いた。
すぐ側に展望台があり、何処までも広がる海原は心を落ち着かせてくれる。その一方で秘宝館の入り口はまるで魔窟の様相であり、受付の老人は厳しい顔で腕を組んで座っていた。

受付の老人にチケットを渡し、恐る恐る潜入した。1時間程度見学して退館後、僕も同行した友達も精神的に疲弊した。「なんか、無理矢理頭を使わされたな……。」普段チ○ポやウ○コで腹を抱えて笑える我々が、過去一番ゲンナリしていた。

僕は人よりもスケベな人間だと思っていたが、
館内は自称エロ人間を駆逐するかの様なハイパーナンセンスな展示会であった。僕はスケベは無く、一般ピープルであることを認識させられた。

特に酷かった展示物は「H!NKの熱海花火大会 マンカイ屋!!」だ。(タイトルはうろ覚え)
熱海花火大会の映像に合わせて打ち上げられたデカマラ花火が、女性器を模した花びら型の花火に何度も刺さろうとする映像だ。デカマラが花火に入ろうとするが中折れしたり、ブロッキングされる映像が繰り返される。そして、陳腐な喘ぎ声と共にアレがブッスリと刺さった。

「イヤ〜ン!イヤ〜ン!!」
「イヨッ!!!マンカイ屋〜〜〜〜ッッ!!」

脳の回路が焼き切れた。
小学3年生の頃団地の裏で大量のエロ本を発見した時の感覚に酷似しており、「エロ」という概念を120%濃縮して浴びせられた瞬間を思い出した。

その夜は午前3時過ぎまで飲み倒していたのだが、僕は悪夢に魘されて1時間と少ししか眠れなかった。

乳首モロ出しの蝋人形、エロおみくじ、デカマラ木馬、デカマラ一本釣り大黒天、マンカイ大花火、カビきった昭和の異臭、ケツから目が生えたバケモノ。

夢の中で魑魅魍魎が跋扈していた。目覚めてすぐにホテルの温泉に駆け込み、水風呂でひたすら心を整えた。

秘宝館の様な魔窟が造られることは二度と無いだろう。熱海は「ちょうど良い」観光地である。若者も集い易く、宿も極めてリーズナブルだ。しかしながら、昭和特有の下劣な要素も含有している不思議な場所でもある。

LGBTQやポリティカルコレクトネスを避けられない世の中で、まだ秘宝館の様なブチギレ案件が存在しているのは奇跡かもしれない。もしかしたら最後の砦かもしれないと考えれば、行く価値はあったかもしれない。僕は頭がおかしくなったので二度と行かない。

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