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第27回 「二つ一つ」の話

今日は、二つ一つについて考えてみましょう。

物事にはなんでも、いい側面と、悪い側面があります。

たとえば、愛について。

家族や、恋人といった、愛する人を抱きしめると、とても満ち足りて、幸せな気持ちになりますよね?

最近の研究で、人を抱きしめると「オキシトシン」という脳内物質が分泌されて、心地よさを感じることが分かったんです。

しかし、さらに「オキシトシン」を調べていくと、面白いことが分かりました。

人間はとにかくこのオキシトシンがほしいんです。

だから極端な人になると、恋人を束縛したり、浮気や不倫に走ったり、子供が自立するのを引き止めたり…するきっかけにもなってしまう。

ニュースを見ていると、愛のもつれで起こる事件は後をたちません。

わたしたちは、「愛」と聞くと、それだけでとてもいいことのように思ってしまいますが、

物事には必ずいい面と、悪い面が存在するんです。

正義なんかも、そうですよね。

警察は正義を持って、悪人を押さえつけます。

正義はいいもののように思いますが、

ひとたび戦争になると、正義の名のもとに攻撃をし合うんです。

正義も行き過ぎると、人を攻撃する手段になってしまう。

愛、正義と聞くと、いいことのように思ってしまいがちですが、それは偏った見方なんです。どんな物事にも、必ずいい側面と悪い側面があるということを、覚えておかなければなりません。

この世界はそういうふうに、天と地、男と女、陰と陽、二つのものが補い合って、一つのものを作っています。

一つの事に囚われて、バランスが崩れてしまっては、うまくいきません。今日はそういうお話をさせていただきます。

先日、とある男性の方から相談を受けました。

腹が立って腹が立って仕方がない、と言うんです。

話を聞くとその方は毎日、一生懸命仕事をしているそうです。自分の時間を削って、誰よりも気持ちを込めて、仕事に尽くしている。

それなのに、奥さんが分かってくれない。あなたは仕事ばっかりで家族の事を見てくれないと言われる。

家族のために一生懸命仕事をしているのに、分かってもらえなくて、腹が立ってしまう。と言うんですね。

その話を聞きながら、わたしはあることを思い出していました。

私にも同じ経験があったからなんです。

仕事に執着しすぎて、もっとやらなければ、もっとできるようにならなければ、もっと、もっと・・・自分を追い込んで追い込んで、クタクタになってしまったんです。

そんなときに、とある先生から、「自分を大切にしたほうが、うまくいくよ」という話をしていただきました。

内と外があるんだ。

あなたは外に囚われ過ぎて、全体のバランスが崩れているんだ。まずは内、つまり自分や家族を大切にしてあげなさい、と教えて下さったんです。

だから私も、Aさんに、もっと自分を大切にした方がいいですよ、というお話をさせて頂きました。

仕事に割いていた時間を、家庭のために使って下さい。まずはAさんがゆっくり休んで、自分に優しくする。次は家族の時間を沢山取って、奥さん子供に孝行をしてあげてください。そしたら上手くいきますよ、と言ったんです。

Aさんは自分のやっていることと真逆の事を言われたので、しばらく悩んでいましたが、とにかくやってみますといって帰られました。

そして次に会った時、見違えるように明るく、元気になっていたんです。そして、夏央さんに助けてもらいました、と言って下さいました。

というのもその方は、わたしと話したあと、仕事をほどほどにしたそうです。まずゆっくり休んで、その後家族の時間を取って、子供と遊んだり、奥さんと沢山話をした。

すると、気持ちに余裕が出てきて、前向きになってきた。そしたら、職場の方とも楽しく話ができるようになって、家庭の悩み、職場の悩みが一気に解決した、と言ってくれたんです。

Aさんや私が上手くいかなかったのは、外のことに囚われ過ぎて、内のことが、ないがしろになっていたからです。

この囚われを、仏教では「執着」といいます。

いい意味で言うと物事に没頭する力なんですが、執着が過ぎると反対側がおろそかになってしまう。

二つ一つと考えると、執着ではなく反対側を見て、バランスを取ることが大切です。

しかし人間は、バランスを取ることが、とても苦手な生き物なんです。

例えば私達は「自分が持っていないもの」を探すのは得意だけど、「自分が持っている」ものには気づけないという特徴があります。

「ない」ものとは、つまり、悩みです。お金がない、恋人がいない、仕事がつまらないこういう悩みに、私達は囚われてしまいがちです。

しかし、実は、「ある」ものもあるんです。
温かい家がある。家族が健康でいてくれる。楽しく話せる友人がいる。

そう考えていくと、私達は、実はとても豊かなんです。これだけ恵まれているのに、「ある」ものには目が向かない。不足している、「ない」ものばかりに執着して生きているのが私達なんです。

おやさまは「物を施して執着を去れば、心に明るさが生れ、心に明るさが生れると、自ら陽気ぐらしへの道が開ける」と教えて下さいました。

おやさまがものを施して、貧のどん底に落ちられたのは、この「執着」を離れるため。

「水を飲めば水の味がする、神様が結構にお作りくだされてある」と教えて下さいますが、執着を離れると、どれだけ自分たちが豊かで、満たされているかがよくわかる。囚われをなくすと、それだけ見える世界が広がる。心に明るさが生まれて来るんです。

人生が上手くいかないときは、何かに執着しているのかもしれません。

Aさんや私のように、仕事に執着して、周りが見えなくなったり、お金がない、彼女がいない、という悩みに囚われて、自分が恵まれていることを忘れてしまったりする。

執着してしまいがちで、偏ってしまいがちだということを忘れずに、

二つ一つのバランスを取ることが大切なんです。

上手くいかない時には、どこのバランスが崩れているのだろうという目で反対側にも心を配ることをおすすめします。

二つ一つが天の理。執着を去って、バランスの取れた人生を送りましょう。

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