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ねじのロケット、どうして4回の”NO GO”を経たの?(7/18-19のロケット打上げ判断)

こんにちは、インターステラテクノロジズ(以下、IST)広報チームです!

本日24日(金)0時、ねじのロケットの再打上げを7月25日(土)に実施することを発表しました!


さて、当初は先週7月18日(土)に打上げ予定だった『ねじのロケット(MOMO7号機)』ですが、4回の”NO GO判断”を経て打上げ延期をし、最終的には翌日の19日(日)16:05を打上げターゲットとしました。
※19日(日)16:05も、打上げ直前でメインエンジンの点火器の温度上昇が確認できなかったため自動停止し、打上げの延期を決めました。原因と対策に関しては、この記事の最後に記載しております。

さて、みなさん。どうしてそんなに「NO GOが出るの?(延期になるの?)」と不思議に思われる方も多いのではないでしょうか?ロケットを1機打上げるために、打上げ当日のチェック項目は300項を超え、一つひとつしっかりとチェックするために直前の準備には7時間以上かかります。NO GOになり次の打上げタイミングまで延期となると、また準備をやり直さなければなりません。心血を注いで作ったロケットは一刻も早く飛ばしたい!という気持ちもありますが、確実に飛ばしたい。なので、ここは慎重にGO / NO GO判断をしなければなりません。
今回は、4回のGO/NO GO判断基準をお知らせしたいと思います!

安定と安全を確保する基準となる上空風

高度10km前後で吹く風のことを上空風といいます。地上ではそよ風でも、上空は非常に強い風(ジェット気流)が吹いていることがあります。
ジェット気流は地球規模で、強くなったり弱くなったりしながら移動していきます。ジェット気流は冬のほうが発生しやすく夏は少ない傾向にありますが、『ねじのロケット(MOMO7号機)を』打ち上げようとしていた7月18日は、そのジェット気流が上空にやってきました。

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ジェット気流は一番強いときで最大風速80m、これは時速300kmを超える速さで、つまり新幹線ほどの速さで風が吹くのです!
ロケットが高速で昇りながら、時速300kmの速さで吹くジェット気流に突っ込んで行く様子を想像してみてください。当然、強い横風を受けるため、安定して飛ぶことはできません。
もう一つ重要なのが、風向きです。基本的には地球の自転の影響で西から東へ風が吹きますが、稀に南や北に向いていることがあります。例えば北に吹いてしまうと、立ち入り制限区域を大きく超えて安全を確保することができなくなってしまう可能性も・・・。
つまり、速さ・幅・向きのバランスがピタリと揃わなければ、安全を確保しながら安定させてロケットを飛ばすのが難しいのです。
そのため、上空風が弱くなるのを待って打上げを行っています。(ジェット気流に負けないロケットにする!という対策もありますが、それはまた次の機会に説明させていただきます!)

ロケットは精密機器のかたまり!氷結層では落雷を誘発する可能性も…!

ロケットの中身、皆さんご存知ですか?ざっくり言ってしまうと、「燃料」と「精密機器」です。精密機器に関しては、軌道をコントロールしたりと、ロケットを正しく飛ばすためにコンピュータやセンサー、通信機器が搭載されています。

氷結層は、雲の中の0℃からマイナス20℃の層のことを指します。氷結層では氷の粒が衝突し合うことで電気を帯び、その衝突が激しい場合は落雷へとつながることが知られています。ロケットに雷が落ちると、機体や搭載機器にダメージが生じ、ミッションを達成できなくなってしまいます。
(『ファン!ファン!JAXA!』より引用)

ロケットは高速で空に昇っていくため、氷結層が厚いとそれだけロケットが帯電し、電気系に悪い影響を与える恐れがあります。

2014年には宇宙航空研究開発機構(JAXA)と三菱重工業が開発した『はやぶさ2』も氷結層が原因で打上げを延期しています。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO80248910Y4A121C1000000/

2019年7月に打上げられた観測ロケット『ペイターズドリーム MOMO4号機』が飛行中の不具合で緊急停止しましたが、その原因の一つに氷結層によって発生した静電気・雷により搭載されている精密機器が不具合を起こしたことが挙げられるため、基準を見直しています。

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慎重な判断ゆえのNO GO

上空風と氷結層に関しては、周辺の安全を確保し、安定して確実に飛行させるための重要な判断基準となります。ISTでは天候以外にも判断基準を設けており、これらの条件が揃ってはじめて、打上げができるのです。

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ロケットの打上げ成功を心待ちにしてくださっている皆さまにとっては、『ねじのロケット(MOMO7号機)』の4回のNO GO判断に少しがっかりされたかもしれません。しかし今回は、機体も消失せず残っているため、この数日間は原因究明と対策を早期に行ってきました。

ねじのロケット打上げを7月25日(土)に行います!


19日に「ねじのロケット」の打上げを試みた際、メインエンジンの点火器の基準値以上の温度上昇を確認できなかったことから機体は自動停止いたしました。この不具合を受け、データと機体を調査した結果から現時点において考えられる原因について確認と対策を施しました。

<原因究明のために実施した事項>
・取得した温度データの調査
・使用した点火器の分解/調査
・電装品を含む点火器系統の機体内部品を調査
・点火器系統の地上設備部品を分解/調査

<打上げに向けて実施している事項>
・点火器の新品への交換
・機体内および地上の点火器ガス系統の部品を清掃/交

これらの原因究明と対策を行い、以下の日時で打上げに再度チャレンジいたします!

《ねじのロケット 打上げ概要》

・打上げ予定日時 :2020年7月25日(土)11:00
・打上げ可能時間帯:11:00~12:20、16:05~17:50(日本標準時)
・打上げ場所 : インターステラテクノロジズ大樹ロケット射場(北海道大樹町)

※気象条件、打上げ準備状況、その他複合的要因により、打上げを延期する可能性があります。

今回も新型コロナウイルス感染症対策として、無観客打上げやパトロールの強化を行い、来町自粛のご協力をお願いしております!打上げの様子はライブ配信をいたしますので、ぜひオンラインでご視聴いただけたらと思います!
▼YouTube


▼ニコニコ生放送


また打上げにチャレンジ出来ることを、私たちは前向きに捉えています。『ねじのロケット(MOMO7号機)』の再チャレンジに、ご期待ください!
引き続き、応援をよろしくお願いいたします!

参考メディア
JAXA『ファン!ファン!JAXA!』https://fanfun.jaxa.jp/topics/detail/6905.html
『imidas』https://imidas.jp/genre/detail/K-123-0071.html

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