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【ポケカコラム】Fレギュの目指したゲーム体験って一体なんじゃ!?【ドンナモンジャTV】

ハッコウシティからこんにちは、なかね(Twitter)と申します。

先日とある記事を読み、ポケモンカード(ポケカ)のゲームバランスとそのデザインについて興味を持ちました。
私はポケカの他にTCGタイトルをいくつかプレイした事があるのですが、他のTCGと比較してもポケモンカードは弱点システムなどを利用したゲームバランスの調整が優れているように感じています。
そこで今回は、自身がポケカを始めたFレギュレーション(Fレギュ)に焦点を当て、「スターバース」から「VSTARユニバース」発売までのゲームバランスを交えて、どういったコンセプトをもとにゲームデザインが行われていたのかを考察していきたいと思います。
Gレギュレーションが始まったばかりでタイミングを逃した感が凄まじいですが、肩の力を抜いたコラム記事なので気軽に楽しんでください!(ちなみに本文中のナンジャモ要素は0です、ごめんなさい)

前の記事:【64人規模シティリーグS2優勝】雪道型ルギア解説【全文無料】

ポケモンカードのゲームデザイン

まず、この記事のテーマであるポケカのゲームデザインとはなんなのでしょうか。
オタク語りをするのもまどろっこしいのでポケモンカードを作っている株式会社 クリーチャーズの新卒採用サイトを見てみましょう。

ポケモンカードゲームのゲームデザインとは、カード上のポケモンのHP(ポケモンの体力)やワザなどのデータを設定し、「遊び」そのものを創造する仕事です。ポケモンをカード上でどのように表現し、ユーザーにどのように遊んでもらいたいかを考えながらカードに落とし込んでいきます。

https://new-graduate.creatures.co.jp/cr_people/pokemon_tcg_game_designer/
より

ちょうどゲームデザイナーの方のインタビュー記事が見つかりました。
ユーザーがポケカをどのように遊ぶか」という目的がゲームデザインの根幹を成しているようです。
もちろんポケカにはコレクションのような楽しみ方もあると思いますが、今回はデッキ構築やゲーム自体のプレイをメインに考えていきましょう。

Fレギュレーションのゲームバランス

次に、Fレギュのゲームバランスについてです。
Fレギュは計5種類の拡張パックが発売され、それらの看板となっていたポケモンやコンセプトとなっている強力なギミックがチャンピオンズリーグなど大型大会の主役となっていました。

拡張パック「スターバース」で登場したアルセウスVSTAR
拡張パック「スペースジャグラー」で登場したオリジンパルキアVSTAR
拡張パック「ロストオリジン」で登場したミラージュゲート
拡張パック「パラダイムトリガー」で登場したルギアVSTAR

Fレギュのトリを飾ったルギアVSTARはその中でも飛び抜けてパワフルで、特性のアッセンブルスターからアーケオスを2体展開する動きになす術なく敗れた経験は誰しもがあるかと思います。
このもはや無慈悲とも言える動きはそれまでのVSTAR・VMAXを主体としたデッキを圧倒しており、環境のシェアはルギア一強、そのゲームバランスが揶揄されることもあるような状況でした。
また、それらの対抗馬として常に存在感を示していたミュウVMAXをメインに据えたデッキも後攻1ターン目から強力なワザを使用する事ができ、Fレギュ終盤は数ターンで簡単にゲームが終わってしまうような非常に早いゲームスピードが特徴だったと言えます。

では、果たしてこうしたゲームバランスは意図してデザインされたものなのでしょうか?

Fレギュレーションが目指したゲーム体験

Fレギュ終盤、ルギアVSTARの登場によって極まったゲームスピードは果たして意図されたものだったのでしょうか。
私はこれが半分正解であり半分不正解だと考えています。
正確には、「ゲームスピードの高速化よりも優先されるゲーム体験があり、見逃されていた状態」だと捉えています。
冒頭で私が紹介した記事に、TCGのゲームデザイナーの役割と達成すべき目標が記載されていました。

なぜなら、そのタイトルにおいてメインとなるやり取り(例えば、場を介したカードの交換)と、メインとならないやり取りがあり、どのやり取りをメインとするかは、ゲームデザイナーが各バージョンの環境よりも上位の意思決定によって決めているからです。
ゲーム中の体験をプレイヤーにとって楽しい・快い・飽きにくいものにするのがゲームデザイナーの役割で、デッキの強さの均衡は上位目標を達成するための下位目標です。下位目標に拘泥するデザイナーは視野が狭いと言わざるを得ません。

https://note.com/jey_p/n/n204775fbeec8
「TCGのニッチな戦略が許されない理由」より

この記事の言葉を借りると、プレイヤーのゲーム中の楽しい・快い体験が優先され、特定のデッキの強さからくるゲームバランスの不均衡は二の次になるのです。
それではその優先されるゲーム体験とは何なのでしょうか。
私は、Fレギュを通してデザインされたゲーム体験の根幹にあるのはエネルギー加速だと考えています。

無駄な争いを避けるため無色エネにしました

アルセウスVSTARのワザであるトリニティノヴァに始まり、ゲームバランスの項で挙げたポケモンやギミックは全てエネルギー加速が効果の要となっています。
こうした不自由のないエネルギー加速によって、プレイヤーは好きなポケモンの好きなワザを使ってゲームを楽しむ事ができるのです。
実際にアルセウスやロストギミック、そしてルギアのデッキレシピには多種多様なポケモンが採用されており、私自身何度もレシピを見て驚かされた経験があります。
1ターンに1度、手札からエネルギーをつけるという制約ではどうしても活躍できなかったポケモンたちのワザを使う、という体験をFレギュでは目指していたのではないでしょうか。

ここで、「いやいや実際にルギア一強の環境でプレイしていた自分たちは楽しくなかったじゃないか」というプレイヤーの声があがると思います。

私もこれにはおおむね同意で、「一方的なゲームばかり続いてしまうと飽きてしまう」「駆け引きの要素が少ない」という意見には納得できます。
ですが、それは勝利を目指すために最適化されたデッキを駆使する競技的なプレイヤーの視点であり、ゲームをプレイするユーザー全体のうちの一部でしかありません。
限られたカード資産で遊ぶプレイヤーや、カジュアルにデッキ構築を楽しむ層にはこうしたエネルギー加速のギミックは好きなポケモンを活躍させるチャンスとなるのです。

一方で、最近はシティリーグや大型大会で入賞したデッキレシピが即日公開され、それがSNSやyoutubeで広く拡散される事が当たり前になっています。
こうした環境の是非はこの場では問いませんが、実績を伴った情報の広がりはカジュアルにプレイしているユーザーのゲーム体験にもある程度影響していると思います。
同意の上でカードプールを制限しない限り、(ユーザーが自ら遊び方を変更しない限り)お互いが楽しむためにはどうしてもデッキ構築やプレイの内容を高いレベルに合わせざるを得ません。
今後は、こうした環境の最適化を加味した上でのゲームデザインが課題となってくるのではないでしょうか。

おわりに

ここまで読んでいただきありがとうございます。
ポケカは本当に面白く、競技的な取り組みからコレクションまでその人なりの楽しみ方があります。
そして、その楽しさが多くのユーザーを惹きつけていると思います。
今回記事を書くにあたって、多くのユーザーを持つポケカだからこそ抱えるゲームデザインの難しさを改めて感じました。
クリーチャーズの中の人の心労を慮るばかりです。

また、1月に入り新たな拡張パック「スカーレットex」「バイオレットex」が発売され、サーナイトexなど強力なエネルギー加速手段を持つカードが登場しました。
とりあえず私は一人のプレイヤーとして、この目の前の新たな体験を楽しみたいと思います。まずはデッキを組むところからですね。

最後に、このニッチな記事を読んだ感想などがあれば、ぜひコメントや私のTwitterまで反応をいただけると嬉しいです!
ではまた。


参考:レギュレーションって?

ポケモンカードは「スタンダード」や「エクストラ」など、レギュレーションによって使用できるカードの種類が異なります。
現在もっとも広く遊ばれているスタンダードレギュレーションは2023年1月20日からレギュレーションが変更され、カードの左下に表示されたレギュレーションマークに、E・F・Gと書かれたカードが使用できるようになりました。
記事内の「Fレギュレーション」は、D・E・Fのマークが書かれたカードのみが使用できるスタンダードレギュレーションを指しています。
https://www.pokemon-card.com/rules/regulation/ 

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