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お弁当のこと。

お弁当について忘れられない思い出がある。

私は中学生だったと思う。
遠足の日の朝、母は寝込んで起き上がれなくて、お弁当を作れなかった。
その頃の私は既にかなり料理が出来るようになっていて、正直お弁当は母が作るよりも自分で作った方が彩りも綺麗で上手だった。

それでも無性に、ただただ悲しくて一人で泣いたのを覚えている。
母が具合が悪くてお弁当を作れないことは仕様がないと思ったし、それで責めたりはしなかった。
でも、ものすごく悲しかったのだ。

子どもにとって「お弁当」は非日常でウキウキワクワクするもの。
だけど、お弁当だったら何でもいいわけじゃなくて、大好きな母が一生懸命作ってくれたことが何よりも嬉しいのだとその時分かった。
自分で作った綺麗なお弁当よりも、私は母が作ってくれたお弁当を持って行きたかった。

ここ数年、異常なキャラ弁ブームで困っている親も多いと思う。
私は元から料理が好きで細かい作業も好きだから楽しんでるけど、基本的にキャラ弁でもそうじゃなくてもどっちでもいいと思っている。
たまに作る派と作らない派の不毛な言い争いを目にしたり、「外注しようかなー」なんていうビックリ発言すら聞こえてくるけど、お弁当は母(父でも可)が作ってくれたということに価値があるのだと思う。
不格好でも、昨日の残り物でも、冷食や出来合いが入っててもいい、親が親なりに我が子を思って一生懸命に手を尽くしたということが子どもにとって一番大事。

そんな私も高校生になって毎日お弁当になると、「何?今日のお弁当。全部茶色!」なんて文句を言って母を怒らせたりするようになるのだけど、母が作ってくれたお弁当がどんなに彩り鮮やかなお弁当よりも鮮明に記憶に残っている。

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