プロレスにおける批判的な考察 2024 「プロレス愛」Ⅱ
1 新日本プロレスの場合
前号で、今のスターダムには「プロレス愛」が欠けている、と述べた。このことは、今の新日本プロレスにも言えるのではないか。
そう・・・親会社は言わずもがな、ブシロードなのだ。
2 アンチ「四天王プロレス」
今や伝説となった四天王プロレス。三沢や川田、小橋、田上が大技・危険技をこれでもかと応酬し合い、カウント2.9のオンパレード。それまでノラリクラリとした純アメリカンスタイルであった全日本プロレスのリング上を一変させ、ファンの支持率をグンと上げた。
ジャイアント馬場でさえも考え方を変え、4人の激闘を褒めたたえ、全日本プロレスのリング上から流血試合や不透明決着を一掃させたほどのレスリングスタイル。わたしはこの四天王プロレスが大っ嫌いだった。
理由はいくつかある。
その最たるものは、大技の発表会になってしまったリング上。じっくりとしたレスリングの攻防が好きなわたしには、受け入れることができなかったのだ。
もうひとつは、危険度が増したスタイルへの反発。ファンは更なる刺激を求め、プロレス自体が残酷ショーとなってしまう不安。
その不安は数年後・・・三沢の悲劇となって現実のものとなってしまったのだが。
今の新日本プロレスは、はじまりは四天王プロレスへのアンチテーゼではないか。“一撃必殺”のフィニッシャーを大切にするスタイル。
四天王プロレスは、後期にはフィニッシャーの存在感が薄れ、蹴りやエルボーバット、頭から落とす技などで決着が付くことが多くなった。今の新日本は違う。“あの選手はあの技が出れば終わり”というスタイルだ。良く言えば、フィニッシュ技を大切にしていることになる。
しかし・・・近年、これが問題になってきていると考える。
3 悪しきパターン化
最大の問題は試合スタイルのパターン化。どの試合もだいたい流れが想像つくようになっている。
例えばオカダカズチカのビッグマッチ。
・序盤はじっくりとしたレスリングの攻防
・だんだん激しくなり、トップロープ上からのエルボード ロップの後にレインメーカーポーズ
・しかし直後のレインメーカーは必ずかわされる
・激しい技の攻防
・お互いグロッキーになったら打撃技の応酬
・最後は開脚式ドライバーからレインメーカー
ざっとこんな感じではないだろうか。
内藤しかり。棚橋しかり。
また、フィニッシャーを大切にするのは良いが、明らかに説得力が無い場合もある。
例えば内藤のデスティーノ。どう考えても大型選手に完璧に決めるのは無理だろう。あれならグロリアとかブルマブランカの方が良いのではないか。
BUSHIのMXも然り。どうしてあの技をかけられた相手が後ろに吹っ飛ぶのかが疑問である。
更に・・・試合の勝ち負け(特にリーグ戦)が雑である。ジェフ・コブのような、どう考えても無敵の強さを持っている選手がビッグマッチで勝たせてもらえない。また、G1などではどの選手にも勝ち・負けが散りばめられ、独走者がいない。不自然。
・・・これらが今の新日本プロレス。どうも「プロレスはこの程度でいいのだ」と考えているとしか思えない。
つまり「プロレス愛」が足りないのだ。
4 危機感
数多い日本プロレス界の盟主となっている新日本プロレス。だからこそ、個々で考えなくてはいけないのではないか。
アントニオ猪木の時代は違っていた。それはいびつな試合で、時に暴動まで起こしたが、いつもドキドキわくわくさせられていた。「だれが勝つのか?」「今度は負けるのでは?」そんな思いで試合を待っていたのだ。
棚橋社長、どうでしょうね?誰よりも「プロレス愛」が深そうな棚橋社長・・・大英断を希望します。
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