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各地のビジターセンターや博物館ならではの情報とは【鹿児島県出水市とツルの話】

こんにちは、ネイチャーエンジニアの亀田です。

今回は鹿児島県を訪れた時の体験談に合わせて「各地のビジターセンターや博物館ならではの情報がある」という話をしたいと思います。

僕は2016年から、平均するとだいたい月に1回くらいは遠征して全国各地で自然観察をしています。

その一番の目的は「現地の環境や動植物を観察し、各地の環境の違いを自身の目で確認すること」。

遠征した時には、現地のフィールドを自身の足で歩いて観察をすることに、できるだけ多くの時間を割くようにしています。

ただ、上記とは別にもう一点、遠征時に行うことがあります。

それは「現地のビジターセンターや博物館を見学すること」。

これは遠征に行ったら必ず巡る、という熱量ではないのですが、気になる施設があったらできるだけ訪れるようにしています。

ある時鹿児島県出水市に遠征した時には、ツルのねぐらのある保護区を散策したあと、「出水市ツル博物館 クレインパークいずみ」を訪れました。

出水市ツル博物館 クレインパークいずみ

最大のツル飛来地・鹿児島県出水市

ツルは、現在はなかなか見ることのできない鳥たちです。

かつては全国で見られる鳥だったようですが、残念ながら今は主に北海道と九州の一部でしか見られなくなってしまいました。

そんな中、鹿児島県の出水平野は多種のツルが越冬のために飛来する地で、冬は1万羽を越えるツルたちがやってきます。

出水市のナベヅル

僕も出水市を訪れた時は、たくさんのツルの声を聴き、姿が見られ、興奮しっぱなしでした。

この地ほど贅沢にツルが見られる場所は、日本では他にありませんからね。

ところが…

この状況は実は「たくさんのツルが見られる!」というポジティブな側面だけではありません。

というのも、ツルが”出水市に一極集中している状況”だからです。

ツルが大量越冬することの問題

特にナベヅルでは、世界の生息数の90%が出水市に飛来するそうです。

ということは、もしこの環境が悪くなったり、この場所で伝染病が蔓延などすれば、ツルの個体数に大きな影響が出てしまいます。

また人間の生活にとっても、ツルの存在は歓迎されるばかりの存在ではありません。

なぜならツルの飛来数が増えると農作物の食害が発生するため、かつて出水市では農家の方々との対立を生んでしまった歴史もあったようです。

ツルは農作物の食害を発生させる側面もある

これらに対し、出水市ではツルに関する様々な取り組みを行っています。

例えば干拓地の「休耕地の借り上げ」を行なって保護区(ツルのねぐらを設置)とし、農家の方々に借り上げ期間中の保障をするようにしました。

保護区では「ツルに対する給餌」をすることで、農作物への被害を減らす対策をしました。

野生動物への給餌は賛否の「否」の方が多いと思いますが(僕自身、環境を考慮しない給餌には肯定的ではありません)、出水市でこうした対策を取らなければ、ツルの希少な越冬地を守ることができなかったかもしれません。

つまり、出水市が集まるツルたちの環境を守り、ツルと人の生活との両立を目指したからこそ、今の形があるのです。

また出水市ではツルの将来的な状況を鑑みて、出水市での集中越冬の状況を軽減するために山口県周南市にツルを移送するなど、越冬地を分散する試みも進められています。

出水市とツルの話については、詳しくは以下で紹介しています↓

現地のビジターセンターや博物館ならではの情報とは

一般的には野生動物への給餌は自然環境にとって「よくないもの」として扱われます。

そのため、今の出水市の活動を”点”で見ると良くないイメージを持ってしまうかもしれません。(SNSでそのような書き込みがされているのを見たこともあります)

ところがこの出水市の事例のように、歴史や背景を知ると実は「落とし所」としてそうする他になかったり、目標とする地点までの「過渡期」であったりすることもあるのです。

このように、多くの活動には背景や理由がありますが、それらを含めて考えると良し悪しの判断も変わるのではないでしょうか。

実際に僕も出水市で情報を得たことで、僕としては「背景を知ることなく給餌等の活動の賛否を語ることはできない」と考えるようになりました。

このような背景や活動の経緯など、ニュースやSNSの情報では、なかなか深く知ることはできません。

これらの情報を得るためには、現地のビジターセンターや博物館を直接訪れ、できればインタビューさせてもらうのが結構有効なのです。(もちろん、必ず有効な情報が得られるわけではないですが)
※クレインパークいずみでは、学芸員の方にお話を伺いました

最後に

この記事を読んでいる方は、生き物や自然が好きな方多いのではないかと多います。

どこか遠出をした時は各地での自然観察をするのはもちろん最高なのですが…

加えて、今回紹介したビジターセンターや博物館のような、その地域ならではの施設に訪れることもオススメですので、ぜひお試しください。

では、また!

以下のブログでは生き物紹介のほか、僕が活動する中で得られた生き物的な学びも紹介しています↓


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