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Nature Remoの生みの親。4年ぶりに帰ってきた大塚が語る、ものづくりへの想いとNatureの今

Nature社員へのインタビューシリーズ、今回はNature Remoの開発者であり、共同創業者でもある大塚。一度はNatureを退職し今年4年ぶりに戻ってきました。Nature Remo誕生の背景にあるものづくりへの想いや、なぜ再びNatureに帰ってきたのか。当時のエピソードから、今に至るまでを聞きました。

大塚雅和 / ソフトウェアエンジニア
慶應義塾大学を卒業後、2000年にパナソニックに入社。2007年より面白法人カヤックにて、「nakamap」(現lobi)「wonderfl」など多くのWebサービスの企画・開発を担当。2013年に同社から独立し、 WiFi機能の付いたオープンソースの赤外線リモコンデバイス「IRKit」を開発・販売。そのノウハウを活用し、 「Nature Remo」を開発。現在は、Remo のアプリの新しい機能開発や、電力のデマンドレスポンスサービスの開発などを手がけている。

ー大塚さんはNatureのFounderのひとりですが、設立当時のことを教えていただけますか

新卒で入社したパナソニックに7年ほど勤めたあと、まだ20名くらいの規模だったカヤックに転職しました。ウェブサイトや、当時は出始めだったスマートフォンアプリをつくっていました。それから7 年ほど勤めた終盤に、IRKitというNature Remoの前身となるハードウェアデバイスの開発をはじめたのですが、その途中で会社を辞めて独立します。独立してしばらくしてIRKitが完成して、まずはAmazonとスイッチサイエンスで販売を開始しました。順調に売上が伸びてきたタイミングでアメリカに渡り現地で仕事をしたり、次のステップを考えていました。そこで塩出さんから、「一緒にやらないか?」と声をかけてもらったのがNatureの始まりですね。

ーカヤック在籍中にIRKitの開発をされていますが、当時カヤックでハードウェアをつくる事業があったんでしょうか?

いえ、当初はカヤックの事業としてやろうと思って僕がつくり始めましたが、カヤックでは他に電気やメカに詳しいエンジニアがいなくシナジーがなかったため、カヤックから事業を買い取って独立しました。

ーそもそも、なぜハードウェアを開発しようと思ったんですか?

カヤックには「つくる人を増やすことが、世の中をよくする」という理念があります。
僕の解釈では、もののつくり方が分かると、使う人やつくる人の気持ちを考えるようになって、思いやりが広がって社会が良くなる、ということだと思っています。例えばガラスのコップのつくり方を知るとコップを粗末にできなくなるし、コップをつくる人を無下にできなくなる。

また、ウェブサイトやスマートフォンアプリをつくるなかで、できることの限界を感じていました。ウェブサイトは四角い画面の中の世界に限られるし、スマートフォンアプリはAppleや Googleが提供するAPIの中に閉じられます。そうすると、だんだん新しい技術を使って新しい体験をつくるのが難しくなるし、他社によって制約が決められているのが面白くない。そこで、新しいハードウェアをつくれば、制約もなく自由度が高くて楽しいものが生まれそうだなと思いました。

ーつくってみようと思ったものが、オープンソースの赤外線リモコンデバイスだったのはなぜですか?

まず、自分が頻繁に触れるものにはこだわりたいと思ったことがひとつです。
例えば、僕らが1日に何度も手にするスマートフォンは、Appleがつくった美しいデバイスの上で、デザイナーがデザインした美しいアプリを使っていますよね。
一方で、快適な生活のために日々操作するエアコンのリモコンは美しくない。これが自分の思う美しい形になったらいいなと思っていました。これは見た目や形だけの話ではなく、必要な時にだけインタラクションすることも大切という意味です。

Nature Remoの前身となる「IRKit」

また、ソフトウェアにはオープンソース化されているものがたくさんありますが、ハードウェアにはそういった概念がほとんどありません。
例えば、洗濯機が壊れて直そうとした時に、ネットで探しても回路図が見つかることはないですよね。そこで、誰でも回路図にアクセスができ、自分で修理ができるリモコンを作ってみたいなと思ったことなどが、IRKit開発に至った背景ですね。

ー日本での販売が軌道に乗ってきたタイミングで、アメリカに渡ったのはどうしてでしょうか?

僕には子どもがいるのですが、子どもが大きくなる前に英語圏に移住して子育てをしたいと思っていました。僕自身、幼少期はロサンゼルスで育ちました。おかげで英語のコミュニケーションに関しては何不自由なく、今でも親に感謝しているので、自分の子どもにもそうした経験をさせてあげたいと思っていました。
あと、英語圏の中でも、アメリカのベイエリアやシリコンバレーで一度は働いていてみたいという憧れがあったので、独立してからずっとアメリカで働く機会をうかがっていました。
その時に、数ヶ月ですがアメリカのベイエリアで働くチャンスが巡ってきたので、迷わず渡米しました。

ー代表の塩出さんとの出会いは、どんな経緯だったんですか?

塩出さんからのコールドメールですね。笑
日本でのIRKitの販売が順調に推移していて、次の一手として新しいハードウェアのモデルをつくるか、アメリカできちんと就職するかを考えていた時に、塩出さんから誘いのメールが来ました。僕が会社を選ぶ軸としては、会社の活動がどう社会をよくするか、そこにちゃんとしたストーリーや想いがあるのかを重視しています。
Natureは、電力の需要側をコントロールすることで、電力を使いやすくし自然由来の発電を増やすことができるというストーリーを持っていて、気候変動が注目されている今、世界をよくすることができる会社だなと思いました。

また、Natureはもともとはアメリカの企業をターゲットにビジネスを展開しようとしていたので、僕の希望にも当てはまっていました。

中国の工場にて、当時の大塚さんと塩出さん

ーIRKitのような製品は当時のアメリカにはあったんですか?

あまりなかったですね。そもそも、日本の家庭にある家電は、テレビやエアコンなど、ほとんど赤外線リモコンで操作する製品ですが、アメリカの家庭では赤外線リモコンで操作するのはせいぜいテレビくらいです。IRKitの市場としては規模が小さいんですよね。

僕らがコントロールしたいと思っていたエアコンは、アメリカでは建物の1カ所に冷暖房装置を設置し、ダクトから各部屋へと冷気や暖気を送るセントラル空調か、ダクト式空調が主流なので、IRKitで制御することはできません。
ただ、家庭に占めるエアコンの使用電力の割合はアメリカも大きいので、赤外線で操作できないならと別のハードウェアを開発して制御しようと思っていました。

ー開発には至らなかったんですか?

プロトタイプを作ってデモはしたんですが、ビジネス的に時間がかかりすぎるなどの課題があり、まずはニーズがあり市場が大きい日本で、コンシューマー向けの事業を伸ばすことに軸足をうつしました。
日本に戻ってからはIRKitの後継となる、Nature Remoの開発に着手しました。2016年にはKickstarterのキャンペーンが成功し、2017年から出荷開始、2018年にはようやくビジネスが軌道に乗ってきました。

ーそのタイミングで大塚さんはNatureを退職されます。どうしてでしょうか?

やはり子どもを英語圏で育てたいという思いは変わっていませんでした。 当時、上の子どもが9 歳になり、きちんと英語を聞きとれる耳を育てるには、そろそろタイムリミットだなと感じていました。
そんな時、ちょうどエストニアの知り合いが、現地採用の話を持ちかけてくれました。
Nature Remoは発売までが山場でしたが、無事に発売を開始し後任のCTOや、今も活躍してくれているエンジニアの北原さんが入社してくれたので、僕はエストニアにいく決心をし、Natureを去りました。

ーそれから約4年が経ち、今再びNatureに戻ってきたのはどうしてでしょうか?

エストニアに行ってからずっと同じ会社で働いていましたが、そろそろ次に進もうと就職先を探し始めた時に、日本の会社でもリモートで働けるのでは?との考えがよぎり、Natureが浮かびました。

Natureを辞めた時は、まだ今のようにリモートワークが一般的ではなかったのに加え、エンジニア数人のハードウェアスタートアップをリモートで進めるのは無理があったため、海外に移住するのであれば会社を辞めざるを得ませんでした。
しかし、コロナで状況が一変し、どこからでも働くことができる時代になりましたし、Natureも成長していてリモートでも十分に働ける土壌が整っていました。
何よりも、僕がいた頃からNatureのミッションは変わることなく、ミッション実現に向けて着実にステップを踏んできている状態でしたので、僕が戻ってやるべきことが明確にイメージできました。

ー4 年ぶりに戻ってみて、今のNatureはどうですか?

すごく良い文化が醸成されていて、うまく成長をしているなと思いました。
例えば、Slackのチャンネルは基本的には全部パブリックで、Notionにはみんなのストックが溜まっていく。透明性が高くフラットな組織だと思っています。

また、個人的にはCSと開発の距離が近く、密に結びついているのもとても良いと思っています。お客さんとの距離の近さは良いものをつくるためにすごく大切だと思っています。僕は自分が作ったサービスは、自分自身でお客さんからの問い合わせ対応もしていました。
Natureでは専門のCSチームがいて、CSチームの梶さんや北村さんが開発チームとの関わり方がとてもうまいので、安心してサポートを任せられますし、お互いがフィードバックをし合えて良い環境がつくれています。

ー海外からのリモートワークで、コミュニケーション面など不自由なことはないですか?

メンバーが会議時間を現地時間に合わせて工夫してくれているので、コミュニケーションで不自由なことはありません。すごく助かっています。ただ、直接会うことも大切だと思っているので、日本に帰った時はみんなと会って顔を合わせるようにしています。

大塚さん帰国時には、みんなで風力発電事業の見学へ

-今のNatureの課題はなんでしょうか?

やはり人材不足ですね。Remoの次の軸となるものを開発しようとした時に、エンジニアとプロダクトの仕様を決めて、進行してくれるプロジェクトマネージャーやプロジェクトオーナーのような役割の人が欲しいです。
また、エンジニアの力も必要です。Natureでは、一般的なサーバーサイドの開発と違って、スマートホームから派生したアイデアが社会貢献に繋がっていきます。また、ビジネスサイドには電力の技術にすごく詳しい人たちがいるので、その深いドメイン知識を活かしたB2Bのプロダクトの開発も進んでいます。

-大塚さんからみて、Natureで働く魅力はなんでしょうか?

社会貢献ができる会社に行きたいと思った時に、ソフトウェアエンジニアとして実現できる会社はそんなに多くはないと思います。自分の仕事が世の中のためになるという意味で、Nature は数少ない良い候補だと思っています。

バックエンドエンジニアや、ファームウェア、ハードウェア、電力会社出身のビジネスサイドの人たちなど、直接業務で関わる以外のメンバーとも近い距離で働けるので、そういった刺激と学びがある環境が楽しめる人にはピッタリだと思います。

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インタビュー・編集 :Saori Abe
文         :Megumi Mitsuya

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