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色鉛筆画ワークショップ@鳥海アートフェス

ノーチのしっぽ研究所 ¥0sukeです。
(↑所属名がノーチのしっぽ研究所で個人名が¥0suke(読みはヨースケ)。本名の時もあるので名前が多くて面倒になってきている)

2023年10月14日、ふなばし三番瀬環境学習館で行われた「鳥と海の生きものアートフェスティバル」にて、色鉛筆アートのワークショップ講師を務めました。

ロゴに「とり」と「うみ」が隠れてるのめっちゃいい…学習館スタッフ様のデザインだそうです
僕は14日のみの出展でした

鳥海アートフェスは過去2回参加させていただきましたが、どちらも物販ブース出展でした。
今回は子供たち向けにアートを学ぶワークショップも開催するということで、その講師として声を掛けていただいたのです。

講師を頼まれるくらいになったかぁ〜
僕も大人になったなぁ〜

なんて悦に浸るのも良いですが、その実、次々と浮かぶ不安要素に奥歯をガタガタ鳴らしていました。

恐ろしいのは「子供向け」ということです。
色鉛筆画のワークショップ自体は何度か経験がありますが、それは全て大人向けに行ったもの。

2021.7個展で開催したワークショップ
画材メーカーのオリオンさん主催のオンラインワークショップ

大人はたっぷり時間をとっても集中して作業できるし、口での説明も熱心に聞いてくださいます。
ある程度色鉛筆の扱いも慣れているので、基本的な説明も不要。

しかし、子供相手となると、そうはいきません。
ふなばし三番瀬環境学習館に来る子供たちは、未就学児から中学生まで、年齢層も様々。
色鉛筆を使ったことがない子はほぼいないであろうものの、学校の授業で詳しく色鉛筆画の技法は習わないと思います。

それに、色鉛筆画は時間がかかるのも不安要素です。
細い線しか描けない色鉛筆で広い面を塗りつぶすのは、大人でも結構時間がかかるもの。
ワークショップの1時間の枠で、形を取って色を塗って、作品を仕上げようとすると、急ぎ足になってしまいそうです。

打合せ

さて、どうしようかな…

幸い、学習館スタッフの方とは学生時代から交流があり、気軽に相談できる間柄なので(いつも懇意にしていただけて本当に感謝…)、不安に感じていることを全て打ち明けることに。
お打合せの機会をいただけることになりました。

打合せで決めたこと
・講師側で用意するもの
  →画材、教材
・学習館様でご用意いただくもの
  →モチーフ
・持ち帰りOKなもの
  →色鉛筆、紙、教材
・子供向けに適したWSと教材の内容詳細
  →三原色画法

親身に相談に乗っていただき、みるみるモヤモヤは晴れ、不確定事項はトントン拍子で決まっていきました。
担当スタッフ様のフットワークの軽さに何度も助けていただきました。
即答できない質問にはすぐに他のスタッフ様へ相談して回答いただいたり、モチーフを採集して写真を送っていただいたりと、至れり尽くせり…

なんとか活路が見えてきた感じです。

色鉛筆の選定

打合せの結果、三原色の色鉛筆で、三番瀬で見られる植物描くというワークショップ内容に決定しました。

三原色画法を選んだ理由は以下の通り。

  • 色鉛筆で混色できることはあまり知られていないため、子供たちに学びを提供できる

  • たくさんの色セットから最適な色鉛筆を選ぶという、色選択の難しさが減る

  • 色鉛筆の本数が減らすことで、教材キット価格を下げられる

問題なのは、混色で欲しい色を作る難しさが、子供たちにとってどのくらいストレスになりうるか…

なるべく子供でも混色のしやすい色鉛筆を低価格で用意したかったため、過去のワークショップでも使用した色鉛筆、トンボ鉛筆の「色辞典」を使うことにしました。

色辞典はその名の通り、本の辞典のようなパッケージと素敵な色名が魅力のシリーズです。
全100色あるので、今回の三原色技法に適した色も選びやすく、価格も1本100円程度とお手頃。
芯が硬めの割に発色と伸びもよく、子供の力でも筆圧をコントロールしやすいと考えました。

三原色画法というからには、なるべく混色しても色が濁らないようにしたいため、色の三原色(印刷のインクでいうCMYK)に近い色鉛筆を取り寄せてみました。

取り寄せた色鉛筆を使って、混色の実験をします。
赤、青、黄、それぞれ2〜3色ずつの候補を組合せて、最も三原色の混ざり方に近いものを選びます。

ネット通販の画面上の色見本と印象がずいぶん違ったりして、なかなか苦労しました。

最終的に選んだのは以下の3色。

  • V1 チェリー

  • V3 蒲公英(たんぽぽ)

  • V7 川蝉色(かわせみいろ)

お手本を描く

ワークショップに使う色鉛筆は決まったものの、果たして子供たちにとって三原色画法はどのくらいの難易度になるのやら。

想像だけであれこれ心配してもしょうがないので、ひとまずお手本を描いてみます。

ふなばし三番瀬環境学習館HP 三番瀬図鑑より

モチーフはイヌビワ。
三番瀬で秋頃に普通に見られる植物の中で、比較的色味があり、かつ子供たちが手に触れても怪我やかぶれなどの心配が少ないという理由で選定いただきました。

スタッフ様から写真を御提供いただき、早速描いてみたのがこちら。

三原色画法のワークショップを企画しておきながら、僕自身も三原色縛りで描いたことは数えるくらいしか無かったのですが、なんとかなりましたね。

所要時間は20分くらい。
僕は色鉛筆の扱いには慣れている方ですし、なにより大人なので、子供たちは60分くらいかかるだろうという見込みです。

教材プリントを作ろうと思い、途中過程もたくさん撮りました。

子供の気持ちになって描いてみてわかったのですが、やはり筆圧のコントロールは難易度が高いですね。
大人の僕は無意識のうちに色鉛筆の持ち方を変え、芯先にかかる力を巧みにコントロールできるようですが、子供の気持ちになると「そんな持ち方知らんわ!」も思えてきました。

色鉛筆の持ち方、グラデーションの作り方、色の混ぜ方など、図工の授業の「さわり」の部分のようなパートが必要そうです。

教材をつくる

勤め人としての僕はDTP屋なので、資料作成のレイアウト作業自体は、いつも使っているAdobe Illustratorを使えばちょちょいのちょいです。

内容を考えて子供たちにもわかりやすい文章を書くのは骨ですが…

最近出番がなかったMacBookを開き、画面とにらめっこ。
とりあえず撮影した写真を手順通りに並べて、どうやって説明しようかな〜と考えます。

まずは使うものの確認から。
講師側の配り忘れ防止の意味もありますが…
子供たちに一つ一つの道具に着目させ、どの道具をどんな風に使うのかな〜と想像してもらうために、大事なステップです。
色鉛筆や紙はわかるけど、この芯が入ってないシャーペンは何に使うんだ?みたいに。
ワークショップ当日まで学習館に赴けず、モチーフのイヌビワ実物を用意できなかったのが残念でした。

色鉛筆の基礎の基礎の練習。
子供は特にぎざぎざと直線的に塗ってしまいがちですが、力が入りすぎてしまったり、ムラになりやすかったりするため、ぐるぐる塗りを推奨してみました。

鉛筆を長く持ってさらさら塗ってみたり、グラデーションを作ったりしてみて、筆圧のコントロール方法を練習してもらいます。

シャーペンで紙に彫り跡をつける技法も色鉛筆画にとってはかなりキモなので、ここで練習してもらうことにしました。

次に混色の練習。

自分でもこうやって真面目に三原色を混色してみたことなかったので、意外と綺麗に混ざるもんだなと関心しました。

丸を3つ重ねる形を描くのが難しいかなとも思い、書き順をスモールステップで示してみたり。
我ながら親切だ。

印刷屋なのでCMYKの話もしておきたくなり、無理やりねじ込みました。
世の中の印刷物のほとんどはたった4色だけで色んな色を作ってるんだよ!という感動が、子供たちにどこまで伝わるかな〜

下描き。

ここでいちばん言いたかったのは、1発で描けなくていいんだよ!ということ。
不慣れだと端っこから輪郭を描いていきたくなってしまいがちですが、プロの漫画家やイラストレーターですら、一発描きできる人は稀です(というかできる必要がない)。

鉛筆で下描きすると色が混ざって汚くなるし、かといって色鉛筆は消しゴムで消えない。
上から重ねて塗るのでどうせ目立たなくなる。
それなら気に入る形がかけるまで何度描きもしちゃおう!と本番で言うセリフを考えながら。

このあたりでかなりルビふり作業が面倒になってきました。
今回作業に使ったAdobe Illustrator(イラレ)は、図形の描画が得意なデザインソフト。
文字のレイアウトには普通、Adobe InDesignという組版用ソフトを使うのですが、個人ではライセンス未購入なのでイラレでゴリ押し。
InDesignならルビ振りも自動なのに〜とボヤキながら、文字を打ち直して縮小配置してました。
自動でルビ振りしてくれるスクリプトとかないのかしら…
縦中横ゴリ押しとか別打ちフリガナを配置とかじゃなく、漢字変換前のルビが勝手に漢字の上に乗るようなやつ…(知ってる人教えて)

シャーペンで葉脈を彫ります。
引いた線が見えず手応えがない工程ですが、この伏線が後で回収される楽しみのための我慢です。

いよいよ本塗り。
色鉛筆は強い色から塗っていかないと紙の目が埋まってテカテカになってしまい、色が乗りにくくなってしまうためです。
黄色が入った途端に葉っぱが緑に色づいていく感動を味わってもらうのが楽しみです。

強い色から塗るのが鉄則ですが、黒は強すぎてコントロールが難しいため、あえて色が乗りにくい最後に入れることにしました。
ちょっと黒を入れるだけで絵全体が引き締まるので、一気に「完成した感じ」がでます。

ワークシートの全貌はこんな感じになりました。
本番前日のギリギリまで作っていたのですが、終わってから誤字に気づいたり、時間があればもっと詰められたな〜と思ったり。

あくまでワークシートは説明が追いつかなかった時親御さんと一緒に見る補助用で、ワークショップ本番では口頭での説明がメインになると思うので、まあこのくらいで及第点とするか…という気持ちで生きています。

ワークショップの60分で終わらなかったら、おうちに帰ったあとに読んで復習する用ということで。

(※参加費は画材代のみに設定しました。学習館様には講師側のキットの所有権保持を許可いただいたため、ワークシートの内容をネット上で公開しても問題ないと判断しました。)

設営

ドキドキで迎えた当日。

今日まで準備に手を尽くしてきました。

学習館スタッフの方々にたくさんお手数をお掛けしてしまいましたが、それでも子供たちに楽しでもらえるか不安で、小学校教師の友人にアドバイスをもらったりもしました。
(親身に相談に乗ってくれて本当にありがとう…SpecialThanks…)

当日の朝になってしまえば、もう自信を持って会場へ向かうしかありません。
僕は今日、先生と呼ばれる立場ですから。
不安なんぞ、露ほども顔に出さずやってやるぞ!

電車に乗り遅れるトラブルもありましたが、なんとか決戦の地(?)、ふなばし三番瀬環境学習館に到着。
出展作家さんの中でいちばん遅くに到着したので、大急ぎでブース設営しました。

少しだけ物販も用意しました。
せっかくの教育的機会なので、子供向けではないのですが博ふぇすで作ったガクタメ(フリーペーパー)も持っていきました。
ワークショップのサインは空き時間にその場で描いたものです。

本番

肝心のワークショップ中の出来事についてもたくさん書いておきたいのですが、写真を撮っている余裕がなかったため、あまりお見せできるものがなく…

手短に印象深かったことだけ書きます。

〇子供の観察眼すごすぎ

参加してくださったのは、小学1年生〜中学生まで、様々な年齢層の子供たちでした。
皆さんふなばし三番瀬環境学習に通うだけあって、観察眼に優れ、大人もびっくりするほどの集中力で描いてくれました。

意外にもみんな筆圧のコントロールや混色は上手にでき、始めは苦戦していた子も少し練習したらすぐに習得していました。
子供の吸収力は本当にすさまじい…

〇エリートキッズ

自由研究で骨格標本作ってるボーイがスケッチを見せてくれたり、クラゲガールはクラゲの学名まで言えたり。
学生時代に特別展スタッフのバイトした時も思いましたが、すごいな三番瀬…
思わず子供たちに「日本の未来は明るいですね」と言ってしまいました。

〇複数の子に教えるのムズすぎ

難しかったのは、4組いっぺんに教えるので、一人一人のペースに合わせられなかったこと。
目の前で塗り方を実演するにも、それぞれの子の前まで回って説明しなければならず、ちょっと苦戦している子がいれば付きっきりになってしまう…

学習館スタッフ様が機転を利かせてホワイトボードを出してくださり、絵で説明できそうなところは大きく板書したりもしましたが、教えるというのは本当に難しいものです。
これを1クラス分やっている学校の先生は本当にすごい…

〇パパママもハマりがち

試し書きの紙を多めに用意したため、一緒に楽しくお絵描きしている親子も多く、微笑ましい光景でした。
親子で同じモチーフを描いて比べっこすると、僕一人で教えるよりもスムーズに描き方を理解できるようで、学びの時間としても良い機会になったんじゃないかなと思います。

付き添いのパパママの方が夢中になってしまったりして、男の子の隣でお父さんが「○○くんちょっと青貸して!」と言っていたのにはウケました。

〇他の出展者さんとの交流

他の出展作家さんともゆっくりお話できて、本当に楽しい1日となりました。

今回の出展では、ワークショップ以外は自由時間も多く、久しぶりの僕一人での出展で話し相手が欲しかったこともあって、普段とは違った感じでゆっくり他の作家さんとお話できました。

いろんな方とお話すると「みんなすごいな頑張ってるな」と思ってモチベが上がるので、家にこもって描いてるだけじゃダメだな〜と再認識。

先輩作家さんたちのブース設営やワークショップ中の立ち回りも大変勉強になりました。

僕は一世一代の大講義したるわ!くらいの意気込みだったため、かなり力みが入り空回りがちでしたが、ワークショップ慣れしている作家さんは効率よく回していて、さっすが〜!という感じでした。

〇ウォールアート

もはやワークショップと関係ないですが、これが最後。
ワークショップ会場の部屋のすぐ前で、ガラスにクレヨンで許可されたラクガキをするという、体操楽しそうなイベントを開催していました。
出展者は特別に参加させていただけることになりました。
ツルツルしたガラス面に絵を描くという体験が面白く、ワークショップ開始時間ギリギリまで夢中で描いてしまいました。

いやー楽しかった。
イベントは定期的に出ておくものですね。
忘れたくないのでたくさん書いてしまいました。

ふなばし三番瀬環境学習館、常設も面白いスポットなので、近隣にお住まいの方は是非遊びに行ってください。

それではまた。

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