見出し画像

ナビタイムジャパンで導入済みの路線を点と線で表示して考えたこと

🎄この記事は、NAVITIME JAPAN Advent Calendar 2023の3日目の記事です


こんにちは、YaaSです。
ナビタイムジャパンのMaaS事業部に所属していて、渉外業務や社内技術部門との各種案件の調整を担当しています。
ちなみに、この記事が公開された今日、めでたく44歳になりました(2年前にもこの日に記事を書いていたので、恒例になりつつあります…)。


はじめに

MaaSの仕事をしている中で「ナビタイムジャパンのサービスでサポートしている全国の路線を俯瞰的に眺めてみたい」と思い付いついた、というのがきっかけです。

駅/バス停/空港/港を全部出す

ナビタイムジャパンで所有している駅/バス停/空港/港は、すべて緯度経度の情報が入っています。
まずはそれらの位置をすべて表示してみることに。

駅/バス停/空港/港全部出してみた(縮尺 1:3600000)

全部で26万か所以上あり、これを表示するだけで北は北海道から南は南西諸島まで地形が見えてきました。あらためて、路線バス/フェリー/コミュニティバス/高速バスのカバー率100%を達成したことを実感できます。

路線を表示してみよう

全国ありとあらゆる場所に駅やバス停があることはわかったものの、どこに移動できるか知りたいですよね。そこで、路線を描いてみることにしました。

路線を表示してみた(縮尺 1:3600000)

日本の形…ぽくも見えるけど、なんかぼやけているような…。では、移動手段を考慮して、まずは空路以外の鉄道/バス/航路に分解してみましょう。

線だけでも形が見えてきた(縮尺 1:3600000)

鉄道は黒線(新幹線は少し太め)、路線バスは赤線、航路は青線にしてみました。鉄道は実際の線路にあわせて形状線データを整備したものを表示しています。
ちなみに、形状線のデータは経路検索した時の結果の表示に使用しています。

表参道→代官山の検索例 ©ゼンリン

路線バスは系統数の多さや更新頻度の関係から形状線は整備していませんので、停留所間を直線で繋いでいます。遠目に見れば違和感は少なめですね。
航路は港を直線で結ぶと陸地を通過してしまうこともあるので、形状線データを整備して、海岸を沿うような形としています。

さて、高速バスですが、路線バスと同じように停留所間を直線で繋ぐと…

若干作画崩壊感が漂う(縮尺 1/3600000)

東京を出たら次は大阪までノンストップ…というように、停留所間が長くなるため、そのまま表示するとやはり違和感が。

全国分の高速バスのネットワーク。想像以上にきれい (縮尺 1:3600000) ©ゼンリン

そこで、停留所間を車ルートで検索し、そのルートの形状で代用して違和感を少しでも減らす工夫をしてみました。

最後に空路をうすーく表示することで完成。本当に日本中どこへでも移動できるんだ…。

これが全国の公共交通網です!(縮尺 1:3600000) ©ゼンリン

点と線だけで都市を眺めてみる

ぐっと拡大してみましょう。まずは東京。

山手線中心に描画(縮尺 1:100000) (c)ゼンリン

鉄道(黒)/バス(赤・緑)/航路(青)だけに絞り、駅やバス停を点でわかりやすくしてみました。
縦長の形が特徴のある山手線を中心に、郊外に向けて全方位に張り巡らされる鉄道。その鉄道を補完するようにバスがまさに網の目のように走っています。
山手線の東側に並行している航路は隅田川から東京湾を運航する水上バス。浅草やお台場海浜公園、豊洲などの船着場に寄港しています。

船から撮影したレインボーブリッジ。鉄道/バスいずれにとっても大事な橋。

一つの都市にこれだけ公共交通ネットワークが充実しているわけですから、どこへでも行けそうに思えるのと同時に「目的地までどれに乗ればいいんだ?」という迷路に迷い込んだような錯覚にもなってしまいます。だからこそ、経路検索のサービスは大事だなぁ、と、作る側としても、使う側としても思います。

では、次の図はどこの都市か、まずは形状で考えてみてください(北が上です)。

なにやら特徴的な鉄道がありますね (縮尺 1:100000) ©ゼンリン

中央付近を南北に縦貫しているのは新幹線。これを境に西側はバス路線が充実しているように見えますね。一方で東側の鉄道は2023年8月に開業したばかりだそうです。↓のような車両が走っているようですよ。

黄色い路面電車かな?

正解は「宇都宮」でした。この路面電車の愛称はライトライン。夏になると雷日数が多く、「雷都」というニックネームもある宇都宮に合わせているんですね。2023年に注目された公共交通機関の一つです。

餃子でおなじみ宇都宮 (縮尺 1:100000) ©ゼンリン

次の都市を見てみましょう。もっと情報量を減らして、駅(黒)/バス停(赤)/空港(星型)だけ表示しました。どこかわかりますか?

もはや星空 (縮尺 1:100000)

図の中心付近に並ぶ、間隔の短い駅間と長方形のような形がヒントになりそうですね。バス停や駅も格子状に配置されているような気がします。
この都市の北側には空港もあるようです。

市電と街並み(横断歩道から撮影)

正解は「札幌」。間隔の短い駅の正体は路面電車でした。路線と地図を合わせてみてみると、バス路線同士が直角に交わる箇所が多いですね。明治以来の開拓で碁盤の目のように作られた街並み。地下鉄や路面電車、バスの路線からもその形状が浮かんできます。

札幌ならではの格子状の区画 (縮尺 1:100000) ©ゼンリン

ちなみに、このnoteを書く前、宇都宮と札幌のクイズを当社の社員にノーヒントで出題しました…が、どちらも直後に回答が来ました。そのときは路面電車が走ってるなんて一言も言わなかったのですが、わかる人にはすごく特徴を感じるようです。そんな地図を読むプロに囲まれて仕事ができるのも当社の特徴かもしれません。

さらにクイズ

路面電車があるとすぐわかってしまうようですので、少し難易度をあげました。これから2つの図を出しますが、いずれも空港が存在します。その空港名は何でしょうか?
答えは書きませんが、どこかにヒントを書いておきます。

[Q1]社員の正解は1名でした (縮尺 1:100000)
[Q2]日本百名山や大きな湖があるらしいです (縮尺 1:100000)

まとめ

以前から、日本国内なら公共交通機関でどこへでも行ける、と感じていましたが、それを今回データを通して改めて実感することができました。
一方で、2024年問題が公共交通機関にも押し寄せ、残念ながら減便、場合によっては路線を廃止せざるを得ない現実もあります。

ライドシェアにすれば解決するか?と言えば、私はそうは思いません。決められた場所、時間、ルートを走る公共交通機関。何よりも「移動が保障」されているんです。バス停がそこからなくなるということは、その近隣の移動はすべて自力で行わなければならない、ということになります。

今までナビタイムジャパンで蓄積してきたこれらのデータを駆使し、日本全国行きたい場所へは公共交通機関でどこへでも繋がっているんですよ、という価値観を経路検索を通じて提供できればと考えています。
身近で便利。そう気づいていただくことで、公共交通機関を使う人の増加、そして「やっぱりバスも鉄道も航路も必要だよね」という価値観が多くの人々に生まれていくことを願っております。

この街では数多くの鉄道とバスがみんなの移動を支えています

この記事が参加している募集

やってみた