読書感想文『キュレーターの殺人』

M・W・クレイヴンの、ワシントンポーシリーズ3作目。

今回は、気になったところをKindleでマーキングしながら読んでみた。正確にいうと、いつもポイントになるところはマーキングしていたが、今回は「実は重要かも」と思う疑惑の箇所にもマーキングした。

いつも、もしかしてこれが伏線!?と思いながら読んで、あたっていても違っていても、どこだったっけ…となってしまうので。

結果、私がメモった箇所はほとんど重要じゃなかった。
というか、殺害方法に絡むポイントにはなっていても、殺害動機とか、犯人につながるところは全然おさえられていなかった。

首謀者に目星がついたのは後半も後半、92%のところだった(Kindleで読んでいるので、単行本で何ページに当たるのか分からない)。
つまり被害者の性分を知っていると分かった箇所だった。

ここから下は、完全にネタバレになるので、まだ未読でこれから読もうとしている人は避けてほしい。
気になった点を書いてみる。

まず、キュレーターが指を2本ずつ切断した理由について、改めて考えてみたい。
これは首謀者側の動機には関係なかったわけだが、つまり「指2本を殺人前と後に切断することで、(解剖の結果)死んでいることを警察に分からせる」というのが目的?
遺体を発見させればいいじゃんという話になるが、これは手術の練習をするためにお腹に傷が残るから、それを隠すために見せるわけにはいかない?それだけじゃないよな…
→読み返してみたら、ブラックスワンチャレンジの5つ目の課題が「赤の他人を殺して、その一部を目立つところに置け」だった。
つまり、チャレンジの一環に見えるようにしたわけか。
もしロバートとローナが4つ目のチャレンジでやめず、全く関係ない人を殺していたらどうなってたんだろう?
最後で「フリン警部が捜査に関わってほしかった」「アトキンソンを知ったのは偶然」「計画を変更するのはいつものことだ」「いずれにしてもフリンを島に呼び寄せる方法をなんとかして考え出したと思う」と言っている。

つまり、
・フリン警部を呼び寄せるための島は、最初から用意していた
・ブラックスワンチャレンジ(アメリカではホワイトエレファントチャレンジ)を用いたのは、身代わりを立てるため
・手術の練習をすることはあらかじめ決めていたと思われる
・グラハム(キュレーター)が女性で手術練習をし指を切断しても、ロバートとローナが4つめの指令を守っても、同様に「体の一部が見つかった」という事実になる。警察は「ブラックスワンチャレンジを実行した人が複数人いる」と判断するはず。だからグラハムはこの司令を出した
・アトキンソンに出会って計画を変更。女性2人を、陪審員の中の2人に決定
※この時点で、ロバートとローナが第4の指令に従わなかったことは分かっているので、無関係の殺人が起きてアトキンソンにたどり着けなくなることはない
・レベッカの殺人現場にだけ手がかり(凧)を残し、ロバートとローナにたどり着かせ、ブラックスワンチャレンジの存在を示す
・男性を殺す予定は元々はなかったが、アトキンソンに導くために殺した。手術しないので、遺体は部屋に置いたままになっている(重くて運べなかっただけかも)。
こういうことだろうか?順番は前後するものもあるだろうが。

被害者が目覚めてから指を切断した理由も気になったが、以下だと推測した。
麻酔→手術の後、目覚めてもらわないといけない(フリンは殺さず子供だけ連れ去る計画)。だから、目覚めるまで待った。その後指を切り、首を絞めて殺し、もう1本指を切る。
ただ、アマンダ・シンプソンは麻酔が早く切れてしまったから手術中に失血死させたと言ってるんだよな〜…動脈を切って、急いで指を切って、死んでからもう1本切ったのかな?

ちなみに麻酔を使ったことは、エステル・ドイルが最新のLCMSという分析をしてわかったから、グラハムはそこまで気づかれるとは思っていなかったかもしれない。女性だけ麻酔を使ったというのがバレたら、フリン警部が最終的なターゲットだと気づかれるリスクが上がってしまうから。

それから、指の切断方法が3人とも違ったことについて。これは、犯人が複数人いると思わせるためだろうか?
ブラックスワンチャレンジで実行犯になるのは複数人いてもおかしくないし、そのほうが自分が真犯人だとバレる確率が低くなる。だからわざと別々の方法で切断した。

ミステリー部分の気になるところはこんな感じだろうか。
やっぱり読んだ後にちゃんと自分なりに検討するのは大事ですね。このnoteを書いていなかったら、こんなに細かくは考えなかったと思う。

あと今回仕事の繁忙期と重なって、少し読み終えるのに時間がかかってしまったので、前半を何度も復習しなきゃいけなかった。
できれば一気に読んだしまった方がスムーズだな〜と感じました。

最後に、推理部分とは関係ないけど、心に残ったシーンを2つ載せます(これもネタバレ)。

ひとつめ。
フリンが入院している病院で、ゾーイが「殺してちょうだい。分かった、ポー?こんなことをした人間を見つけたら、絶対に殺して」と言います。このシーンで私は泣きました。
その後ポーは、直接手にはかけていないが、ベランダから落ちそうなジェシカを見殺しにする。
つまりゾーイからの殺して、という依頼を受け入れたともとらえられる。
ゾーイに言われたからではなく、彼にとってもフリンが大事な存在で、今後も彼女と子供を脅かす可能性があるジェシカを許せなかったんだと思います。
この後どうするか気になりますが、おそらく犯人が姉だということは伝えるでしょうね。隠しきれないはずなので。いや、言わないのかな?容疑者として上がっている、小児性愛者で捕まった男の娘で、宝くじが当たった人を犯人に仕立て上げるのかな?フリンの心を守るために。
でもそうすると冤罪になるから、、うーん、でも容疑が晴れればいいのか。

ポーは、最後ジェシカの家からこっそり帰ろうとしてますけど、明らかに事故死ではないわけだし(グラスを投げたりピッケルを持ってベランダに出て落ちそうになってるわけだから)、絶対誰か来たってことはバレる気がするけどなぁ…酔ってるからおかしくなってたってことになるのかな?もしくは空き巣と争ったとか?

ジェシカの死は事故、キュレーターを雇った首謀者は不明、で幕を閉じることになるのかな…
気になる。おそらく次回作で語られると思うので、楽しみにしておきます。もうイギリスでは出てるみたいですね。
英語版買ってみようかな…?(絶対読めない)

ふたつめ。
ポーとティリーがエステルドイルの解剖の見学に行き、帰りぎわ、ポーに「警戒しすぎだ」と言われたドイルが「語られることを許さぬ秘密というものがあるのよ」と返す。
これはエドガー・アラン・ポーの『群衆の人』からの引用らしいが、本文では意味が説明されない。
もしかしてドイル、ポーのこと好きなのかな?それが秘密ってこと?今後が気になるところ。
『群衆の人』も読まなきゃいけなくなった。

でも、そろそろ日本のミステリーが恋しくなってきたので、次は御手洗潔シリーズか、館シリーズの続きを読もうと思います。

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