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天井のない監獄から、今や地獄の様相を呈しているガザの日常

日本で随一のユニバーサルサービス(作品全てに音声ガイドと字幕付きで上映)の施設を誇る、シネマチュプキ・田端で、『ガザ・サーフ・クラブ』を鑑賞し、2月16日(金)の終演後には、配給元の「ユニバーサルピープル」代表の関根健次さんのアフタートークがありました。

チュプキでは、2月27日まで上映されますので、是非とも鑑賞されることをオススメしますね。

『ガザ・サーフ・クラブ』
2月15日(木)~27日(火) 
上映:14時45分~16時17分 
*21日(水)休映
(2016年製作/ドイツ/87分/ドキュメンタリー) 
 ※日本語字幕・音声ガイドあり

撮影は、2016年でしたので、既に、イスラエルとは戦争状態ではありましたし、爆撃による死傷者も発生していましたが、一時的に停戦合意に達したり、現状よりは遥かにマシな状況下で撮影されたドキュメンタリー映画でした。

字幕付きで、さらに、音声ガイドもイヤホンで聴けたので、複雑な登場人物の交友関係や、情景描写もよくわかり、晴眼者にとっても、このサービスを受けて鑑賞できるのは、非常に嬉しいですね。

さて、上映当時のメモ書きで、印象に残ったシーンを再現してみましょう。

※※※

主人公は、ガザの海岸でサーフィンをするパレスチナ人の青年たち

はにかみ屋のイブラヒームと、
強気なマフムード(笑)

イブラヒームがサーフボードを
運ぶピックアップトラックは、
三菱製のオシャレなタイプ
ヘアスタイルがリーゼントで、
ちょっとカッコを付けている

一方、硬派を気取るマフムードが
サーフボードを運ぶトラックには
トヨタのロゴ

日本車に乗るのがステイタス
らしい

イブラヒームは、婚活のようなことをしていて、インターネットを通じて、カタールに住む女性とコミュニケーションを取って、結婚を前提に付き合ってほしいとアピールしたが返事を渋られる

後日、彼女からようやく返事が来たが、イブラヒームがガザに住んでいることがネックになって、断りの連絡が来たと、寂しそうに取材者に話す

クルアーンという言葉が出てきたが、昔、コーランと呼ばれていたが、最近は、こちらの言い方が主流か?

実は、ガザの海岸でサーフィン
をやることは、大人たちからは白い目で見られている。

サーフィン以外にも、ダンスパーティーを催し、ダンスホールにはレゲエが流れる

一方、幼い時は、海岸で水泳やサーフィンもやっていた女性たちは、少女になると水泳を止めさせられてしまう。

あんなに泳ぎが上手かったのに

女性たちの憧れの地はエジプト
ガザを抜け出してエジプトに
行くことが彼女たちの夢

イブラヒームは、同じくガザを抜け出して、ハワイのオアフ島で本格的にサーフィンをやりたい

インターネットで、オアフ島に住むマシューと頻繁に交流しながら、向こうの様子を尋ねる

マシューは、なまった英語で話す
ハワイ在住の白人男性
マシューはスキンヘッド

ハマスの緑色
ガザの緑色?
と、緑色を話題に話す
イブラヒームと
マシュー
緑色はイスラームの
象徴らしい

ガザでの最年長のサーファーは、
普段は漁師をして
生計を立てている
アブー・ジャイヤブ42歳

戦争中は子供よりボードが
心配だったと話すジャイヤブ

子供はまた生まれるが、
(言いたいことは理解できるが、ちょっと怖い考え方^^;)
サーフボードはガザでは
二度と手に入らない

一方、イブラヒームは、
難航していたガザからの
出国の希望がマシューの
お陰で叶い、
検問所を合法的に通って
オアフ島へと旅立つ

ハワイの先住民男性とのシーン
オアフ島には、白人や日系人や
先住民が暮らす
ごった煮の社会でもある

先住民の言葉が紹介され
“イケ”はこころの目

こぶしを合わせる
フィストバンプが
ハワイの挨拶

ここも、いろいろと問題を
抱えてはいるが、
ガザに比べたら遥かに
人々が生き生きと暮らしている
と語るイブラヒーム

シーンは、再びガザの海岸に
戻り、年配のサーファー、
サバーフの父親は
女性に理解がある

自分の次女をサーフボードに
乗せてモーターボートで引っ張る

それを羨ましそうに海岸から
見つめる同じ年齢の少女たち

次女サバーフは肌を露出せずに
ウェットスーツに身を包み、
スカーフを被ったまま、
サーフボードに
乗らなければならない

サーフィンを終えて浜辺に
戻ると、たちまち少女たちに
囲まれ、ちょっとした
スター気分を味わっている

彼女の、エジプトに行って
有名になりたいという夢が、
ちょっと味わえたかも

そこからは、

常夏のハワイのオアフ島のターコイズブルーの海でサーフィンをするマシューとイブラヒームと、

寒々としたガザの灰色の海岸を、
それでも波と戯れながら
サーフボードを滑らす
マフムードやジャイヤブ
たちの姿が

交互にインサートされ、
まるで
天国と地獄の絵図
が対比的に描かれる

開放的なビキニ姿の女性が
海岸を堂々と歩くオアフ島と、

スカーフをして慎ましやかに
暮らさなければならない
ガザの女性たち

ガザは、天井のない監獄
と呼ばれていたが、
今や、この世の地獄の
ような様相を呈している

そして、エンディングでは、
ガザに戻って、
サーフショップを開きたいと
話していたイブラヒームは、
まだガザに戻って来ていない
というナレーションが流れて
終演。

※※※

終演後に、配給元の「ユニバーサルピープル」代表の関根健次さんのトークセッションが始まる。

この映画は、2016年につくられ、これからは、もっと明るい未来が描かれる期待があったが、

逆に、現状はさらに悲惨になってしまい、大変残念である。

この映画も、本当は、女性も、幼い時は、自由に泳いだりサーフィンさえもできたのに、成長すると止めなければならないという、宗教上の問題提起なども訴えたかったはずなのに、今や、生死を賭けた問題提起となってしまった。

ガザの風景は、日本では、なかなか想像しにくいですが、唯一、東日本大震災で、東北の沿岸が津波の被害にあった直後の、まるで廃墟の中で暮らしているような風景に似ていたように、私には感じられました。

関根さんによると、元々、ガザにサーフボードを外国から持ち込みサーフィンを広めたのは、皮肉なことに、ユダヤ人の、ドクターと呼ばれていたサーファーのレジェンド

既に故人となってしまったが、
彼のお陰で、ガザでサーフィンが
できるようになった

さらに、関根さんから、この映画の後日譚を伺う

主人公たちの近況を少し紹介

イブラヒームは、ハワイでしばらく暮らした後に、ガザには戻らず消息不明となるが、最近、やっと近況がわかり、米国本土に渡り、結婚してずっと暮らしていることが判明

ジャイヤブの家族は、
娘さんは、戦争で下肢を切断
娘さんに付き添い、いったん
渡仏するも、ガザに帰って来る
予定

それ以上は語らず、本当は、いろいろと悲惨なことが起きている模様…。

これからは、
ガザ三部作として展開していく

既に、第一弾として、
『ガザ 素顔の日常』を全国各地で上映した

『ガザ・サーフ・クラブ』は2作目で、こちらも全国各地で上映中

これから3作目を公開していく

なお、「ユニバーサルピープル」は、九州にある映画配給会社だそうで、このテーマを広めるために上京してきたとのことです。

字幕付き&音声ガイドのお陰で、ガザの置かれている状況の一端が、かなりわかりやすく助かりました。

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