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三種

平日は家人と在宅ワークをする日が多い。
人間ふたりと猫2匹。

お互いリモート会議もあるので離れた部屋で二手に分かれるのだが、
わたしは猫ちゃんを入れないお部屋を使っている。


我が家の猫は長毛種のため毛が凄まじい。
猫を飼うと言うことは毛との戦いでもある。
毛だらけで外をウロウロしては周りに迷惑をかけてしまうので
家を出る直前で着替えることにしている。
玄関に1番ちかいお部屋へ全ての洋服を仕舞い、
リビングのドアより玄関側には猫ちゃんの出入りを禁じているのだ。
その部屋の一画で在宅ワークをしている。


そばにいるのに猫ちゃんと触れ合えないなんて。
寂しい。寂しい。寂しい。

寂しいモヤモヤで部屋がいっぱいになると
わたしは家人とのルールを破り飼い猫マーナを在宅ルームへ連れ去る。

男の子だからか、
ウーゴ君は縄張り外に出すとかなり活発に動き回ってしまう。
連れ込む時はおっとりしているマーナちゃんと決めている。


部屋に入ったマーナは
目をキラキラさせて探検し始める。
まるでディズニーランドにやって来た子どもの様だ。
おもりを端っこにつけたメトロノームくらいのスピードで
ふんわり膨らんだ尻尾を左右にふる。
楽しいらしい。
加湿器のけむりが不思議らしく首を傾げて眺めている。


なんと愛らしいのだろう。


しばらくすると探検もおわり
靴下を履く時につかうベンチに寝床を構える。
体勢を整え、最後にフワリと尻尾を巻くのを見届け
わたしは視線をモニターに戻した。


カツン


乾いた小さな何かが落ちた音がした。



キャットフードだった。
手足にフードが挟まっていたのだろう。
部屋中のあちこちに落ちているのでよくあることだ。
何の疑問もなく拾った。

でも、今回は違っていた。
それは飼い猫マーナのうんピーだった。

あおうっ


この部屋には猫ちゃんトイレもお水もない。
マーナが出たがらなくても1時間ほどでリビングへ戻す。
戻りたくないマーナは、持ち上げても寝姿を崩さない。
頑なにそのポーズをとり続ける。

来てもらったのにごめんねぇ
でもそろそろ帰ろうかね

と声を掛けると
参ったなぁと言っているような顔をして
眼をパチクリと一度つぶる。


リビングまで来たついでにコーヒーを淹れることにした。
家人に「飲む?」などと声をかけキッチンへ入ると
今度は飼い猫ウーゴが昼寝から起きて来た。


キッチンにはササミがあることを彼は心得ている。

ササミは朝だけだよ。

言葉を理解しているのかササミタイムではないことを悟り
踵を返して寝床へ戻って行く。

ウーゴを見送るとわたしの足元に
挽こうとしていたコーヒー豆が一粒落ちていた。

あらま勿体無い。


躊躇いなくつまんだら、
今度はウーゴのうんピーだった。


我が家では
キャットフードと、コーヒー豆と、猫のうんピーチャレンジが
度々発生する。

今日は二連敗。


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