第一回大酒スラムジャパン!

吉祥寺の居酒屋を貸切ったトーナメントも大詰め、決勝に勝ち進んだエーギルズVS目々堂大学酒豪の会も大将戦の終盤に入った。

勝利と同時に昏倒した副将の思いを背負うエーギルズ大将の酒呑童夢選手、目々同大学酒豪の会大将、河原呑太郎選手から指定されたテキーラ720㎖を最後まで飲み干しターンエンド!次のターンで童夢選手が呑太郎選手に指定した酒はアブサンだ!これはきつい!前のターンでスピリタスを1ℓ飲んでいる呑太郎選手にトドメを刺しに来たか!
これに対し副将が準決勝で救急搬送され既に二人分飲んでいる呑太郎選手が童夢選手に指定したのはただのビール中瓶だ!予想外の一手にどよめく会場、どよめいた弾みで吐き気を催す審査員、ビニール袋を差し出す司会!

波乱の第9ターン、意外にも童夢の酒が進まない。
「ぐっ…ただのビールが何故こんなにキツい」
「ククク…炭酸は腸を刺激しアルコールを吸収させる。貴様の身体は今日飲んだ全てのアルコールを今一斉に受けているのだ」

嵌められた童夢選手、江戸時代の大酒大会記録保持者の子孫として久しく途絶えた飲み比べの伝統を復活させた大酒スラムジャパン初代優勝の夢は潰えるのか。
対する呑太郎は平然とアブサンを飲み進める。スピリタスからのニガヨモギ、チェイサーは何故かメッコール。口の中を想像したい者は誰一人いない。

「何故だ、何故お前はそんな酷い呑み方が出来る?」
「ククク…貴様ら酒飲みはいつもそうだ。良い酒、良い飲み方などと綺麗ごとをほざく。私は生まれて一度も酒を美味いと思ったことはない」
「何だと?じゃあ何故ここにいる?」
「良く聞け。私の父は酒に溺れ、看病する家族に暴力を振るいながら死んだ。私は酒が憎い。酒飲みが憎い!だからこそこの大会が許せん。貴様を倒したらこの大将戦までに倒れた8人、入院した4人の被害を公表し大会を終わらせてやる!」
「ふざけるな!悪いのは酒じゃない!酒のせいにして逃げる人間の心の弱さだ!」
「貴様こそふざけるな。人の弱さが悪いなら父を殴って止めることが何故許されない。アルコールは世界で二番目に依存性が強い毒物だ。貴様ら酒飲みこそ酒に逃げるために酒の本性から目を逸らしている。そんな奴らに私は負けない。最初から毒と知って飲んでいるのだ。覚悟が違う」
「お前のそれは覚悟なんかじゃない!それを俺が教えてやヴェッ」

言葉とは裏腹にいよいよ座っているのも辛そうな童夢選手、スタッフにビニール袋を要求した。会場がざわめく。やるつもりだ…禁じ手だが黙認されている「吐いてリセット」を!

「やめろ童夢!吐いてリセットでは肝機能は回復しない!お前は十分頑張った!これ以上はお前の肝臓が…!」
「コーチ…すまない。俺は吐く。吐いてあいつより飲めたら二度と飲めなくなっても良い」
「駄目だ童夢!俺の過ちをくり返すな!アルコールセンターで接着剤を吸って拘束されたり断酒道場で幻聴を聴いて暴れる苦しみをお前は知らなくて良いんだ!頼む…もう…飲むな!」
「いや…飲む!」

口から胃酸を垂らしてグラスを握りしめた童夢!勝敗の、そして大会の行方は…!
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※この作品の登場人物は全員ニ十歳以上です。お酒は適量を守って楽しみましょう。

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