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すばらしき「オフィシャルサポートソング」の世界 ~クアイフとグランパスのすてきな関係性~

1. それは「応援歌」にあらず

▼ アウェイで流れる謎の曲

 スタジアムで流れているBGMが、やたらと気になる性分です。


 私は音楽が好きということもあり、スタジアムで流れている音楽に対して特に敏感なのです。好きなバンドの曲がスタジアムで流れていると、自分の好きなものが認められたような気がして、少しだけ気分が高まります。知らない曲でも、かっこいい、疾走感のある曲が流れていると、ついつい試合のことも忘れ、スマートフォンを取り出して、曲名を調べたくなります。


 2017年、私が応援するV・ファーレン長崎の試合を観戦するために、岐阜県の長良川競技場に行った時のことでした。スタジアムを満たしていたのは、とあるポップロック風の曲。さわやかな男性ボーカルの声と、突き抜けるようなバンドサウンド。試合の前後を問わず、何度も何度も流れるその曲は、私の耳にすっかり残ってしまいました。


 これが私と、「オフィシャルサポートソング」との最初の出会いです。


▼ My Happy Opening

 Jリーグの一部のクラブには、クラブ応援歌とは別に、「オフィシャルサポートソング」と呼ばれる曲が存在します。そのような曲をどのような言葉で呼ぶかは、各クラブによって異なりますが、この記事では「オフィシャルサポートソング」を「アーティストがそのクラブをテーマに書いた曲」と定義します。


 私が長良川で初めて触れた「オフィシャルサポートソング」。それは、岐阜を中心に活動していたバンド、crickの「My Happy Ending」でした。スタジアムでこれだけ頻繁に流れているのですから、試合終了後、帰りの新幹線で「FC岐阜 曲」などと検索すると、案外すぐに見つかりました。「FC GIFU official power song」として作られたこの曲が、私の心をつかんだ曲の正体でした。


 今まで私は、スポーツチームにまつわる音楽というと、プロ野球の応援歌のようなものを想像していました。「○○(球団名)、頑張れ!」という歌詞で、そのチームへのストレートな応援の気持ちを込めた歌。これはこれで、「応援歌」として魅力的なのですが、バンドをかじっていた私からすると、もっと斬新な曲はないものか、そう思っていたのも事実です。


 岐阜での出会いは、この私の考え方を変えてくれました。crickは岐阜の大学の軽音部で結成された5人組のバンド。そのバンドが、地元のクラブのために曲を書き、サポーターと一緒になって、プロモーションビデオを作る。曲中には、ストレートな「頑張れ!FC岐阜!」という歌詞こそ出てきませんが、そこにはアーティストの目を通したFC岐阜の姿が、音楽を通して表現されているのです。


 長良川で出会った音楽をきっかけに、私はオフィシャルサポートソングの世界へと足を踏み入れたのです。



2.オフィシャルサポートソングの魅力とは?

▼ それは「クラブの曲」に非ず

 私はもともとJリーグと音楽が好きな人間です。オフィシャルサポートソングとは、その「好き」同士がフュージョンしたもの。当然、好きにならないはずがありません。私は自然と、他のクラブにも似たような曲はないものかと調べ始めました。


 すると出るわ出るわ、好みの曲があふれ出てくるのです。


 水戸ホーリーホックの応援ソング、宇宙まおさんの「無限の力」や、


 ザスパクサツ群馬の公式応援ソング、LACCO TOWERの「火花」など。


 この年アウェイで行った先のスタジアムで流れていたという理由もあり、これらの曲は、音楽をJリーグで味付けすることの魅力を、私に教えてくれました。


 オフィシャルサポートソングはあくまで、そのアーティストの曲のひとつとして書かれます。クラブ名が歌詞にダイレクトに入ってしまうと、その曲はクラブのものとなってしまいます。しかしながらオフィシャルサポートソングは、あくまでもアーティストの曲として、そのクラブが戦っている姿、サポーターの声、スタジアムの雰囲気などをテーマに書かれた音楽なのです。


 それ故に、リスナーとしては、「クラブの曲」ではなく「そのアーティストの曲」として聴くことができます。いわゆる応援歌ではなく、「アーティストがJリーグ(クラブ)をモチーフに書いた曲」なのです。そのため、他のチームのオフィシャルサポートソングであっても、プレイリストの中の自然な一曲として、楽しく聴くことができます。

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(写真:アウェイ水戸に行った時のお買い物、好きな曲は盤で持ちたい派です)


▼ アーティストの目を通してサッカーを知る

 繰り返しになりますが、オフィシャルサポートソングには一般的な応援歌のように、クラブ名が直接出てきたり、Jリーグや試合に結び付く直接的な表現が使われていたりすることは、基本的にありません。


 しかしながら、私はそこにオフィシャルサポートソングにしかない美しさを感じるのです。


 サポーターである私には、Jリーグがなければ湧き上がることのないであろういろいろな感情が、日々湧き上がっています。例えば、家で出かける準備をしている時の高揚感。スタジアムへ向かう道すがら、ついつい早足になる感覚。試合開始前の興奮。ゴールが決まった瞬間の熱狂。負けて悔しいけれど、それでもなお戦う選手の後押しをする気持ち。


 これらの、Jリーグファンなら誰もが感じるであろうことが、アーティストの目を通して具現化されているのです。アーティストが紡ぐ言葉と音によって、自分たちが見ている世界が、また別の目線で描かれるのです。


 もちろん、オフィシャルサポートソングは、普通の音楽としても楽しむことができます。Jリーグを知らないアーティストのファンにとっても違和感なく聴けるように、曲にはアーティストの色が出されています。しかし、我々Jリーグファンには、その曲を2倍にも3倍にも楽しむことができる、その下地が備わっているのです。


 例えば、アニメのタイアップソングを例にとって考えてみましょう。私はアニメを観ないので、アニメのタイアップソングを、純粋な音楽として楽しむ以上のことはできません。しかしそのアニメのファンは、「この歌詞は、主人公とヒロインの関係性を暗示している?」「Bメロで転調するのは、これから先のハッピーエンドを示唆している?」などと、いろいろな考察をしながら、その曲を2倍にも3倍にも楽しめるのです。


 アニメといえどJリーグといえど、ある種の「タイアップソング」であることに変わりはありません。しかしながら、歌詞に込められた意味や、リリース当時のアーティストの声などをたどっていくと、単なる「スタジアムでいつも流れている曲」の見方が変わってきます。そしてその楽しみ方は、日ごろからクラブと苦楽を共にしている、Jリーグファンにしかできない特権なのです。


▼ オフィシャルサポートソングの世界へようこそ!

 そして数多あるオフィシャルサポートソングの中で、私の心を特につかんだ曲を書いているアーティストがいます。2016年から現在に至るまで、名古屋グランパスのオフィシャルサポートソングを担当している「Qaijff(クアイフ)」です。(なお、読みやすさやクレジット上の表記に合わせることを考慮して、以降のバンド名は基本的にカタカナの「クアイフ」で統一させていただきます。)


 2017年当時、J2に降格していたグランパスと対戦したことをきっかけに知った、「Don't Stop The Music」という曲。この曲に魅了された私は、そこからすっかり「クアイフィー」となりました(クアイフィー:クアイフのファンを称した語)。


 2018年、大阪で開催された音楽フェスで初めてライブを観て以来、私はますますその虜に。その翌年にはとうとう、ワンマンライブを見るためだけに名古屋に行くまでになりました。私がワンマンライブのために遠征したのは、この時とShiggy Jr.(4人組バンド)の解散ライブの時のたった2回だけ。私にとってクアイフは、それほどまでに「生で観たい!聴きたい!」と思えるバンドの一つになっていたのです。

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(写真:名古屋・Electric Lady Landでのワンマンライブに行った時)


 この記事では、クアイフというアーティストを通して、私が感じたオフィシャルサポートソングの魅力について迫っていきたいと思います。


 この記事が皆さんにとって、新しい音楽に触れるきっかけになれば幸いです。


 なお、この記事には、一部他媒体の記事や、曲の歌詞の引用を含みます。著作権法第32条によると、「著作物が自由に使える場合」として、「引用の目的上、正当な範囲内で行われる」ことが定義されています。この記事における引用は、この定義に基づいた形で、適切に行います。

(参考資料:文化庁ウェブサイト「著作物が自由に使える場合」)



3. Qaijff(クアイフ)と名古屋グランパス

▼ クアイフとは?

 Qaijff(クアイフ)は2012年に結成された、名古屋を拠点として活動するスリーピースバンドです。鍵盤とボーカルを担当する森彩乃さん、主にベースを担当する内田旭彦さん、ドラムを担当する三輪幸宏さん(2021年4月より体調不良により活動休止中)の3名からなります。その音楽は「絶対的、鍵盤系ドラマチックポップバンド」と称され、3人それぞれの高い技術が融合し、上質なポップミュージックを生み出し続けています。


 2017年11月にはフジテレビ系アニメ「いぬやしき」の主題歌「愛を教えてくれた君へ」でメジャーデビュー。今年4月にはバンド名をカタカナ表記の「クアイフ」から、結成当時のアルファベット表記である「Qaijff」に変更し、今後の活躍がますます期待されるバンドです。


▼ 名古屋グランパスとの浅からぬ関係性

 クアイフは2016年より毎年、グランパスのオフィシャルサポートソングを担当しています。グランパスへ楽曲を提供することが決まった際、これを誰よりも喜んだのが、ベース担当の内田さんでした。


 内田さんは3歳からサッカーを始め、小学校6年生の時に、グランパスのジュニアチームに入団。その後ユースチームにも所属し、吉田麻也選手(現セリエA・サウサンプトン所属)、森本良選手(現関東サッカーリーグ1部・VONES市原所属)とセンターバックトリオを組み、最終ラインの一角を担っていました。しかし17歳の時、音楽の道を志しユースチームを退団。その後は会社員とミュージシャンの2足のわらじで活動していました。


 そんな内田さんが、ミュージシャンとしてグランパスに凱旋してきたのです。オランダ代表の名プレイヤー「ヨハン・クライフ」にその名を由来するバンドとともに内田さんは、かつて所属したクラブと再び共に進むことになったのです。



4.2016年~2017年「Don't Stop The Music」

 クアイフとグランパスの「始まりの合図」となった一曲、「Don't Stop The Music」。この曲は2016年、2017年の2年間にわたり、名古屋グランパスのオフィシャルサポートソングとして使用されました。


 この曲を作詞・作曲したのは内田さん。自らのグランパスへの想いと、サポーター、クラブの想いを結びつけるようにして、楽曲制作を進めていきました。

――今回の曲はグランパスの依頼を受けて制作した、という形ですか?

内田「経緯としては僕がグランパスの育成出身ということで、事務所とグランパスが知り合うきっかけを得た時から始まった話みたいです。だったらぜひと言っていただけたので、そこから制作を始めた曲です」

――では、完全にグランパスをイメージして作った曲というわけですね。

内田「そうですね。一番最初のデモ音源を作った時には、僕自身の生い立ちというか、僕のグランパスに対してこうありたいという気持ちを込めたものだったんです。でもグランパスの2016年の方針とか、こうありたいというチームの在り方を聞いた時、お客さんと僕たち、そしてグランパスの3つが結びつけるような曲にしたいと思い始めて、そうなってからは歌詞もアレンジもかわってきて、現在の感じになりましたね」

(出典:【特別企画】「Qaijff(クアイフ)」インタビュー第3回:「ただ勝てばいいわけじゃない、そういう気持ちにすごく共感しました」(森彩乃、ピアノボーカル) : 赤鯱新報 (targma.jp)、2020年5月21日閲覧)


 このような思いを込めて作られた、クアイフにとって初めての、グランパスをテーマに書いた曲。その思いに応えるかのように、グランパスの本拠地・豊田スタジアムでのプロモーションビデオ撮影には、マスコットの「グランパスくん」とサポーターが参加。そのほか、名古屋市中心部・栄でのバナー貼り、試合前のライブイベント、コラボユニフォームの発売と、クアイフとグランパスの関係はどんどん密になります。


 そして、「グランパスに関わる以前はサッカーを全く知らなかった」と語るメンバーの森さんと三輪さんも、この縁がきっかけとなり、すっかりグランパスのサポーターに。単なる楽曲提供の関係から、ゴール裏でサポーターとともに戦う仲間となったのです。



5.2018年「未来Emotion」

 2018年シーズン、晴れてJ1昇格を決めたグランパス。そのグランパスに、クアイフは新たな曲を書き下ろします。


 J1昇格プレーオフから、J1昇格が決定した時期にかけてのグランパスのキャッチコピーは「J1で名古屋の風を起こそう」。この時期のグランパスでは、「名古屋、俺らの、風を起こそう」というチャントに代表されるように、「風」という言葉が、随所で印象深く使われていました。


 偶然にも、この当時のグランパスの監督は、「風」をその名に持つ風間八宏監督。そして風間監督と言えば、小気味のいいパスワークを中心とした攻撃的なサッカーが持ち味。前年のJ2でもリーグ最多の85得点を記録するなど、圧倒的な攻撃力を武器に、グランパスはJ1に挑みます。2018年のグランパスのキャッチフレーズは「攻める ~Go into Action~」。まさにチームカラーとして、攻撃力を売りにする方針を打ち出しました。


 すっかりグランパスのサポーターとなったクアイフのメンバー。彼らは、2018年のグランパスを「アップテンポな“攻め曲”」というテーマで表現します。「Don't Stop The Music」は内田さんの作詞・作曲ですが、今回は森さんも作詞・作曲に参加。サポーターの一人として楽曲制作に加わります。


 この曲については、内田さんがYoutubeチャンネルにて、歌詞に込めた思いを語っています。

●「Don't Stop The Music」は、みんなの心がひとつになる、クアイフ流のアンセムとして作り上げた。
●「未来emotion」は、風間監督の超攻撃な、スタジアムを沸かせるサッカーを表現したいというのを、大きなテーマとしている。
●「未来emotion」というタイトルの意味は二つある。一つは、そのまま「emotion」の意味である。風間監督が表現するサッカーに対して、サポーターも一緒にエモーショナルな気持ちになって、グランパスを応援したいという気持ちを込めた。
●もう一つの意味は、「未来へモーション」の言い換え、すなわち未来へ動き出すという意味である。2017年、J2を経験することで、J1というステージが今までとまた違って見えるようになった。グランパスを応援するために何ができるかを考えたときに、自分の足で動き出すということがすごく大事だと思っている。ひとりひとりの「自分から動き出す」という意識が集まることで、大きなパワーになり、それが選手のみなさんの背中を押す、勝利に近づける武器になる。その思いをタイトルに込めた。
●歌詞の中で大事にしているポイントは、サビの「一寸先の未来」という言葉である。一寸先とは、ほんのすぐ先のことである。今をベストに生きて、その繰り返しで、未来は変わっていくものだと思っている。その中で、自分の理想の未来を掴むためには、今輝かないといけない。それはサッカーに限らず、ひとりひとりの生活の中でも言えることである。


 また、内田さんは曲のメロディーに対しても、グランパスへの思いを込めています。最初の「F#」の音でスタジアムに広がる青空を表現し、そこから展開される、強さ、壮大さを表現できる音を使ってメロディを構成し、楽曲としてまとめていく。到底素人では真似できない表現方法です。まさしくここに、アーティストがJリーグを表現することの面白さがあると思います。


 同じく作詞・作曲に携わった森さんは、グランパスへのメッセージ性のみならず、Jリーグに触れない層へのアプローチについても心掛けたと言います。

――「グランパスのサポートソングを作る」ことは、曲の作り方や意識することに違いが生まれるのでしょうか?

森:難しいところはありますよね。「絞る」と言ったけど、サポートソングなので、一番はグランパスに届かないといけない。チームとサポーターに届くべきものなのかな。でも、その曲がきっかけとなって、例えばサッカーには興味がなかったような音楽ファンもこの曲を知ってくれて、「かっこいい」とか「戦う闘志が湧いてくるね」みたいな感情を呼び起こせたらとも感じていて。サッカーとは関係のないところから「これってサッカーの曲なんだ」となって、グランパスとかサッカーに興味を持ってもらえるようになったら、それは私たちとしてはすごくうれしいこと。だからこそ、サッカーファンにしか響かない曲になってはいけないんです。そこですごく悩みますね。

(出典:【Jリーグと私】クアイフ(バンド)~名古屋公式ソングからチームの“一員”へ~ | サッカーキング (soccer-king.jp)、2020年5月21日閲覧)


 オフィシャルサポートソングとして曲を制作する以上、クラブを応援する内容でないといけません。しかしながら、曲にクラブの色を出しすぎると、Jリーグを知らない人に対する窓口にはなりえない。Jリーグを表現しながらも、Jリーグだけを表現してはいけない。このバランス感覚の絶妙さが、私のような「音楽が好きなJリーグファン」の気持ちを掴んで離さないのだと思います。



6.2019年「Viva la Carnival」

 2019年もクアイフは引き続き、グランパスのオフィシャルサポートソングを担当します。グランパスくんのマスコット総選挙のPR動画に登場するなど、クアイフのグランパス愛はとどまるところを知りません。


 そんなクアイフが、この年書き下ろした曲のタイトルは「Viva la Carnival」。クラップやチャントで包まれた、スタジアムの「音風景」を、カーニバルになぞらえて描いた一曲です。


 10代の頃、ユースの選手として、たくさんの事を教えてもらったグランパスに、今年も音楽で携われること、心から光栄に思っています。これまで、僕らはサポーターとして何度もスタジアムに足を運び、たくさんの景色を観てきました。新サポートソング「Viva la Carnival」は、そんな中で、スタジアム全体で、リズムを打ったり、声を重ね合うあの空間は、グランパスだけの特別なカーニバルだという着想から生まれた楽曲です。躍動感溢れるこの曲と共に、今シーズンも一丸となって戦いましょう!

(出典:クアイフ、名古屋グランパス新体制発表会で新オフィシャルサポートソング「Viva la Carnival」を初披露LMusic-音楽ニュース- | LMusic-音楽ニュース-、2020年5月21日閲覧)


 「スタジアム全体で、リズムを打ったり、声を重ねあう空間」を再現するかのように、曲中にはシンガロングやクラップが多く取り入れられています。ライブで演奏されるとき、イントロのシンガロング部分を観客と一緒に歌うさまは、まさしく声を重ねあう空間そのもの。ライブハウスがひとつの曲によって一体となる姿は、スタジアムの風景とも重なります。

Say!Wow 飛び込んで 加速して 新たなるステージへ Go Upward
Say!Wow 貫いて 戦い抜いて 誇りを掲げよう この場所で

 サビの歌詞には、「2019年の名古屋グランパス」を感じさせる要素も詰め込まれています。2019年の名古屋グランパスのチームスローガンは「貫く Go upward」。チームスローガンを違和感なく歌詞に織り込む、作詞の森さん・内田さんの技が生きています。


 そしてこの曲最大のポイントが、名古屋グランパスの応援「GLAP」のリズムを、サビ前のブリッジ部分に取り入れたことです。今まで、既存の曲がチャントとしてアレンジされて、応援に使用される例は数多くありました。しかしこの曲においては、サポーターの文化である応援がアーティストに逆輸入されて、音楽という形で表現されているのです。


 ミュージシャンの目を通して、ピッチの中のものから外のものまで、Jリーグという文化のすべてを表現する。「クアイフはこの曲を通して、オフィシャルサポートソングのひとつの完成形を作り上げた」。そう言っても過言ではないかと思います。



7.2020年「Salvia」

 ここより先の内容は、旅とサッカーを紡ぐWeb雑誌「OWL magazine」購読者向けの有料コンテンツとなります。月額700円(税込)で、2019年2月以降のバックナンバーも含め、基本的に全ての記事が読み放題でお楽しみ頂けます。ご興味のある方は、ぜひ購読頂ければ幸いです。

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